【JFSSレポート vol.43】
無法地帯と化した沖縄・高江からの報告
―「反日」に転換した基地反対運動 ―

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経済学博士・評論家 篠原 章

「紛争地域」化した沖縄・高江の現状
 マングローブやパイナップルで知られる沖縄県東村(ひがしそん)の北部に高江という字(あざ)がある。隣村の国頭村(くにがみそん)安波(あは)区と境界を接する高江区は、6つある東村の行政区のうち、住民登録約150人と、最も人口の少ない静かな集落である。メディアなどで報じられてきたように、その高江区がいま、米軍基地を巡って騒乱の只中にある。
 普天間飛行場の辺野古移設と同様、問題の出発点は「基地返還」にある。基地返還によって沖縄の負担を減らそうという日米両政府の計画を受け入れまいとする基地反対派が、激しい抗議運動を展開しているのだ。在日米軍は、1996年の「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告」(日米合意)に基づき、東村と国頭村に跨る海兵隊の北部訓練場約8000ヘクタールのうち、北半分の約4000ヘクタールを返還することになっている。
 但し、この返還には、返還区域内にある6つの演習用ヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)を、非返還区域内に移設するという条件が付されていた。うち2つ(N4地区2箇所)が東村高江区内に、残り4つ(N1地区2箇所、G地区・H地区各1箇所)が国頭村安波区内に移設される予定だった。
 この移設計画には、沖縄平和運動センターなどの反戦平和団体とその支援者、社民党、共産党などの政党や政治団体、地元住民の一部が反対し、工事用資材搬入口の車両による封鎖や座り込みなどで、再三再四工事を妨害した。「住環境と自然環境の破壊」が表向きの反対理由だったが、実質的には、米軍基地や日米安保体制そのものへの反対と見てよい。彼らは、部分返還ではなく全面返還を求めているが、米軍にとって唯一のジャングル訓練センターを含む北部訓練場が、全面的に返還される可能性は極めて少ない。無理を承知で全面返還を要求しているのだから、彼らの目的は「返還」ではなく「反対」にある。
 激しい抗議運動の結果、2002年迄に返還される計画は、14年以上も遅延することになった。移設主体である政府も、こうした妨害行為を積極的に食い止めるのではなく、傍観に近い姿勢を取り続けてきたが、近年になって漸く「ヘリパッド移設が北部訓練場返還の条件」という姿勢を強め、警備と規制を強化するなどして工事を続行した。妨害行為は繰り返されたものの、高江区内の2箇所のヘリパッドについては2014年7月末に完成、既に米軍による訓練が開始されている。言うまでもなく反対派グループはこれにも猛反発した。
 高江区での妨害活動が騒乱状態に発展したのは、今年7月22日未明。この日、国(沖縄防衛局)は国頭村安波区側4箇所のヘリパッド工事に着手したが、工事に反対するグループの数百人が、これを阻止しようと高江区側に設けられた搬入口を座り込みなどによって封鎖、搬入口に繋がる県道70号線に、百数十台の車両を縦横に駐車して工事用車両の通行を妨害した。2007年に最初の座り込みが行われて以来、ここまで大規模な妨害活動は初めてのことだった。
 沖縄県警は、他県警にも要請して機動隊を強化し、最大500〜600名の動員体勢で規制に当たったほか、沖縄防衛局も職員を総動員した。警察・防衛局と反対派グループとの揉み合いなどで怒声怒号が飛び交い、静かだった村は一夜にして「紛争地域」のような様相を呈すことになった。
 以後、反対派グループと警官隊・防衛局職員との間の「激しい闘い」は休むことなく続き、これまでに、沖縄平和運動センターの山城博治議長、「しばき隊」や福島瑞穂参議院議員(社民党)、有田芳生代議士(民進党)と関係が深い元暴力団員・添田充啓、日本基督教団林間つきみ野教会(神奈川県)の吉田慈牧師など計8名が逮捕され、双方に怪我人が出ている。
 こうした騒乱状態の出現に一番驚き、且つ迷惑を被っているのは、地元・高江区の住民たちだ。村外・県外からやって来た反対派グループと警官隊などを合わせて最大1000人を超える「よそ者」が、生活圏に常時入り込んでいるのだから当然のことだ。7月22日から9月下旬まで、反対派グループの通行妨害とこれに対する警察の規制のせいで、農作業などの仕事や買い物、通院などもままならない状態が続いた。
 9月末から、幹線道路の県道70号線については以前ほど激しい妨害行為は見られなくなったが、周辺ではより深刻な事態が進行した。工事が進められている県道の東側では、反対派グループによる「私的検問」「通行妨害」「米軍施設内への不法侵入」などの非合法活動が常態化してしまった。
 特に仰天したのは、公道上での「私的検問」だ。まるで「紛争地域の民兵」を彷彿とさせる行為である。反対派グループは、工事関係車両、防衛局関連車両、米軍関係車両などの通行を妨害するために、周辺村道のあちこちで検問を繰り返し、東村住民や観光客とのトラブルまで引き起こすようになった。
 「民兵」による検問のせいで農地に通うのにも苦労する高江区住民たちの陳情を受けて、東村役場は公費で「高江生産組合」なる付番入りの黄色いステッカーを作り、9月に入ってから村民に配布したが、驚いたことに東村役場は、警察と反対派グループの両者に対して「このステッカーを付けている車両については優先通行権を認めてくれ」と要請したという。
 東村にとっては苦肉の策だろうが、どう考えてもこの措置は異常だ。反対派グループに「公道で検問する権利」があると事実上認めることになるからだ。要するに東村役場は、反対派グループによる高江区の「実効支配」を許したのである。見方を変えれば、「区外から訪れた(反対運動への参加者でない)一般の人たちは高江区を通行できなくともやむを得ない」と宣言したのも同然だ。東村役場が真っ先にやるべきことは、警察などと連携して違法な検問を止めさせること、或いは検問を行っている集団を告発することだが、警察にはそのような訴えは届いていない。このような私的検問に加え、米軍施設内にゲリラ的に侵入して(侵入そのものが日米安保条約に伴う刑事特別法違反である)、工事を直接的に妨害する行為も日常化している。
 反対派グループは、こうした非合法な行動を、「ヘリパッド移設阻止という大義」を実現するための「抵抗権」と考え、確信犯的に私的検問や米軍施設内への侵入を繰り返すが、既に「非暴力の抵抗運動」の許容範囲を遥かに超えてしまっている。
 彼らは「強権的な政府の対応」を批判し、機動隊の「横暴」を訴えるが、実のところSACO合意以来20年間も事実上凍結されていた米軍基地縮小計画が漸く動き出したに過ぎない。勿論、歴代政権にも大きな責任がある。これまでの政府の対応は、「沖縄振興策」なる懐柔策に過剰なまでに依存するだけで、時と共に違法化した抗議運動を事実上放置してきた。法に基づいた規制よりも補助金バラマキを選んだのである。このことが寧ろ事態を悪化させたといってもいい。
 反対派は政府を「強権的」というが、その姿は「強権」とはほど遠く、無責任の誹りを免れない。機動隊の対応も、1970年前後の安保闘争・学生運動、その後の成田空港反対闘争の時代と対照すれば、比較にならないほどソフトだ。ソフトな対応がダメだとは言わないが、結果的に「活動の違法化」を許してしまったことは事実である。そのことは逮捕者数にも現れている。連日行われている非合法活動への参加者数を「延べ数」で数えれば1〜2万人規模に達するのだから、8人という逮捕者数はごく僅かだ。もし機動隊が、反対派のいうように「横暴」「強権的」なら、反対派グループがいとも簡単に非合法な活動を展開できた理由が説明できない。

