「習近平来日など誰も望まない」
―根本的問題の解決を優先せよ―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 トランプ大統領の外交は「米中貿易協定のやり直し」の一手から始まった。中国はあからさまに「中国製造2025」を揚げ、建国100周年の「2049」には米国に追いつく勢いを示した。中国が世界の強国にのし上がってきたきっかけは2001年に米国が推薦して中国を世界貿易機関(WTO)に加入させたことだ。国の体制は異なるが、世界貿易国の一員となれば、いずれ民主主義体制に移行してくるだろうと楽観したのである。しかし毎年二桁の軍事費増を続け、このコロナ不況でも軍事費の伸びだけは6.6%、19兆円を確保した。異常である。
 中国は多様な文化を持つ国だが、国民には一種類の毒しか飲まさない一党独裁国家である。そのやり口はウイグルでも見せたし香港でも見せた。香港の様を見て台湾では対中融和派の大物・韓国瑜高雄市長をリコールで解職してしまった。
 これを見て、中国は武力を使って、台湾を占領しようと覚悟を決めたのではないか。米国との武力衝突を覚悟するまで自信をつけさせたのは、これまでの世界の対中外交の甘さである。トランプ氏は中国を増長させた民主党政権の甘さを清算している最中である。大学、研究所、一流企業に留学の名で押し込まれた千名にも上る中国人のビザを目下取り消し中である。
 ファーウェイという中国企業の情報通信機器を安保上の懸念があるという理由で輸入禁止にし、同部品を使った製品は欧州産であっても買わない。目下、移動通信システムは第四世代から第五世代への転換点にあるが、トランプ氏はここでファーウェイの息の根を止める思惑だ。英国も同様の方針だ。
 一方コロナウイルス事件で判明したのはサプライチェーンの在り方の問題である。中国をWTOに入れて、物品は比較優位の国に作らせる。これを集めれば、完成品は即座にできると考えられてきた。そのせいで米国に製造業が残らず、肝心のものが全部外国で製造されることになった。これについてトランプ氏も安倍氏も「企業に移転費を払っても国内産に切り替えて貰いたいものがある」と財界に呼び掛けている。コロナが流行した途端に、世界中の製造業が止まった。サプライチェーンに問題があるからだ。
 中国は14億人の消費者を背景に他国企業の参入を誘い、肝心要の部品を中国で作らせるという戦略をここ10年ほど操ってきた。しかし電気自動車やドローンの進歩のせいで、工業体系は変わってきたのではないか。各国とも対中政策を立案し直す時に、肝心要の部品は中国で作らせない。特許が侵されていれば、直ちに賠償をとるといった国際的仕組みを整備する必要がある。
 気が付けば世界保健機関(WHO)の中枢を中国に押さえ込まれていた。中国の振る舞いは日本人の神経を逆なでしている。習氏の訪日を誰も望んでいない。
(令和2年6月10日付静岡新聞『論壇』より転載)