安倍首相長期政権の課題

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会長・政治評論家 屋山太郎

 イギリスがEUから離脱し、アメリカのトランプ政権は多国間貿易協定をやり直すと言う。アメリカの貿易赤字を見ると中国の赤字が43.5%もある。12%のメキシコや11%のカナダに腹を立てているのだから、そのうち腹立ちを中国にぶつけるのは必至だ。
 どの国もどこかの国との貿易不均衡を抱えているのだが、大の大人がカンカンに怒って相手国をどやしつけたのは初めてだ。内心で怒りながら黙々と赤字調整をすれば、結果が出るのに10年はかかる。日本の自動車産業がそうだった。
 しかしトランプ氏のように怒鳴りつつやれば5年くらいで始末がつくかも知れない。そのあとは元の貿易協定を修正して使おうということになるような気がする。安倍首相がまだTPPを諦めていない風情なのは、日米にとってこれほど良い貿易協定はないと信じているからだ。トランプ氏は国際問題や外交について安倍氏の意見を聞く立場だから、話が分かってきたところで豹変する可能性がある。
 アジア開発銀行(ADB)は2016~30年にアジアのインフラ需要が26兆ドル(約3000兆円)に上がるという報告書を発表した。電力や道路、鉄道が整備されるはずだが、この分野が日本の得意分野だ。日本の強みは日本の労働者が出稼ぎに行って作る訳ではない。現地人に作業のコツを叩き込むのが日本のやり方で、それを相手方も望んでいる。日本の働く余地は途方もなく大きなものになるだろう。
 今、日本が背負っている宿題は自衛隊に警察官とは違う正統な軍事的権利を与えることだ。昨年、新安保法が制定されたが自衛隊は警察官と同じで、正当防衛の権利だけしか持っていない。相手が撃ってきて初めて反撃できる。航空自衛隊は常に2機で飛んでおり、1機が撃ち落とされた場合に残った1機が反撃できる、これは正当防衛の解釈をひたすら狭めているからだ。
 或いは敵地から攻撃された場合、その攻撃地点を叩くのは常識で、憲法解釈上も可能ということになっているが、これを明確にする必要がある。要するに相手と5分に戦うにはどうしても憲法改正が必要だ。安倍首相は憲法9条に「国防軍を設ける」旨の第3項を加えるだけでも十分だと考えている。
 総選挙は18年秋に行われる見通しだが、安倍氏は20年に任期が終わるから、その残りの任期中に憲法改正の国民投票に打って出るだろう。その頃には国際情勢の荒波で共産党は沈没しているだろう。