「土人」発言を喜ぶメディアと識者の劣化
 10月18日、大阪府警から派遣された機動隊員が、連日のように高江に詰めている活動家で芥川賞作家の目取真俊氏に向かって、「どこ掴んどんじゃ、ボケ。土人が」という「暴言」を放ったと大きく報道された。メディアはこれを「沖縄県民に対する差別だ」として政府批判を強めているが、現場に赴けば、警備・規制に当たる機動隊員や沖縄防衛局職員も反対派グループから、連日、耳を塞ぎたくなるような罵詈雑言を浴びていることも事実である。権力の側に立つ機動隊員が差別的な失言をするのは元より許されないことだが、騒然とする現場での「売り言葉に買い言葉」を、「日本による沖縄差別」として批判するのはさすがに不当だ。寧ろ、反対派グループは、違法行為や機動隊員・防衛局職員に対する罵詈雑言を繰り返すことで「権力」を積極的に挑発し、こうした「敵失」を待っていたフシもある。
 「土人発言」は、「ウチナンチュウ(沖縄人)に対するヤマトンチュウ(日本人)の潜在的な差別意識の現れ」としてメディアで厳しく糾弾され、「先住民である沖縄人を虐待する植民者・日本人の蛮行」として国際社会に訴える識者すら登場している。沖縄県民はもはや「基地被害者」などではなく、ここでは「抑圧された少数民族」に「格上げ」されている。
 こうした事態は、反対派グループとその支援者にとって単なる「予定調和」或いは「想定内」だったのではないか。それどころか「(こんな暴言を)待ってました!」という反応すらある。例えば、「女装の歴史家」として知られる東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授は、以下のような一文を10月26日付けの琉球新報に寄せている。

