韓国での「核抑止力」整備論

.

政策提言委員・拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官 高 永喆

 北朝鮮の金正恩総書記は4月下旬の閲兵式(軍事パレード)で、「核武力の基本使命は戦争抑止」だが、状況次第では「第2の使命を決行せざるを得ない」と述べ、核兵器の先制使用も可能との立場を表明した。核戦略を防御だけでなく攻勢にまで拡大したのだ。
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は最新の推計で、北朝鮮が今年1月時点で最大20個の核弾頭を保有しているとしている。
 米国の専門家たちは北朝鮮が既にスカッドやノドンミサイルに搭載できる程度の核弾頭の小型化に成功し、200kg程度までの小型化に向け努力中だと推定している。
 小型核弾頭をロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の北朝鮮版(KN23)ミサイルに装着すると、軌道が不規則なので迎撃が難しい。
 米朝はこれまで28年間、北の核開発をめぐり対話→対話決裂→挑発→緊張→対話再開の悪循環を繰り返してきたが、北朝鮮は結局、核武装したのだ。
 北朝鮮の核保有は日本、韓国、台湾に核武装の名分を与える。
 日韓台の核武装こそ、中国が最も恐れる最悪のシナリオだ。
 従って、米国は今こそ日韓台の核武装容認カードを示して、中国を北朝鮮の非核化に積極的に向かわせる外交交渉が必要だ。
 米国の保守系の学者やシンクタンクは既に韓国の核武装論を提唱しており、韓国でも、米国との協調の下に、北朝鮮が核攻撃に出れば核反撃を受ける脅威を感じる「恐怖の均衡」による「核抑止力」を段階的に整備すべきとの主張が出ている。
 第一に、米国が期限を定め、北朝鮮が核廃棄に応じなければ、戦術核を韓国に再配備すると事前に発表する。
 第二に、NATO(北大西洋条約機構)式の戦術核兵器の共有である。
 核弾頭は米国が管理し、有事の際は当該国の戦闘機が投下するシステムを備える。
 第三として、米国の了解の下、韓国は、北朝鮮が核を放棄すれば韓国も中断するという条件付きの核開発を推進する。
 これらの三つのオプションを米国と戦略的に協議すべきというのが宋鍾奐慶南大教授(前駐パキスタン大使)の主張だ。
 核拡散禁止条約(NPT)10条には、核脅威が「自国の至高の利益を危うくしていると認める場合」、その国はNPTを脱退できると記されている。従って、北朝鮮の核脅威に直面する韓国と日本は核武装の名分が生じる。
 結局のところ「核抑止力」による韓半島の平和が東アジアの安全と世界平和を保障してくれるに違いないと考える。
(2022年7月7日付「世界日報」より転載)