澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -202-
習近平政権の「内憂外患」

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 最近、香港の『動向』が次のように指摘している。
 確かに、中国のGDPは世界第2位である。だが、その1人あたりのGDPは、世界で69位に過ぎない。
 また、都市と農村の収入格差は世界1である。最富裕層1%が、中国全体の富の30%を独占している。貧富の格差を示すジニ計数は、連続3年0.7を超え、世界1となっている。
 衛生医療の公平性は、世界の最後から数えて4番目である。公務員の清潔度は178位だが、公務員の行政コストは世界1となっている。
 おそらく習近平政権は、自国経済が「リーマン・ショック」時よりも悪いと認識しているに違いない。だが、景気回復のための“妙手”は見当たらない。
 「ラジオ・フリー・アジア」の梁京によれば、中国唯一の選択肢は 土地をベースにした通貨増発メカニズムである。今年(2017年)、各省の不動産への投資計画規模は、40兆元(約640兆円)を超えるという。不動産バブル再燃は必至と思われる。
 そこで、習主席は自分の派閥以外の新興財閥から財産を“強奪”し、国家財政の穴埋めをするつもりかもしれない。
 つい最近、博聞社は、李彦宏が中国公安部から海外への出国を禁じられていると報じた。多分、李は官僚とビジネス界との“癒着”を調査されている公算が大きい。
 中国新興財閥の一つ「明天系」蕭建華が約1ヵ月前の1月27日、香港から拉致され、中国大陸で拘束されている。
 蕭建華の妻、 周虹文と、中国最大の検索エンジン「百度」(Baidu)の李彦宏(ロビン・ リー)は、北京大学で同じ学科の同級生だった。
 蕭建華の次に、李彦宏が習近平政権のターゲットになっている可能性を排除できない。
 2015年、米『フォーブス』誌では、中国の富豪中、李彦宏が資産104億米ドルで第6位だった。ひょっとして、今後、李彦宏も蕭建華と同じ運命を辿るだろうか。
 一方、「ラジオ・フリー・アジア」が報じたところによれば、今年(2017年)2月22日、退役軍人らは、地方政府からの北京行き阻止を掻い潜り、再び北京に集結した。彼らは、中央紀律検査委員会ビルの前に集まり、習近平中央軍人委員会主席に生活保障問題解決を求めたという。
 昨16年10月11日、中国では、1万を超える退役軍人が北京の中央軍人委員会ビルを取り囲み、退役後の生活保障の改善を要求している。
 ここ10年、退役軍人らは地方政府に彼らへの生活保障の実行を求めてきた。だが、埒が明かないので、退役軍人らは昨秋、北京政府へ陳情を行っている。その際、中央政府民政部等の官僚が各省市へ戻って地元で問題を解決するよう勧めた。
 しかし、4ヵ月経っても、地方官僚は退役軍人の北京への陳情を阻むだけで、問題解決する誠意は見られなかった。各地の退役軍人は、国務院や関係部門の生活保障政策を実施しない地方政府に対して不満を抱いているのである。
 今回、地方政府は、退役軍人の北京行きを邪魔し、退役軍人の中には、殴打された者もいた。地方政府の役人は、当地の人々が北京への陳情を恐れている。
 おそらく、地方政府にも言い分はあるだろう。どの省市も財政が厳しい。退役軍人らに生活保障をしたくても、その財源がないのではないか。地方政府が、彼らに対しカネを支出すれば、財政が破綻しかねない。
 ここで目を海外に転じてみよう。周知のように、米オバマ前政権は、中国の南シナ海進出に対して腰が引けていた。その間、中国は着々と南シナ海の礁で軍事基地を築いている。
 けれども、トランプ新政権は「対中強行路線」を明確に打ち出した。
 そして、今年(2017年)2月18日、米国空母「カール・ヴィンソン」(ニミッツ級)が南シナ海を遊弋(ゆうよく)した。
 米国は、通常の“パトロール”の一貫と主張しているが、明らかに中国軍を牽制し、圧力をかける行動である。今後も米空母が南シナ海を常に“パトロール”するに違いない。
 よく知られているように、現在、中国軍は空母に関しては「遼寧」1隻だけ保有している。今、中国は国産空母を建造中だが、就役まで相当時間がかかるだろう。
 他方、目下、安倍政権とトランプ政権は「中国封じ込め」戦略で完全に一致している。我が国は「いずも型」の「いずも」と「ひゅうが型」の「ひゅうが」「いせ」の護衛艦3隻がヘリ搭載空母(垂直離着陸機のF-35B戦闘機ならば、搭載可能と言われる)とされている。同じく「いずも型」の「かが」が近く就役し、“4隻体制”の見通しだという。
 今後、日米は、一致して東シナ海・ 南シナ海で中国の“膨張”を阻止する構えである。習近平政権にとって、両国の結束は“脅威”ではないか。