 『非暴力の闘争で最も大事なのは、どうすればこちらが暴力を使わずに、相手を挑発して暴力を使わせるか、ということ。今回、この線から近づくなと言う警察に対し、抗議する人々が金網を利用して挑発し、日本警察の本質を露呈させた。「土人」発言という暴力を振るったことで、警察は窮地に立たされている。沖縄が今考えるべきは、更に挑発的な次のアクションをどう起こすかだ』
 『もちろん、それが一般化し「沖縄人は土人だ」という空気が広がる可能性もある。その場合、沖縄は独立せざるを得ない。そのときは世界中がそれを容認し、日本は威信を喪失するだろう』
 『今回の「土人」騒動は、言い訳した大臣の発言がまた火種をつくっている。沖縄は嵩に懸かって権力者を挑発し、ばかなことを言わせ続け、次々に言い訳させて対応を迫るべきだ』

 安冨教授の主張は、まさに沖縄における反基地闘争が勝利するための「方程式」を示したものだが、一連の「闘争」をゲームの如くにしか捉えていないこともまた歴然としている。何よりも問題となるのは『勿論、それが一般化し「沖縄人は土人だ」という空気が広がる可能性もある』という表現だ。「沖縄県民は土人だ」と認識する日本人が殆ど存在していないにも拘らず、安冨教授は「土人を強調すれば日本人の差別感情が昂じて独立が勝ち取れるぞ」と言うのである。「土人として差別されることが望ましい」と言っているに等しい。
 差別感情を煽ることで、「沖縄VS日本」という分断の構図をでっち上げ、実像か虚像かも不明な「沖縄ナショナリズム」の具体化が目標であるかの如く語る安冨教授の言動は、研究者としての倫理を問われるだけでなく、沖縄県民に対する許されざる侮辱である。私たちが直面する問題は、人々の命と暮らしが息づく実世界の話なのであって、ゲームでもフィクションでもない。そのことを知ってか知らずか、安冨教授は、「非暴力という名の暴力」によって、基地問題と沖縄県民をいいように弄んでいるのである。
 高江や辺野古の基地反対運動が、このような言説を無神経に発信する識者の「戦術」に先導されるとすれば、その先には邪悪な結末さえ見えてきてしまう。
 このような発言を、沖縄県民に対してシャワーの如く大量に浴びせて、ある種の「洗脳」を仕掛けるのが沖縄における有力メディアの常套手段だが、今回は目も当てられないほど酷い。安冨教授の言説は、琉球新報の緊急連載コラム『機動隊 差別発言を問う』の一つとして掲載されたが、沖縄タイムスも同様の趣旨の緊急企画『インタビュー「土人」発言』を連載している。一機動隊員の失言にも拘らず、沖縄二紙に連日「土人」という差別語が過剰なまでに氾濫し、実体の乏しい「日本人の差別意識」を糾弾する姿勢は、いたずらに差別を助長し、「沖縄VS日本」という不毛の構図をより強調するだけだが、何故そのことに気が付かないのか。
 沖縄県議会の姿勢も沖縄二紙とほぼ同様である。複数の政府関係者が既に遺憾の意を表明し、失言した隊員は処分も受けているにも拘らず、10月28日には、「土人発言」に対する抗議決議・意見書を採択した。当初は「機動隊の撤退」も決議文・意見書に盛り込まれていたというが、中立会派の承認が得られず、「機動隊撤退」は文言から削られたという。末端の公務員の失言をここまで拡大して政治問題化することにどれ程の意義があるというのか。沖縄振興策を引き出すための政治的プレッシャーを強化しようという意図も見え隠れするが、県民の心の傷を広げ、沖縄と本土の間の溝を深めるだけに終わる。この決議を可決した県議の政治家としての良心を疑わざるを得ない。

