「国家公務員総合職試験合格者―女性過去最高」
―権力志向の男性減、女性官僚の進出で「岩盤規制」を崩せるか―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 6月29日、人事院は国家公務員総合職試験の合格者数が1797人(前年度1878人)だったと発表した。いわゆるキャリア官僚だが、合格者のうち女性は27.2%(488人)で過去最高の割合となった。合格者を出身大学別に見ると、東大329人、京大151人、早大111人、東北大と慶大は各82人。東大出身の合格者は前年より43人減ったという。倍率は10.9 倍(同11倍)だったという。
 モリカケ問題などを横目に見ながらよく受けたなという感想をもつが、女子が毎年ふえていることに、かすかな喜びを感じる。選挙で落ちるわけではなく、昔はこの官僚がどんな過ちを犯そうが、終身日本の政治を司り、政治家は責任を取らされてしばしば落選したのである。
 明治6年に日本の太政官制度が復活された時には6省だった。6省によって西欧各国が備えた国家の形とほぼ同じ政治制度を構えた。何しろ資本主義体制を根っこから官制によって作ろうという発想に驚く。八幡製鉄所という鉄鋼会社をまず官営が創設し、巨大になったところで民営化する。これが化学、薬品、冶金などあらゆる産業に及んだのだ。事前に伊東博文らのちの首相が数年かけて西欧の産業状態を視察した。
 フランスなどは貴族の経営した国家が消滅したのだから、革命直後には官僚制度がなかった。行政を執行するために革命政府が官吏を雇ったのだが、官僚機構は極小だった。後発国の日本の方が官僚機構は大きかった。アメリカなどは何でも民間が行ったから、保安官まで民間から雇った。
 臨時行政調査会(会長・土光敏夫氏)に出向して、国鉄の分割・民営化の作業に携わったが、官営の国鉄に2000社のファミリー企業がぶら下がり「民営化、断固反対」というのだから、明治の精神とかけ離れていること夥しい。 
 日本の官僚制度は6省から20省へと行政の範囲を拡大しているうちに、規制をするのが良いことだと、価値観が転換してしまったらしい。このため政治を動かしたい若者は官僚を志望した。東大法学部を卒業して財務省(旧大蔵省)を目指すのが普通の秀才だった。
 「官僚政治」という言葉があったが、文字通り政治は官僚がやるものだった。その証拠に今でも法律の95%程は行政官庁が提出したものである。国鉄改革を契機に官僚の人事を政治主導で動かせるようにしようとの動きが強すぎる。現在、内閣官房に置かれている「内閣人事局」は幹部600人の人事に目を配る組織である。最近は官僚が最強ではない風潮が広まって、東大法学部卒が財務省を狙わなくなった。ごりごりの権力志向の男が減って、女性が官僚に進出した。同時に「岩盤規制」と呼ばれる業務と官僚の癒着が消えることが望ましい。獣医の定員が52年間も動かなかったのを知ると、官僚機構はまだ強すぎる。
(平成30年7月4日付静岡新聞『論壇』より転載)