澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -337-
2018年台湾統一地方選挙結果分析

.

政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 2018年11月24日(土)、台湾では統一地方選挙と「公民投票」が実施された。既報の通り、選挙結果は、与党・民進党の惨敗だった。
 特に、次期総統選挙を占う意味でも重要な6直轄市で、民進党はたった2勝しかできなかったのである。
 前回(2014年)の統一地方選挙では、民進党は22県市中、13県市で大勝した(ちなみに、民進党は福建省の2県には候補者を立てていない)。これが、2016年の総統選で、蔡英文候補を当選へと導いたのは間違いないだろう。
 まず、6直轄市の結果を一瞥しておこう。
 第1に、台北市では、無所属(「親中派」へ転向)の柯文哲現市長(58万820票)が国民党の丁守中候補(57万7566票)を何とか振り切って、当選を果たした。民進党の姚文智候補(24万4641票)は、柯・丁に大きく水をあけられている。
 第2に、新北市では、国民党の侯友宜候補(114万1566票)が予想通り、民進党の蘇貞昌候補(85万7557票)を破った。
 第3に、桃園市では、民進党の鄭文燦現市長(49万6981票)が、安定した戦いで、国民党の陳学聖(36万3086票)を下している。
 第4に、台中市では、国民党の盧秀燕候補(82万4143票)が民進党の林佳龍現市長(61万7064票)に20万票以上の大差つけ、圧勝したのである。
 第5に、台南市では、民進党の黃偉哲候補(36万3452票)が国民党の高思博候補(30万9908票)に勝利した。だが、ここは民進党の地盤である。本来ならば“楽勝”のはずなのに、黄は高に追い込まれている。
 第6に、高雄市では、落下傘候補である国民党の韓国瑜(87万1743票)が民進党の陳其邁候補(72万6463票)を14万票以上の差をつけて勝利した。
 結局、6直轄市で、民進党が2勝、国民党が3勝という結果に終わった。これを見ると、2020年の総統選では、蔡英文総統の再選、あるいは頼清徳候補の当選はかなり厳しいと言わざるを得ないだろう。
 民進党は、他の県市でも4勝(基隆市・新竹市・嘉義県・屏東県)しかできなかったのである。あとは、(福建省の2県を除き)すべて国民党に敗北した。全体では、前回比で、7県市を失っている。
 民進党の主な敗因を挙げてみよう。
 第1に、政権発足当初、外省人2世の林全を行政院長に指名した。だが、その能力に欠けていた。その後、頼清徳を行政院長に代えても、蔡英文政権の人気を回復できなかったのである。
 第2に、「休日問題」で一時、社会が騒然とした。また、「年金改革」では、(かつて優遇されていた)公務員・教師・軍人から恨みを買っている。
 第3に、「新南向」政策が機能せず、依然、経済があまり良くない(ただ、中国が不景気なので、仕方ない面もある)。
 第4に、同性婚問題を全面に押し出し過ぎた。「公民投票」で同問題に深入りし、台湾基督長老教会(プロテスタントの「福音派」)を怒らせ、その支持を失っている。
 第5に、「独立志向」の強い「深いグリーン」が、蔡政権に対し新国家建設へ向かわない現状に苛立ちを募らせていた。
 第6に、蔡政権は日本の原発事故周辺県からの食品輸入解禁を焦った。
 第7に、今年(2018年)2月、習近平政権が打ち出した「恵台31条」に、民進党政権は上手く応える事ができず、対中改善に失敗した。
 第8に、蔡英文総統が就任以来、国交断絶国が5ヶ国増え、台湾の「国際生存空間」が狭まった。選挙結果を見る限り、民進党政権は外交をカネで買う選択肢があったかもしれない。
 乱暴な言い方かもしれないが、台湾の選挙は、国民党が勝とうが、民進党が勝とうが、所詮「コップの中の嵐」に過ぎない。いわば、米国の掌の上で行われている“カーニバル”である。これが台湾政治の実態ではないか。
 ところで、今回、台湾史上、初めて「公民投票」の議題が通過した。かつて、3度「公民投票」が行われているが、すべて否決されている。通過基準が厳し過ぎたためである(有権者の2分の1以上が投票し、かつ、その過半数の賛成票が必要だった)。
 昨2017年12月、「公民投票法」が可決され、有権者の4分の1以上(約470万人)の投票数で、かつ、賛成票が反対票を上回れば、議題が通過するようになった。
 そして、今度、10議題中、7案が賛成された。これらは、大きく分けて、「(原発を含む)発電関連問題」・「同性婚関連問題」・「スポーツ大会での台湾(Taiwan)という名称変更問題」に集約できる。
 我々日本人の関心事としては、東日本大震災での原発事故被災地周辺県から農産品等の禁輸が継続された点だろう。
 また、「台湾(Taiwan)という名称」して、選手が国際スポーツ大会へ出場するというテーマは「否決」された。これには、我が国の2020年東京五輪関係者は胸を撫でおろしたに違いない。