澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -331-
台湾統一地方選挙と同時に行われる公民投票

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 今年(2018年)11月24日(土)、台湾では統一地方選挙が行われる。同時に、公民投票(今回は国民投票のみ)が実施される。
 実は、昨2017年12月の「公民投票法」改正で、大幅に発議・立案・成立要件が緩和された。そして、公民投票年齢が18歳に引き下げられている(但し、総統選挙等、普通選挙権での20歳の年齢制限はそのまま変わらず)。
 これまで、国民投票の発議条件は(直近の総統選)「選挙人数の1000分の1.5%」、成立条件は「有権者過半数の投票総数」が必要で、かつ「賛成が有効投票の過半数」と規定されていた。極めて条件が厳しかったのである。
 ところが、改正後は、国民投票の発議条件は「同選挙人数の1万分の1」、立案条件は「同1.5%の署名」、可決条件は「賛成票数が反対票を上回る」と「有権者数の4分の1以上」となる。
 かつて2004年3月、総統選挙時に、(第1案)「国防強化」と(第2案)「中国との対等交渉」に関する国民投票が行われた。
 また、2008年1月、立法委員選挙の際、民進党の(第3案)「国民党の不正資産追及案」と国民党の(第4案)「反腐敗案」に関する国民投票が実施されている。
 同年3月の総統選時にも、(第5案)「台湾名義での国連加盟」及び(第6案)「中華民国名義での国連復帰」を問う国民投票が行われた。
 しかし、以上、合計6項目は、全て投票率が50%に満たず、成立しなかった。
 さて、台北駐日経済文化代表処の「Taiwan Today」(2018年10月26日)によれば、今回の国民投票では以下の10項目が民意に委ねられる。
 (1)「毎年平均少なくとも1%引き下げ」という方法で火力発電所の発電量を徐々に引き下げる方法に同意するか否か。
 (2)「あらゆる火力発電所或いは発電機(深澳火力発電所の建設含む)の新たな建設、拡充工事を停止する」というエネルギー政策の策定に同意するか否か。
 (3)日本の福島県をはじめとする東日本大震災の放射能汚染地域、つまり福島県及びその周辺4県(茨城県、栃木県、群馬県、千葉県)からの農産品や食品の輸入禁止を続けることに同意するか否か。
 (4)民法が規定する婚姻要件が一男一女の結合に限定されるべきであることに同意するか否か。
 (5)義務教育の段階(中学及び小学校)で、教育部及び各レベルの学校が児童・生徒に対して「性別平等教育法(=ジェンダー平等教育法)施行細則が定めるLGBT教育を実施すべきではないことに同意するか否か。
 (6)民法の婚姻に関する規定以外の方法で、同性カップルが永続的共同生活を営む権利を保障することに同意するか否か。
 (7)台湾(Taiwan)の名称で、あらゆる国際競技大会や2020年東京五輪に出場参加することに同意するか否か。
 (8)民法の婚姻章が同性カップルによる婚姻関係を保障することに同意するか否か。
 (9)「性別平等教育法」が義務教育の各段階でジェンダーの平等に関する教育を実施するよう明記し、且つその内容が感情教育、性教育、LGBT教育などに関する課程を盛り込むべきだとすることに同意するか否か。
 (10)「電業法(日本の「電気事業法」に相当)」の第95条第1項「台湾にある原子力発電所は2025年までに全ての運転を停止しなければならない」の条文を削除することに同意するか否か。
 これらは、大きく分けて、「(原発を含む)発電関連問題」・「ジェンダー問題」・「台湾(Taiwan)という名称問題」に集約できる。
 まず、「発電関連問題」に関しては台湾人自身が決める事であり、原則、日本人には関係ない。しかし、台湾が、東日本大震災の原発事故被災地、福島県とその周辺地域から農産品や食品の輸入禁止を続けるか否かは、日本にも影響がある。我々としても無関心ではいられないだろう。
 次に、「ジャンダー問題」については、アジアで最も“先進的”と言われる台湾なので、その投票結果が注目される。
 そして、「台湾(Taiwan)という名称」だが、中華民国(the Republic of China)から台湾への名称変更は、必ずや国際問題となるに違いない。
 もし、国民投票で採用が可決された場合、習近平政権がそれを認めるはずがないだろう。他方、米トランプ政権は台湾がスポーツでの国際競技会でのみ、台湾(Taiwan)という名称を認める可能性も捨て切れない。その際、中国は全ての国際競技会をボイコットするのだろうか。
 2020年五輪を控えている我が国は、この問題にどのように対処するのか。難しい対応が迫られるだろう。