澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -246-
北の核実験に対する北京と東北3省の反応

.

政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 周知のように、今年(2017年)9月3日、北朝鮮は6度目の核実験を行った。これに対する中国政府の反応を再考してみよう。他方、東北3省人民の反応も興味深い(後述)。
 まず、前者は、自由亜洲電台(「自由アジア放送」“Radio Free Asia”=RFA)の趙岩のコラム概要を紹介する。後者も、やはり自由亜洲電台(同)の記事を引用する。
 北朝鮮の核実験直後、9月14日、吉林省長白山景勝地管理有限公司は、旅行客の安全を考慮し、長白山(=白頭山。中国吉林省と北朝鮮両江道の国境地帯にある標高2744mの火山)南側地区を一時閉鎖し、安全の検査を実施する事を明らかにした。
 その発表前日の13日、長白山南側地区に巨大な岩石の落下が生じた。そこで、現場を修復する必要がある。同公司は岩石が引き続き落下する公算が大きいので、事故が起こらないよう暫く閉鎖を決定した。
 長白山は中朝国境に面し、東北3省では有名な山脈である。同景勝地は、冬のシーズンでも多くの観光客がやって来る。そこを閉鎖する事は滅多にない。
 実は、長白山南側景勝地は、北朝鮮の咸鏡北道吉州郡豊溪里(プンゲリ)の核実験場に近い。北の核実験は、中国の安全保障に対し重要な問題を引き起こしたのである。
 吉林省の延辺朝鮮族自治州、黒竜江省牡丹江市、遼寧省各地の住民は、北の核実験による激しい地震の揺れを感じている。
 中国環境保護省は、東北地区及びその周辺地区に設置された放射能自動観測器による1時間の放射能測定の結果、北の核実験は中国の環境や民衆へ影響を与えていないと対外的に公表した。
 北朝鮮が引き続き核実験を行えば、次回或いは次々回、放射能漏れの可能性がある。そうすると、東北3省の1億人に近い人口と、河北省・北京市・天津市・山東省の1億人以上の人々が、放射能の危険に曝されるだろう。
 もしかすると、江蘇省・上海市・浙江省の一部の人々も、重大な影響を受けるかも知れない。
 人口の多い東北部での環境は、永久に破壊される。そして、長白山と興安嶺は、「チェルノブイリ」と化すかも知れない。 
 ひょっとすると、松花江や遼河の水も飲めなくなる可能性もある。東北地区の住民は移住を余儀なくされるばかりか、北京の安全にも影響を及ぼし、場合によっては、北京の遷都も不可避かも知れない。
 もし、金正恩委員長が10月18日に開幕する中国共産党第19回全国代表大会(「19大」)の開幕時に、北京天安門の人民大会堂へ何基かミサイルを打ち込めば、空前の一致団結した共産党大会となるだろう。
 習近平政権が国内を安定させ、「反腐敗運動」を推進するためには、先に世界を不安定化させる金正恩委員長を引きずり下ろしてからではないか。
 趙岩のコラム要旨は以上である。
 さて、北朝鮮の度重なる核実験は国際社会から非難されている一方、北の近隣の中国東北3省の民衆は、核実験が放射能の拡散をもたらすのではないかと恐れている。だが、中国政府は未だこの問題に関して具体的な行動を取っていない。
 そこで、黒竜江省のごく一部の人々が、当局の警告を恐れず、プラカードを掲げて北朝鮮の核実験に対して抗議活動を行った。
 例えば、黒竜江省ハルピン市の公民である李可人は、北朝鮮が国際社会の反対を無視して核実験を引き続き実施すれば、東北3省の民衆の生命の安全ばかりでなく健康被害を及ぼすと、9月18日、自由アジア放送に回答している。
 李可人らは、交通を渋滞させないように街中を行進し、緊急事態宣伝を行った。街中での抗議時間は僅か10分程度だったが、その間、警察はやっては来なかった。警察は、彼らによる北朝鮮の核実験に対する抗議は、自らの安全を危惧したためと考えていたふしがある。
 李可人によれば、吉林省延吉市では既に生活に支障が出ているという。北の核実験が人の健康に害を与えているのである。
 他方、于雲峰は、同月15日に、プラカードを掲げ、北朝鮮に抗議を行った。翌16日、警察から何度も警告を受けている。彼ら1人1人は、北の核実験の被害者になるかも知れない。その点、警察も理解しているが、デモ行進は禁じられている。
 中国遼寧省・吉林省・黒竜江省の東北3省の民衆は、北の核実験で地震を経験した。その後、彼らは北朝鮮の放射能の脅威を感じている。