澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -291-
中興通訊事件と中国共産党の“内ゲバ”

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 今年(2018年)4月16日、米商務省は、国有企業系の中興通訊(ZTE)が通信機器を経済制裁対象となっているイランと北朝鮮へ違法に輸出したとして、今後7年間、同社に対し、チップ等の部品調達を禁止すると発表した。
 昨2017年、中興通訊は、既にイラン・北朝鮮へ米製品・技術を輸出した事を認め、米当局に総額8億9200万ドル(約972億2800万円)を支払うことで和解している(更に、同社に違反があった場合、3億米ドル<約327億円>の追徴金を支払う合意ができていた)。
 ところが、同社は、幹部社員4人を解雇したが、米当局と約束していた他の35人の懲戒処分を行っていなかった。そのため、ついに米当局は、中興へ厳しい制裁を課したのである(米国の対中興通訊への制裁は2018年4月15日から開始され、2025年3月13日までとなる)。
 先月(4月)20日、中興通訊の殷一民会長は、自身のツイッターで、自社には13億の中国人の支持があるのに、自分が罪を認めた事は恥だったと開き直った。ただ、中興通訊は米国企業との取引を禁じられたので、生産に支障をきたし、このままでは破産しかねないのではないか。
 更に米商務省は、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ。民間企業)も中興と同じように違法行為が認められるとして、中興通訊と同様の措置を取ると公言した。
 最近、米連邦議会米中経済・安全審査委員会(USCC)は『米情報通信技術(ICT)サプライ・チェーン・リスク・レポート』を発表した。その中には、中興通訊・華為技術をはじめ、北京華勝天成、京東方科技集団、中国電子科技集団公司、浪潮集団(Inspur)、聯想集団(Lenovo Corporation)等の問題視されている会社の名が挙げられている(19の会社の大半が国有持株会社、リーディング・カンパニー、国防関係会社)。
 米国の措置に対し、同月21日、北京政府は早速、トランプ政権に対し「極めて不公正で受け入れられない」と声明を発表した。
 見方によっては、この事件は米中貿易戦争の一環と考えられよう。
 中国経済がなかなか浮上しない現在、ワシントンは中国共産党に経済戦争を仕掛けているのではないだろうか。トランプ政権が、本気で北京政府を潰しにかかっている証左かもしれない。
 さて、中国国内の反応は、どうだったのだろうか。
 所謂“五毛党”(ネットで中国政府に有利な書き込みをするアルバイト青年。1件につき政府から5毛=0.5元=約8.5円受け取る)の代表に、周小平という人間がいる。
 周小平(俗に「周帯魚」=周タチウオと呼ばれる)は、元々ネット作家だった。現在、ネット評論家と活躍している。だが、周小平(四川省自貢市出身)はいつも中国共産党を弁護しているので、ネット上では花千芳(遼寧省撫順市清原満族自治県出身)と並んで“大五毛党”と揶揄されている。
 中興通訊事件に関して、周小平は、4月18日、ネットで、米国による中国企業へ部品調達禁止は、中国がチップ等の重要製品を自主研究開発するチャンスであり、「春が到来した」と主張したのである。
 しかし、翌日『人民日報』は周小平の議論に対し、“盲目的楽観論”だと反駁した。それに対し、同月22日、周小平は『人民日報』編集者の実名を挙げ、中興通訊問題で謝罪を要求している。だが、周小平の文章はネットから削除されたのである。
 そこで、周小平は、微信(中国版ツイッター)で、『人民日報』編集者に今回の件に関する公開書簡を送った。ところが『人民日報』側は、砂糖と醤油を使ったタチウオ料理方法の写真をいくつも掲げ、周小平を徹底して皮肉った。
 今度は、周小平が以前「大躍進」時、『人民日報』が大幅に数値を水増しした事実を挙げて、反撃したのである。
 この一件は、中国共産党の“内ゲバ”とも言えよう。
 昨2017年11月、「ネット皇帝」と呼ばれた魯煒(党中央宣伝部副部長、中央インターネット安全・情報化委員会弁公室主任)が重大な党紀違反を犯し、失脚した。
 そのためか、周小平には魯煒という“後ろ盾”がなくなり、今年3月、周は四川省ネット作家協会主席を辞任している。
 因みに、昨年、周小平は王芳という人気歌手と結婚した。ただ、米国へ逃亡している大富豪、郭文貴は、かつて王芳は孟建柱(前中央政法委員会書記)の愛人だったと暴露した。真偽のほどは不明である。