冨澤暉氏の「第2回猪木正道賞特別賞」受賞報告

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お知らせ JFSS事務局

 当フォーラムの顧問である冨澤暉氏が、平成28年11月25日に開催された日本防衛学会の研究大会において、「第2回 猪木正道賞 特別賞を受賞致しました。



第2回 猪木正道賞 特別賞
逆説の軍事論ー平和を支える力の論理」(バジリコ社)



【 講 評 】
特別賞
冨澤 暉 著  逆説の軍事論−平和を支える力の論理』(バシリコ、2015年)

 本書は、軍事と安全保障・防衛に関する問題を平易な言葉で真正面から冷静に論じた近年まれに見る優れた啓蒙書である。本書は、18世紀以来の長い歴史的なスパンを通じて軍事の変遷を論じ、これによって軍隊の本質を解説し、さらに、核兵器の役割といった極めて高次元の戦略的・政治的なレベルから、部隊の指揮統率や人事、装備、訓練といった実務的なレベルにいたる広範な問題を簡潔かつ丁寧に解説している。軍事行動の様相に関しても、国家総力戦から対ゲリラ戦のような非対称戦、国連平和維持活動のような非伝統的な活動、さらにはミサイル防衛やサイバー空間における戦いにいたるまで様々な側面に触れている。また、現代における軍事力の役割についても、抑止や紛争の未然防止から、個別的・集団的な自衛権に基づく軍事力の行使、集団安全保障のためのものまで広範な議論を展開している。
 本書がきわめて優れているのは、丁寧な筆致で俗説に反論しつつ、冷静でバランスのとれた議論に徹していることである。軍事に関する解説書にしばしばみられる鬼面人を驚かす表現やエキセントリックさはまったくない。これは、陸上自衛隊における防衛の実務を通じて培ったプロフェッショナリズムと、退官後に大学で若い学生を相手に丁寧に防衛を論じてきた経験からであろう。
 総じて、本書は正論に徹した軍事論であり、専門家から初学者まで多くの読者に安全保障と軍事という問題に関する大観を提供する優れた啓蒙書である。猪木正道賞特別賞にまことにふさわしい作品といえよう。

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猪木正道賞正賞は、防衛・安全保障研究の進歩発展に顕著な貢献をなす研究業績に対し年1回、日本防衛学会で選定し、授与します。 また、猪木正道賞正賞に準じる研究成果に対して奨励賞、安全保障についての啓蒙的著作に対して特別賞が贈られます。(NPO法人日本防衛学会猪木正道賞基金ホームページより)