「技術開発は官民一体で」
―日米同盟・日米豪印+独・仏・英の結束が重要―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 米中対決の勝負のカギは、新たな兵器を発明し、これを展開できた側が握るだろう。
 習近平氏が「台湾は核心的利益」と言うからには、いずれ獲りに来るはずだ。同氏の香港収奪のやり口を見ると手順などは関係ない。香港議会で決めるべき条例を本国で決めて持ち込み、民衆を叩き潰したのである。台湾攻撃に当たっては、尖閣諸島や宮古島が先制攻撃されるだろう。
 米中対決の勝負も新しい形の戦争になるのではないか。両国ともこれまで海軍力の増強を競ってきたが、米軍は艦隊をグアムからハワイ、さらに本土に移している。それだけ中国の短中距離ミサイルの脅威が増したということだろう。中国はこの20年間に欧米や日本から盗み出した技術を軍民一体となって研究し磨き上げた。その結果、これまでの米側の兵器が陳腐化していることも考えられる。
 科学技術に投入される国家予算は、中国が28兆円(18年)、米国が15兆円(19年)、日本が4兆円(20年)とされる。問題は誰が配るかだが、米国は約半分が国防省。日本は首相の下に置かれた「総合科学技術・イノベーション会議」(CSTI)という組織である。驚いたことにこのメンバーには防衛大臣も、災害対策を担当する国交大臣も加わっていない。デンと常任議席に座っているのが日本学術会議会長である。学術会議のモットーは「軍事研究に協力しない」というものだ。だから組織作りの初めから「軍とは同席しない」と言って、自衛隊を引っ込めさせたのだろう。
 こういう腰が引けた状態で、軍事力を向上できるわけがない。菅首相は学術会議を欠員にした6名を強烈な左翼分子とみているのだろう。こういう人たちが会長に「軍事研究に反対しろ」と攻め立てるのは必至だ。学術会議は軍備強化が必要な日本の足を引っ張る事しかしていない。
 安倍前首相は地上のイージス・アショアに代わる「敵地まで届く兵器を考案せよ」と言って退いた。1,300億円の研究費で、すごい兵器が生まれそうもないが、予算が小さいからこそ、軍民一体の取り組みが必要だ。中国が短期間に軍事技術を磨けたのは、軍民一体だからこそである。
 日本はあの巨大な中国を相手にどうするべきか。日本人が自覚すべきは、軍事同盟を結んでいる国は米国一国だということ。自民党の中には「中国の意向を取り次ぐのが役割だ」という見当違いの親中派がいる。そういう立場に日本が立った場合、日本は米国から軽蔑されるだけだ。中国に言うことを聞かせる強い手段を持っていないのが明らかだからだ。
 中国が強気に出てくれば出てくるほど、日米は軍事力を強化せねばならない。この日米体制を補強するのが印、豪を加えたクアッドだ。欧州でも独、仏、英が中国対策を進めている。仏、英は太平洋に領土がある。中国にとって“友邦”だったドイツが日米側についたのは痛かったろう。
(令和3年4月28日付静岡新聞『論壇』より転載)