澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -219-
北朝鮮情勢に関する2つの気になるニュース

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 今年(2017年)4月6日、米国がシリアに巡航ミサイルを打ち込んだ。そのため、急に朝鮮半島情勢が緊迫している。
 最近の北朝鮮関連情報で、注目すべき2つのニュースを見つけた。
 現在ネット上では、今年4月9日、台湾の『重視電子報』が「中国東北地方の防衛を担当する北部戦区が配下の陸海空部隊の両方に全面臨戦態勢の命令を下す」というニュースが独り歩きしている。
 『朝鮮日報』(2017年4月10日付)「(仮訳)日本の報道機関、“中国軍、15万を中朝国境に配備との噂が拡散”」の日本語訳が、元になっているようである。
 だが、このニュースは、同4月3日(『重視電子報』ではなく)『中時電子報』が「共産党軍が中朝国境に結集 ミサイルを配備」という記事が大元となっている。それを『朝鮮日報』が取り上げたが、その後、韓国語から日本語へ翻訳されている間に、上記のような誤訳となったと考えられる。
 実はその『中時電子報』の文章は、以下の概要だった。
 北部戦区は約43万人の兵力で、その配下には、16集団軍、23集団軍、39集団軍、40集団軍が存在する。北朝鮮に何か起きた場合、中心的部隊は、遼寧省営口市と錦州市の39集団軍(重武装機械化集団)と40集団軍(迅速対応部隊)である。
 さて、周知のように、現・北部戦区(旧瀋陽軍区)が、北朝鮮をずっと支援して来た。北が核・ミサイルを開発できたのは、江沢民系の「上海閥」のお陰である。
 北京政府が軍隊を動かしても、それが(1)北朝鮮を(医療を含め)支援するための軍の移動なのか、(2)それとも、北朝鮮から難民を中朝国境で食い止めるための軍の移動なのか、不明である。
 もし(1)ならば、習近平政権は「第2次朝鮮戦争」も辞さない構えである。再び、人民解放軍中、朝鮮族主体の軍が朝鮮半島へ投入されるだろう。
 (2)の場合、人民解放軍が鴨緑江を渡る北朝鮮難民を大量に射殺しても、難民流入を防ぐつもりに違いない。
 その時、中国に対し世界的に非難が巻き起こり、習近平政権は海外から経済制裁を受けることになる。
 目下、中国は景気が低迷しているが、国際的な対中経済制裁で、ますます中国経済は悪化し、習政権は苦境に陥るだろう。
 一方、金正恩委員長は、無辜の民である自国民が人民解放軍に射殺されるのを看過できるのか。その場合、北朝鮮軍が、人民解放軍と戦闘を交えるというシナリオもあり得る。
 けれども、仮に北朝鮮軍と中国軍北部戦区の一部が「一体化」していたら、彼らはどのような行動を取るのだろうか。状況が複雑すぎて、現時点では予測不可能である。
 次に、2つ目のニュースを紹介したい。今年4月11日、豪『デイリー・テレグラフ』紙が「米国政府が北朝鮮のミサイル試射を迎撃した際、北はそれに対しミサイル攻撃を準備しているかもしれない。そこで、豪州とその同盟国(複数)に厳戒体制を要請した」と伝えた。
 4月15日は、金正恩委員長の祖父、金日成の誕生日(太陽節)である。また、同月25日には、建軍節(朝鮮人民軍創設記念日)も控えている。この前後に、北朝鮮はICBMを試射する公算が小さくない。
 ひょっとして、トランプ政権には、これを撃ち落とす計画があるのかもしれない。
 もし、北朝鮮のミサイルが撃ち落とされれば、金委員長の面子は丸潰れとなる。そして、北が豪州とその同盟国を攻撃しないとも限らない。
 ところで、問題は豪州の同盟国とは、一体どの国を指すのか。
 常識的には米国を除く「エシュロン」4ヵ国ではないかと思われる。元来、「エシュロン」は、英語を母国語とする、米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドで構成されている。この5ヵ国は、世界中の重要な軍事情報を共有している。
 本来ならば、米国の同盟国、日本や韓国に対し、真っ先に警告しなければならない。北朝鮮から最も攻撃を受けやすいのは日本と韓国だからである。しかし、トランプ政権は、その日韓を差し置いて、豪州とその同盟国に注意を喚起した。米国政府の本音が垣間見られるだろう。
 言うまでもないが、米国は、この地球上で自国の生き残りを最優先している。次に、米国は他の「エシュロン」4ヵ国と共に生き残りを模索するだろう。その後、米国はEU諸国(白人国家)の生き残りを考えるに違いない。
 あとは、その他、我が国を含む米国の同盟国という順位ではないだろうか。おそらく日韓の優先順位はその程度なのかもしれない。