アホなテレビは見ないようにしたいのだが

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 東京都の小池知事が食料の買い出しに行くのは、「3日に1回に」と訴えていた。だが暇で時間を持て余している私は、幸い田舎に住んでいるので毎日散歩がてらにスーパーに出向いている。1日5,000歩が目安である。
 それでも圧倒的にテレビをだらだら見ている時間が多い。見ていていつも思うのは、ニュース番組やワイドショーを仕切っているMC(最近は司会者をこう呼ぶ)やアナウンサーのアホさ加減だ。
 毎日、新しい感染者数を発表し、それをグラフにしたものを見せつけられる。どの番組でも感染症の専門家を招いて解説をしてもらうのだが、ほとんど毎日、「この感染者数はどう見たらいいのでしょうか」という質問を繰り返している。私でも答えられる。「検査数が発表されていないので、これだけでは実態は分かりません」と言うしかないのだ。「何度同じ質問をしているのか!お前はバカか」とテレビに向かって怒鳴りたくなる。
 連休中、多摩川の河川敷らしいところの映像を放映して、「こんな時にも多くの人が出掛けて来ています」というナレーションを流していた局もあった。だが映像を見る限り、10メートル以上離れて、ポツン、ポツンとテントが張られていただけだ。十分に許されるものだ。
 品川駅や吉祥寺の商店街の映像もわざとカメラを下げて撮影し、さも多くの人が密集しているかのような印象を与えようとしていた。視聴者の不安を煽るためだ。
 デマ情報について、「気持ちは善意なのですがね」などと言っていたMCもいた。一時、このデマ情報でトイレットペーパーがスーパーから消えたことがあった。ある落語家MCがトイレットペーパーを買い漁る年寄りに対して、「昔のように新聞紙で拭け」と憤っていたが、水洗トイレではそれが出来ない。MCなら「善意のデマ情報などありません」と言うべきなのだ。
 安倍首相も期待を寄せ、今月中にも新型コロナウイルスの治療薬として承認されそうな「アビガン」という抗インフルエンザ薬についても、どの局のどの番組でも、その効果や副作用について質問をしている。「俺の所へ聞きに来い。教えてやる」と言いたくなる。
 専門家会議も全く当てにならない。2つの失敗をしている。一つは、PCR検査を重症化の恐れのある患者に集中させたことだ。これが世界とかけ離れた少ない検査数になってしまった。このため感染実態が把握できない。もう一つが、「37.5度以上の熱が4日以上続くなら相談を」という方針だ。このために死亡した人も少なくない。見事に感染拡大を抑えた和歌山県の仁坂吉伸知事は、これに異論を唱え、PCR検査を大阪府の助けも得て徹底的に行なった。これが成功したのだ。
 だが、テレビなどのメディアは、この馬鹿げた方針を無批判に流し続けた。元関脇舞の海関が6日付産経新聞のコラムで、「今多くの人がメディアウイルスにもやられ、思考停止に陥っている」と批判しているが、鋭い。