澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -332-
米中間選挙後の米中関係と「上海輸入博」

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 今年(2018年)11月6日(火)、米国では中間選挙が行われた。大方の予想通り、3分の1改選の上院では、政権与党の共和党が過半数を占めた。他方、2年毎、全議席改選となる下院では、民主党が過半数の議席を獲得した。
 そのため、上下院で「ねじれ現象」が生じている。ただ、周知のように、我が国と違って、米国では、たとえ野党議員でも、与党に賛成する人が少なくない。だから、米国では議会に「ねじれ現象」が起きても、日本ほど、与党の政権運営が困難とは言い切れない。
 よく米中間選挙は、現大統領への信任投票、あるいは不信任投票だと言われる。今回の中間選挙は、有権者がトランプ大統領を信任したのか。それとも、不信任だったのか。その評価は微妙である。
 共和党は下院では過半数を失ったが、上院では何とか過半数を確保した。また、同時に行われた州知事選(改選36議席、非改選14議席)でも、同党は過半数を維持している(現時点では、ジョージア州で知事がまだ決まっていない。決戦投票もあり得るという)。
 特に、2年後の大統領選を占う意味でも重要州として位置けられていたフロリダ、オハイオ両州(「スウング・ステート」swing state)では、共和党が勝利している。
 結局、今般の米中間選挙は、共和党と民主党が痛み分けに終わったと評価すべきかもしれない。
 ちなみに、米国滞在の中国研究者、何清漣は、今度の選挙での民主党躍進は「無知少女」によると指摘した。これは、漢字の言葉遊びで、(1)無産階層、(2)知識人(マスメディアを含む)、(3)少数派―人種的マイノリティ、青少年、性的マイノリティ―(4)女性の頭文字を組み合わせた表現である。
 確かに、民主党支持者の中には「無知少女」が多数占めていたと推測できる。
 さて、中間選挙後、米下院が優勢になった結果、トランプ政権の対中政策に変化が生じるのだろうか。その点、我々は懐疑的である。なぜか。
 『自由亜洲(ラジオ・フリー・アジア)』「米中間選挙の結果は、米国の対中政策に影響もたらすのか」(2018年11月8日付)は、次のように指摘している。
 民主党が下院で多数の議席を獲得しても、米国の対中政策に、あまり大きな影響を及ぼさない。なぜなら、共和党も民主党も、超党派で、中国に対決姿勢を取っているからである。
 例えば、民主党の有力議員(Adam Schiff)も、米国の知的財産権を侵害した中興通訊(ZTE)や華為(ファーウェイ)を快く思っていない。ひょっとすると、トランプ政権と米議会はこの2社に対し、協力して強硬措置を採る公算もある。
 ただ、米中貿易摩擦問題に関しては、民主党内で意見が分かれている。一部の議員は、自由貿易を主張している。だが、別の一部議員は、トランプ政権が中国製品に制裁関税をかけるのを支持している。
 また、共和党も民主党も、中国が世界中、経済と軍事の両面から多数の国を抑圧し、貿易協定を遵守しない手法に憤りを感じているという。
 同様に、両党は、習近平政権が国内の敵対勢力、人権派弁護士、少数民族(特に、ウイグル族)に対し、IT・AIを使って監視・弾圧している事に怒っているという。
 以上の理由から、米中間選挙の結果、トランプ政権が対中政策を変更する事は考えられないのではないか。
 ところで、以前から我々が強調しているように、目下「米中貿易戦争」で中国側は崖っぷちに立たされている。トランプ政権の対中制裁課税が効いているのである。
 そこで、習近平政権は、米中間選挙前後に当たる11月5日(~10日)、「第1回中国国際輸入博覧会」(「上海輸入万博」)を開催した。
 主な参加者として、ロシアのメドベージェフ首相が出席した。けれども、G7の首脳は、この輸入博に誰一人として参加していない。
 北京は、今頃になって、今後15年間で物品30兆米ドル、サービス10兆米ドル、合計40兆米ドル(約4500兆円)を輸入すると表明した(1年間で、約300兆円)。ただし、中国共和党は、相変わらず「大風呂敷」を広げている感がある。
 今年5月中旬、劉鶴副首相が訪米した後、なぜ北京は、さっさと市場開放をしなかったのか。おそらく習近平主席ただ一人が、「面子」にこだわったからだろう。習主席は、ようやく事態の深刻さを認識したのか。
 一方、11月9日現在、中国国内では14省1自治区2直轄市(天津市と重慶市)で「アフリカ豚コレラ」53症例が発生している。北京はこの蔓延をくい止める事ができそうにもない。
 「米中貿易戦争」と「アフリカ豚コレラ」のダブルパンチで、習近平政権はノックアウト寸前である。