SNSで多くの情報を持つ若者世代の特徴

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

今年6月24日、英国でEU残留・離脱を問う国民投票が実施された。周知のように、英国民はEU離脱を選択し、世界に衝撃が走った。英国の若者の多くは残留に票を投じた。だが、中高年は離脱に投票している。
 近年、英国の国民投票以外、似たような傾向が出た事例がある。主なケースとして、1つ目は、2014年9月に行われたスコットランドの英国からの独立を問う住民投票、2つ目は、2015年5月に行われた橋下徹大阪市長(当時)による大阪都構想に関する住民投票、3つ目は、今年1月に行われた台湾総統選挙、そして、4つ目が、この度の英国での国民投票である。
 これら3つの住民投票・国民投票と1つの選挙から、何らかの“仮説”を導けないだろうか。確かに、前者と後者は性質が違う。また、各国・地域の歴史・民族性も異なる。けれども、若者の投票行動と中高年のそれは似ているのではないか。
 それらを実施された順に、(1)中高年によって否決されたスコットランド独立、(2)中高年によって僅差で否決された大阪都構想、(3)若者の圧倒的支持を受け勝利した民進党、(4)中高年によって決まった英国のEU離脱、と番号をふってみよう。
 若者サイドからすれば、(3)では圧勝した。20代に限ると、約8割が民進党へ票を投じたのである。若者の現状維持(「中台統一」を拒否し、可能ならば「台湾独立」)を目指す「台湾ナショナリズム」が強かったと言えよう。
 だが、一方では、若者達は、(1)・(2)・(4)で負けている。きわめて大雑把に言えば、(1)と(2)では、若者は変化を、中高年は現状維持を求めた。(4)では、若者は現状維持を、中高年は変化を求めている。
 一見、何の共通点も見当たらない。あえて言えば、住民投票・国民投票では、「シルバー民主主義」が勝利している。
 しかし、次のように解釈できないだろうか。現代の若者達は、国境を越えて、やや保守的な「リアリスト」である、と。
 しばしば若者はあまり物事を深く考えていないと思われている。確かに、若者は中高年に比べ、人生経験が浅い。しかし、彼らは中高年以上に、自分達の将来を真剣に考えているのではないか。
 一方、意外にも、中高年は若者に比べ、旧メディアに影響を受けやすい傾向にある。
 例えば、大阪の中高年も、旧メディア(テレビ・ラジオ・新聞等)に踊らされ、橋下氏の都構想にノーを突きつけた。また、台湾の多くの中高年は、長い間、国民党に“洗脳”されてきた。英国の中高年も離脱派のリーダーら(ボリス・ジョンソン前ロンドン市長や「イギリス独立党」のナイジェル・ファラージ党首)に
 “騙されて”投票している。
 なぜ、このような事態が起きるのか。
 多くの中高年は、旧メディアに影響されやすい。彼らは新メディア(Facebook・Twitter・Instagram等)から得る情報が少ないからである。すでに、加工された(偏向した)旧メディアの情報に頼る傾向がある。中高年は幼い頃から、旧メディア、特に新聞を重視するよう教育を受けてきたからかも知れない。
 他方、旧メディアに属するジャーナリストは、自分達こそ、客観的で中立的立場から報道していると自負している。ところが、旧メディアは「権力への監視」に重点を置くためか、自らがいつの間にか“左傾化”している事にほとんど気付いていない。
 同時に、旧メディアは、「右翼」・「左翼」とレッテル貼りが好きである。権力側に寄れば民族派的「右翼」、反権力ならばリベラルな「左翼」となる。だが、「右翼」・「左翼」などのタームは、社会主義・共産主義勢力が衰える中で、曖昧になりつつあり、今ではあまり意味をなさない。
 反対に、若者は、たくさんの“生の情報”を持ち、いろいろ考えている。無論、彼らも旧メディアから情報を得てはいるが、新メディアからの情報が圧倒的に多い。したがって、旧メディアに染まりにくいのである。
 ただ、現代の若者は、昔と違って、個人の情報を発信しやすい。そのためか、“目立ちたがり屋”が多数出現した。FacebookやInstagramを利用し、自撮りで自らを晒すケースが増加している。
 また、Twitterや2ちゃんねる等では、一部では、匿名をよいことに、心ない非難をする人間も登場している。


澁谷 司(しぶや つかさ) 1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004~05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011~2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。 専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)等多数。