「ファーウェイ幹部の拘束で曝け出されたスパイ・ウェアの存在」
―中国の軍事技術、米国と瓜二つ―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 中国の大手通信機器ファーウェイ(中国名:華為技術)の設立者で会社の副会長をしている娘が、米国の依頼でカナダ政府に拘束された。拘束されている理由は、同社がイランの金融に便宜を与えたというものだが、トランプ大統領には全く別の思惑があるのではないか。
 ファーウェイは中国を代表する通信機器会社で、創業30年、170ヵ国で事業を展開し、売上高は9兆円に上り、従業員は19万人に達する。毎年、採用する従業員約1万人のうち、600人が博士号を持つ。中国の軍事技術が日進月歩を遂げ、しかもそれが米国製と瓜二つであること。この事実を挙げてファーウェイが仕掛けているというウワサは絶えなかった。
 日本政府はこれまで非公式に「中国製ハードウェアから余計なものが出てきた(スパイ・チップ又はスパイ・ウェアと呼ばれる)」という情報を漏らし、暗に中国製を使用しない要望を打ち出してきた。公に「使用禁止」を表明すると、中国に立地した日本の会社に影響が及びかねない。
 トランプ氏の中国認識は、中国は防衛において知的財産を盗み放題盗んで大儲けし、そのカネで軍事技術を向上させた。技術向上の目標年は2025年で「中国製造2025」と公然化された。軍事レベルで一級になるのは建国100年に当たる「2049年」で、目標貫徹のために習近平主席の任期を無期限にした。このトランプ氏の認識は正しいだろう。しかしウサギがフカを騙しそこなった童話のように、中国はあまりにも早く本心を曝け出してしまった。
 トランプ氏は中国が儲け過ぎている商品を全部暴き出し、関税攻勢をかけた。これまでに盗んだ知的財産に見合う額を罰金として請求している。中国が儲けたタネとして周辺国にまき散らした一帯一路は既に破綻した。中国のものになった港もあるが、儲け放題の状況は修正されつつある。
 トランプ氏はこれまでの緩んだ国際秩序を全部ぶち壊して「アメリカファースト」にやり替えようとしている。その中には他国に迷惑なものも多いが、中国の軍事部門に打撃を与える手段は有難い。これまで日本政府は企業に対して、通信機器を調達する場合、情報漏洩に気を遣えと“暗に”要請してきた。が、今後ファーウェイ(その他ZTEという小企業も対象)を使用した製品は「調達しない」という方針が表明されるはずだ。
 総務省は既に次世代通信規格「5G」の電波を割り当てる条件を作成している。
 米政府は次世代の通信規格5Gにはファーウェイの製品を使わないよう米・英・豪・加・ニュージーランドに既に通達した。この5ヵ国は「ファイブ・アイズ」と呼ばれ、電波、通信傍受のネットワークを構築している。
 トランプ氏の中国叩きは即効の結果をもたらしている。金融状況も厳しくなっているし、“元”も国際通貨として流通していない。
(平成30年12月19日付静岡新聞『論壇』より転載)