住民不在の反対運動という現実
 土人問題で紛糾する東村高江の問題だが、そもそも反対派グループによるこうした非合法活動が、高江区や東村の住民の意を受けて行われているものではない、という点は繰り返し強調しておきたい。彼らの活動は、東村の民意でもなければ、高江区の民意でもない。ましてや、ヘリパッド移設工事が進められている隣村の国頭村或いは国頭村安波地区の民意でもないのである。
 高江区の属する東村の伊集盛久村長は、ヘリパッド建設を容認する立場だ。そして連日非合法活動が行われている高江区も、2006年に二度目の「ヘリパッド建設反対決議」を行って以来、区としての総意を示していない。工事が始まってからは事実上静観している状態である。
 仲嶺久美子高江区長は、「住民の間でヘリパッドが話題になることは滅多にありませんが、誰もヘリパッドを歓迎していないことは確かです。だからといって、皆が抗議活動を支持しているわけでもありません。ストレスのない平和な村を取り戻したい、というのが私たちの本音です」と語る。
 その仲嶺区長は、伊集東村長と共に沖縄を訪れた稲田朋美防衛大臣と会談し(9月24日)、国からの直接交付金を求めている。ヘリパッドの賛否そのものに拘泥するのではなく、騒音被害などに対する「迷惑料」を政府に望む姿勢だ。反対派グループとは一線を画した現実的な対応である。
 実際、ヘリパッド反対の抗議運動に積極的に関わる高江区の住民は、昨年村議に選出された家具職人の伊佐真次氏など数名である。高江区側のヘリパッドが既に完成し、運用されている現在、高江区或いは東村としてできることは、オスプレイを含むヘリコプターの騒音や飛行経路に抗議し、改善策を要求することでしかない。ヘリパッドの工事が進む国頭村安波区側には、抗議運動らしきものが殆ど見られないのだから、安波区或いは国頭村と連携した活動も難しい。現在の抗議運動が、東村・国頭村以外の県内他地域や県外からやって来た活動家と支援者によって進められている現状は、高江区民の思いを汲み取ったものとは言いにくい。
 村外・区外からやって来た活動家と支援者には、沖縄県内外の、特に自治労や教員組合に属する組合員或いはそのOBが多いことは知られているが、驚いたことに逮捕者のうち2名が外国籍だったという。以下は、9月29日に開かれた県議会で、花城大輔県議(自民党)の質問に答える池田克史県警本部長の答弁である。

池田県警本部長「7月22日以降に北部訓練場の関連で逮捕した者について申し上げますと、5名でありまして、公務執行妨害罪で3名、往来妨害罪で2名であります。その内訳を県内県外で言いますと、県内3名、県外2名で、国籍で言いますと日本が3名、韓国が2名となっております。男女別では男性が3名、女性が2名となっております」
 新聞などの報道からこの数字を補うと、韓国籍2名の逮捕者の内訳は男女各1である。答弁の行われた日から、本稿が執筆された10月28日までの間に更に3名の逮捕者が出ているが、山城議長を除く2名はいずれも県外出身者である。
 詳細は不明だが、これまでの逮捕者8名の内訳を見ると、県内出身の逮捕者が3名〜4名、県外出身の逮捕者が3名〜4名という構成である。そこから類推すれば、かなりの数の県外出身者が高江(或いは辺野古)で活動していることになる。逮捕者のうち2名が韓国籍であるということにも驚かされる。

