「国家の重要な改革は5年を要する」
―国鉄民営化・郵政民営化、次は「農業改革」―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 安倍政権の5年間に国家の骨格は様変わりした。新安保法関連の一連の改革がなければ、北朝鮮の攻勢にただ米国にすがるか、震えるしか手がなかったろう。中曽根政権時代の国鉄分割・民営化にも5年かかった。小泉政権の郵政民営化も5年を要した。安倍政権がこのまま続けばあと4年ある計算だが、この期間に解決すべき課題は、「農業」をおいて他にないだろう。農業が発展を止めてしまったのは、1971年に始まった減反からだ。当初は他産業従事者との格差を拡大させないためだったが、貧しい方にゲタを履かせるやり方で、産業を発達させるのは不可能だ。
 安倍内閣は日欧EPAやTPPを提携することに懸命になっているが、貿易立国の日本は経済連携を進めるほかに稼ぎようがない。そのルールで自由市場を支配する形を率先して作ろうとしているのが安倍氏だ。中国や韓国を加えたRCEP(東アジア共同体)では知的財産や技術の窃盗を防ぐのに不十分だと考えている。
 一方、米国のトランプ氏はTPPから離脱しカナダ、メキシコと結んだNAFTAも破棄すると言っている。米国の赤字解消のために協定から抜けるのが最速と信じているようだが、他の閣僚達は「協定に入るべきだ」との考えを洩らす者が多い。トランプ後に、米国はTPPに復帰するだろう。
 安倍政権が各国や地域との経済連携に取りかかる時の最大のネックは農業問題、突き詰めればコメ問題だ。今のところEUにもTPPにも「コメ輸入はゼロ」と主張しているが、別枠で外米をひっそりと輸入している。何より困るのは上等なコメを大っぴらに輸出品目に揚げられないことだろう。「一粒も入れない」という反面、「輸出させろ」と叫ぶ訳にはいかないからだ。
 18年度から減反をやめることに踏み切るが、農水省とJA全中がひっそりと減反続行を密約しているフシがある。17年度までの減反のやり方は、コメの生産農家から減反用として10アール当たり10万5000円を払った上で、飼料用として畜産農家に売らせる。一方、食用米の買い入れ価格も10アール当たり10万5000円で、こちらは消費者が買う。コメ農家にとっては主食用を作ろうが飼料用を作ろうが、手取りは同じだ。17年度は飼料用を買い上げ過ぎたせいか、主食米が不足して値が上がった。いずれにしても、これまでは農水省が案配をして主食用のコメの数量を決め、残りは飼料用として販売した。
 18年度はどうするか。JA全中がこれまでのように各県に主食用を割り当てるという。それ以上は飼料用として買わせるというのだが、これでは実質的に変わらない。17年度はその減反分(主として飼料用米)として3150億円が支出されたが、「減反やめ」というなら、この分がゼロになっていなければおかしい。各県の話し合いとなれば、れっきとした独占禁止法違反だと認識せよ。
(平成29年12月27日付静岡新聞『論壇』より転載)