産経も京都では「容共」なのか?

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 1月30日付の『産経WEST』の記事を見て驚いた。京都先斗町(ぼんとちょう)の「山とみ」という食事処が閉店するという記事が出ていたからだ。山とみを大いに持ち上げる記事だった。
 同記事には、次のようにある。「『山とみに乾杯』『おかみ、今までありがとう』店じまいを4日後に控えた27日夜、1階カウンターやテーブルの約30席を埋め尽くした常連客らが名残惜しそうに酒を酌み交わした」。近くにある南座に出演する俳優や文化人にも愛された食事処で、先斗町を代表する存在だったらしい。テレビドラマ「半沢直樹」のロケ地にもなったそうだ。
 私も共産党の参議院議員時代に何度か行ったことがある。納涼床で飲み食いしたこともある。納涼床とは言うもののそれは見た目だけで、実はすこぶる蒸し暑い。汗まみれになったものだ。今年77歳になる女将も行けば大歓迎してくれたものだ。
 ところがある時期から歓迎されなくなったのだ。それは私が共産党を離党してからだ。もう10数年前のことだ。京都にいる友人2人が、私がテレビ出演で大阪に来るというので、「久しぶりに山とみに行こう」ということになり、個室を予約してくれた。3人で待ち合わせて店に行ったところ、予約していた個室ではなく大座敷に案内されたのだ。
 もちろんピンときた。私は離党した後、既に『日本共産党』(新潮新書)を発表していた。共産党の敵対者である私が来たと思って、個室の使用を拒否したのだ。しかもその情報は、速攻で市田忠義書記局長にまで届けられていた。
 気の毒だったのは、私に同行した京都の2人だった。理由は知らないが、2人とも共産党から除名処分を受けていたのだが、その事実は党内でも隠されていた。2人とも専従職員は解雇されていたのだが、再就職のことも配慮されていたからだ。ところが私と一緒に山とみに行ったため、「3人が共産党に敵対するための謀議を図っている」と見なされ、『しんぶん赤旗』に除名の事実が公表されてしまったのだ。
 2人とも共産党と関係のあるところに再就職していたので、どちらも再び解雇されることになってしまった。1人などは、娘も熱心な共産党活動家だったので、「親子の縁を切る」と言われたそうだ。
 女将は自分の共産党への通報が、こんな影響をもたらしていたことなど知る由もないだろう。2人とも共産党を除名になっても共産党支持者だった。1人などはポスター貼りを手伝っていた。「共産党に敵対する謀議」などあり得ないことだった。
 何故なら山とみの女将は共産党員なのだ。入党を勧誘したのは、穀田恵二衆院議員と私もよく知る女性党員だ。そして、その場にもう1人いたのが除名処分を受けたうちの1人だった。彼の目の前で女将は入党申込書を書いたのだ。言ってみれば“真っ赤”な店なのだ。京都にはそういう店が多い。女将は新しい店を開店するという。記者氏はよくよくご注意を。