澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -419-
中国企業が絡む「IR汚職事件」

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 昨2019年12月25日、東京地検特捜部は自民党衆院議員(東京15区)の秋元司容疑者(48歳)をIR(統合型リゾート)誘致をめぐる収賄容疑で逮捕した。現職国会議員の逮捕は、2010年1月、石川知裕衆院議員以来、約10年ぶりである。
 また、同特捜部は、贈賄容疑で中国企業「500ドットコム」日本法人の元役員ら3人を逮捕した。逮捕されたのは、「500ドットコム」日本法人の元役員、鄭希ことジェン・シー(37歳)及び同社元顧問、紺野昌彦(48歳)と同、仲里勝憲(47歳)である。
 「500ドットコム」は本社が広東省深圳で、インターネット上でのゲームやスポーツくじ等の事業を展開している。
 2017年7月、「500ドットコム」は日本法人を設立した(「500ドットコムジャパン」)。そして、翌8月、同社は那覇市で開かれたシンポジウムでIRへの進出を検討していると表明した。この時、秋元容疑者は基調講演を行っている。
 まず、秋元容疑者だが、2016年、臨時国会で衆院内閣委員長としてIR推進法の成立に携わった。そして、翌17年8月から国土交通副大臣(18年10月まで)兼内閣府・復興副大臣を務めている(18年10月からは環境副大臣兼内閣府副大臣)。
 次に、鄭希(中国東北部出身)容疑者は、「500ドットコムジャパン」の元副社長で、高校卒業後、信州大学経済学部へ留学している。その後、東京大学大学院へ進学した。
 大学院修了後、三菱商事、リクルート、メタップス(データに焦点を当てたマーケティング、ファイナンス、コンシューマー関連事業を展開)を経て、2019年には17(イチナナ)Media Japan(日本No.1ライブ配信アプリ「17 Live<イチナナライブ>」を運営)の常務執行役員COOに就任した。なかなかの華麗なる経歴の持ち主である。
 そして、沖縄在住の紺野昌彦(兵庫県出身)容疑者は、現職の室井邦彦参議院議員の“隠し子”だと言われる。2008年には、同容疑者は拳銃を所持していたため、沖縄県警に逮捕され、服役した事がある。
 2017年2月、紺野容疑者は一般社団法人「沖縄県日中友好協会」を設立した。その設立祝賀会には、中国側から程永華大使(当時)や総領事など幹部クラスの外交官が参加している。
 また、仲里勝憲容疑者は沖縄県浦添市の市議会議員を務めたことがある。
 2018年1月、「500ドットコムジャパン」は札幌市の観光会社が留寿都村でのIR誘致計画を公にした際、出資を表明した。翌月には秋元容疑者が同村を訪れ、鄭、紺野容疑者らの他、村の幹部らとも面会している。
 つまり、中国企業「500ドットコム」が、日本法人の鄭希容疑者と紺野容疑者らを通じて、日本の国会議員(大半が自民党)にカネを配り、北海道や九州・沖縄にIR誘致をしようとしたのである。
 問題は、「500ドットコム」の筆頭株主が「Tsinghua Unigroup International Co., Ltd.」(清華紫光集団)という点ではないか。この紫光集団とは清華大学傘下の国有企業である。中国の国有企業が「500ドットコムジャパン」の経営に関与していたのは明白だろう。
 結局、「500ドットコムジャパン」は、昨2019年12月30日付で、陳旭東会長と潘正明CEOを一時的に解任した。だが、後任には、紫光集団幹部、呉勝武を会長に据えている。
 さて、東京地検特捜部から、次の5人の衆議院議員が「500ドットコムジャパン」より100万円の提供を受けたと指摘されている。
 自民党の岩屋毅前防衛相(大分3区)、同、中村裕之議員(北海道4区)、同、船橋利実議員(比例北海道)、同、宮崎政久議員(比例九州)、及び、日本維新の会の下地幹郎元郵政担当相(比例九州)。5人ともIR誘致を表明した、北海道・九州・沖縄選出議員である。
  岩屋前防衛相をはじめ、自民党議員4人は、収賄の容疑を完全否定した。
 しかし、下地議員だけは収賄を認めている。そこで、今年(2020年)1月7日、下地議員は、日本維新の会に離党届を提出した。だが、翌日、同党は下地議員を除名処分にしている。
 1月7日、二階俊博自民党幹事長は記者会見で、IRをめぐる汚職事件が政界に広がりを見せていることについて「捜査中なので静かに見守っていきたい」と述べた。
 以上、国会議員5人の他、自民党の白須賀貴樹衆議院議員(44歳)や同、勝沼栄明前衆議員議員(45歳)が、マカオで同社から接待を受け、かつ、現金を授受していた可能性があるという。今後、大きな疑獄事件に発展する公算も小さくない。
 最後に、現在、「500ドットコム」と関係の深い清華紫光集団は経営が悪化し、北大方正集団(北京大学傘下の企業)同様、デフォルトの危機に瀕している事を指摘しておこう。