澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -280-
「両会」と中国東方航空乱交事件

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 毎年3月、中国では「両会」と呼ばれる全国人民代表大会(全人代)と政治協商会議が行われる。
 今年(2018年)は3月3日、政治協商会議(国政助言機関)が開幕し、13日間の日程を終え、16日に閉幕した。一方、全人代(本来は国家の最高機関。だが、実態は中国共産党決定事項の追認機関)は3月5日に開幕し、16日間の日程で20日に終了する。
 よく「歴史は繰り返す」と言われる。3月11日、憲法改正によって国家主席の任期10年という制限が無くなった。そこで、習近平主席の任期(2023年まで)がそれ以降も継続されるかも知れない。
 ネット上では、習主席が“皇帝”となったという事で、「袁世凱2世」(「袁二」)と揶揄されている。因みに「二」には、馬鹿、悪、横暴の意味を持つ。
 袁世凱が帝位に就いてから、約100年後、中国では習近平という殆ど何の実績も持たない人間が、再び“皇帝”になるとは誰も予想していなかったに違いない。
 1911年「辛亥革命」後、大清帝国が崩壊し、翌年、中華民国が建国された。その際、孫文が中華民国臨時大総統となっている。だが、まもなく袁世凱が中華民国初代大総統に就任した。
 1915年末、袁世凱は「中華帝国」を建国し、皇帝となった。しかし、袁は不人気だったため、翌年3月、帝制を取り消している。同年6月、袁は失意の中で死亡した。
 一方、習近平主席の盟友、王岐山は昨秋の「19大」では、年齢制限(「上七下八」。68歳で定年退職)のため、結局、最高幹部、政治局常務委員7人の1人として残留できなかった。しかし、3月17日、王岐山は国家副主席として“復活”している。事実上、8番目の政治局常務委員の誕生だった。
 そのため、王岐山はネット上で「王八」と呼ばれている。普通、この語彙はカメやスッポンの意味だが、「妻を寝取られた男」の意味もある。
 ところで、「両会」中に思わぬ事件が起きた。中国東方航空(及び子会社の上海航空)操縦士と客室乗務員6人(9人<男性4人女性5人>説もある)が、スペイン・マドリードのホテルで乱交している様子がネット上に流れたのである。
 カラオケルームに6人がほぼ全裸でいる。1人の女性が1人の男性の膝の上に対面して座っている。別の1人の男性は女性達の間に立って、丸裸で踊っている。また、ベッドの上で数人が乱交しているモノもある。何故か、同時に、一目で東方航空の客室乗務員だと分かるような写真も何枚か添えられていた。
 中国東方航空は中国の3大航空会社グループのうちの1つである(他は中国国際航空、中国南方航空)。他方、上海航空は、1985年、中国で初めて設立された中国民航系でない航空会社だった。だが、2010年に中国東方航空に買収され、完全に子会社化している。
 3月14日、中国東方航空は、これらのビデオは同航空とは無関係であると完全否定する声明を発表した。誰かが、東方航空のイメージを貶めるために行ったと指摘している。
 また、東方航空は風紀を正そうとする「両会」開催中に、このような卑猥なビデオがネットに流れるのは社会に悪い影響を与えると主張している。
 この事件を「両会」に対する一種のテロ事件と捉えている点が興味深い。無論、その可能性は捨て切れないだろう。
 あるネットユーザー(当局の回し者である「五毛党」か?)は、このビデオをフェイクだと指摘した(これはマドリードでのビデオではなく、タイの高級スパで娼婦とのモノであるという)。
 その理由として、第1に、客室乗務員の髪は短いかカーリーヘアである。ところが、ビデオに登場する女性達は皆、髪が長い。
 第2に、パイロットらの体型は、基本的にビデオの人間とは違う。従って彼らはパイロットではない。
 第3に、キャリーバッグなどの荷物はテレビの脇に置く必要はない。ホテルには、荷物置場のスペースが十分にあるからである。
 但し、これらの「分析」に対して、容易に反論ができるだろう。
 第1は、客室乗務員の中には、髪の長い人もいる。就業中は、髪をまとめているので、短く見えるだけである。
 第2は、パイロットが全て高身長で筋肉質であるはずもない。
 第3は、状況によって、人は必ずしもバッグ置場に置くとは限らない。
 このような子供騙し程度の「分析」がネットに上る自体、事の重大性が伺えよう。
 事実は不明である。だが、おそらく副操縦士の妻が、たまたま夫の携帯にあるビデオ映像を発見した。そこで、妻は夫や客室乗務員らへの報復(リベンジポルノ)のため、ネットにアップしたのではないだろうか。このように真実は意外と単純かも知れない。