澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -234-
今年の北戴河会議と「19大」

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 毎年夏、中国共産党は、新旧幹部が河北省皇島市の避暑地、北戴河に集まり非公式会議を開く。
 今年(2017年)も8月に同会議が開催されたと言われている。しかし、本来ならば北戴河会議に出席するはずの主要閣僚が、会議期間中に別の会議に参加していた。
 例えば、俞正声(政治協商会議主席)は中央の代表団を引き連れて、内モンゴルでの式典、及び、当地での調査研究に参加している。
 その中には、孫春蘭(統一戦線部長)、劉延東(副総理)、張平(全人代副委員長)、王正偉(政治協商会議副主席)、張陽(党中央軍事委員会政治工作部主任)ら、政府高官がいた。
 また、本来、北戴河会議に出席すべき胡春華(広東省委員会書記)は、東莞市・中山市・珠海市・恵州市等で調査研究を行っていた。同様に、韓正(上海市委員会書記)も、連続して上海に現れ、江南造船集団有限責任公司(上海市長興島。1865年に設立。中国船舶工業集団のグループ企業)で調査研究を行っていた。
 胡春華と韓正は、今秋の中国共産党第19回全国代表大会(「19大」)では、政治局常務委員へ昇格するかも知れない重要人物である。
 以上のメンバーが北戴河会議に不参加とは考えにくい。
 とすれば、ひょっとして、今回、北戴河会議が開催されなかった公算が大きい。或いは、一応、同会議は開かれたが、縮小され短期間で終了した可能性も捨てきれない。
 いずれにせよ、習近平主席が、北戴河会議の意義を喪失させ、江沢民元主席や胡錦濤前主席ら旧幹部の影響力を排除するための方策だったかも知れない。
 もし例年通り、北戴河会議が普通に開催されていたら、習主席の盟友、王岐山(党中央紀律検査委員会書記)の去就が、1番の問題となっていたに違いない。
 党内ルールである「七上八下」(67歳までは、政治局常務委員を継続できるが、68歳以上は退任)に従えば、今年69歳の王岐山は、引退を余儀なくされる。
 周知のように、米国へ逃亡中の郭文貴が盛んに「王岐山スキャンダル」を暴露している。
 郭文貴によれば、王岐山には私生児が2人以上いる。また、王ファミリーは米国での14の不動産(豪邸)を持っている。そして、王一族は、海航集団の株を大量に保有しているという。
 当然、江沢民派(「上海閥」)や胡錦濤派(「共青団」)は、「反腐敗運動」の中心人物の王を留任させたくないだろう。
 一方、習近平主席としては、王が政治局常務委員の地位を降りれば、たちまち自分の身が危うくなるおそれがある。そこで、習主席は是が非とも、王を留任させるつもりではないか。
 ところで、今後、中国共産党の政治システムがどのようになるのか不透明である。一部では、政治局制度を廃止するという噂が流れている。そして、習近平主席が総統(大統領)となるという。
 ここでは、仮に政治局常務委員を現在の7人体制(現状維持)だとしよう。次のメンバーが有力ではないか。
 まず、習近平主席、李克強首相、王岐山が留任するとする。あと残りの枠は4つである。
 (1)栗戦書(中央弁公庁主任)、(2)汪洋(副総理)、(3)王滬寧(習主席の知恵袋。元は、江沢民政権と胡錦濤政権でも理論的ブレイン。復旦大学教授)、(4)韓正(上海市党委員会書記)、(5)陳敏爾(重慶市党委員会書記)、(6)胡春華(広東省党委員会書記)等が考えられる。
 今年7月、第6世代のホープ、孫政才(前重慶市委員会書記)が突如、失脚した。そのため、もう1人のホープである胡春華(「共青団」)の将来に暗雲が垂れ込めている。はたして、胡はすんなりと政治局常務委員になれるのだろうか。
 問題は、習近平主席の側近、栗戦書と王滬寧である。栗と王は“不倶戴天の敵”だと言われる。それでも2人が政治局常務委員会入りする場合も考えられない訳ではない。
 けれども、もし2人のうちどちらかが昇格するならば、栗戦書の方が常務委員会入りする可能性が高いだろう。
 他方、現在、汪洋は“当選確実”との報道が流れているが、人事は蓋を開けて見なければ分からない。