「反差別」にシフトした反対運動
 勿論、逮捕者の県外比率が活動参加者全体の県外比率と同じではないことは承知しているが、東村民でもなく沖縄県民でもない県外出身者が沖縄における基地反対闘争の「コア」を形成していることは間違いない。逮捕者の中には韓国籍の者もいるが、高江の反対派テントに常駐するパク・ホンギュン事務局長も、関西出身の在日韓国人と言われている。
 「闘争」の最前線に見られるこうした現実を突き付けられると、「沖縄の声を聴け」「沖縄の民意を無視するな」という彼らのスローガンが虚しく響いてくる。沖縄の新聞は好んで「住民」という言葉を使って辺野古や高江の抗議運動をサポートするが、この場合の「住民」には地元住民は殆ど含まれていない。沖縄県民を「住民」と見做すには無理があるが、例えその主張を認めたとしても、本土から駆けつけた相当数の応援団まで「住民」に含めることはできない。こうした「住民」が、非合法活動に平然と手を染めていることも併せて考えると、この運動の性格を、県民による純粋な平和運動・基地反対運動とは見做せないことは明らかだ。
 外国籍の活動家の存在も無視できない。以前から在日朝鮮人や韓国籍の一時滞在者が、辺野古や高江の活動に積極的に関わっていることは指摘されていたが、ある在日関係者によれば、在日韓国人・朝鮮人の団体が、組織的に沖縄での活動を支援しているという。その関係者によれば、彼らの間でこうした活動は「離日運動」と呼ばれているらしい。日本から離れる運動ではなく、国際社会における日本の品位を落とすための活動だという。
 もしこうした情報が事実であれば、一連の活動は、沖縄の米軍基地負担を軽減するためのものなどではなく、既に別次元の領域に足を踏み入れつつあると言わざるを得ない。「反差別運動」と言えば聞こえはいいが、先の安冨教授のコラムにも如実に表れているように、その差別は、日本という国のシステムを全否定するための「虚構の差別」である。そうであるなら、これは住民運動でも平和運動でもなく、単なる「反日運動」だ。「土人発言」を前面に出して、「沖縄140万県民は、差別と抑圧の中で辛うじて生きる少数民族であり、日本政府と日本人は植民者・抑圧者だ」と主張する反日運動は、日本の安全保障とは何の関係もない。実体のない「差別」が、基地問題に強引に結び付けられているだけだ。
 高江のヘリパッド移設工事は年内にも終わり、北部訓練場の半分は速やかに返還されることになる。そうなれば反対派グループは、潮が引くように高江から撤退し、再び辺野古に集結して活動を継続するだろう。「反日」に転換した運動が、今後どのような「新手」を繰り出してくるのか、現段階では想像もつかないが、もはや「基地負担」など単なるお題目に過ぎないことは歴然としている。
 翁長雄志沖縄県知事は、運動側のこうした転換を十分認識しているはずだが、その流れを食い止めるのではなく、逆に加速する政治姿勢を採っている。知事が願う沖縄の幸福とは何なのだろうか。知事は県民の命と暮らしを守る意思があるのだろうか。来年(2017年)1月にも下される辺野古埋め立てを巡る最高裁の判断を受けて、知事がどう行動するか、今まで以上に厳しく注視したい。


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篠原 章(しのはら あきら)
 1956(昭和31)年、山梨県生れ。成城大学卒業後、成城大学大学院博士課程修了(経済学博士)。財界系シンクタンク、千葉商科大学助教授、大東文化大学教授(駒澤大学大学院客員教授も兼任)を歴任。現在は、音楽文化、沖縄、社会経済一般などをフィールドとした評論活動を展開。大学教員時代は主として財政学を担当。日本財政学会元理事・日本地方財政学会元理事。
 最新刊は『報道されない沖縄基地問題の真実』(別冊宝島)。編著書にベストセラー『沖縄の不都合な真実』(共著、新潮新書)、『日本ロック雑誌クロニクル』(太田出版)、『沖縄ナンクル読本』(共編著、講談社)、『ハイサイ沖縄読本』(編著、宝島社)、『J-ROCKベスト123』(講談社文庫)等多数。