澁谷 司の「チャイナ・ウォッチ」 -381-
香港と台湾での最新世論調査結果

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政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授 澁谷 司

 今年(2019年)6月24日、偶然、香港と台湾で同時に最新世論調査が公表された。興味深い結果なので、それらを紹介したい。
 まず、前者では、香港中文大学アジア・太平洋研究所が、6月17日~20日夜、18歳以上の香港市民732人にアンケートを行っている。
 その結果、香港政府に対し、60.4%の人が不満を持っていることが分かった。先月5月と比べ、不満に思う人が19.9ポイント増えた。香港政府に満足している人は、18.4%にとどまった(昨年同期には、30.1%の人が満足していた)。
 香港政府に対する不信感を持つ人は48.9%で、先月に比べて18.8ポイントも上昇している。香港政府を信頼している人は22.1%で、先月と比較して、2.8ポイント下落した。
 また、北京政府に対して不信感を抱いている人は54.7%で、前月比で13.6ポイントも上昇した。「普通・半々」と回答した人は24.2%だった。北京政府を信頼していると答えた人は17.4%である(前年同期比では21.9%だった)。
 林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官のパフォーマンスに対する評価は、37.5ポイントで、先月と比べ、10.6ポイントも落ちている。
 特に、30歳以下の(短大を含む)大卒男性は、ラム長官に対するパフォーマンス評価が最低だった。それに対し、51歳以上の小卒かそれ以下の学歴の女性は、ラム長官に高いパフォーマンス評価を与えている。
 次に、後者では、台湾民意基金が、山水民意研究公司に委託して行った世論調査を発表した。
 6月17~18日、全島20歳以上の成年にアンケートを行った。サンプル数は1092人、信頼度は95%、誤差は±2.97%である。
 香港の「反送中」(「逃亡犯条例」改正反対)デモ運動に関して、台湾人の48.2%は熱烈に支持し、22.6%がまあまあ支持している。両者を合わせると、70.8%にのぼる。
 同運動に対し、あまり支持しない台湾人は7.2%で、全く支持しない人が5.4%だった。不支持が合計12.6%にとどまっている。
 香港の「反送中」デモ運動支持者は、主に、92%の24歳以下の若者、87%の民進党支持者、86%の「台湾独立派」の有権者、84%の一般のサラリーマン、83%の大卒以上の学歴を持つ者、68%の「現状維持派」等である。
 この世論調査では、ほぼ半数の49.7%が、いわゆる「台湾独立」を支持している(ただ、以前から我々がたびたび主張しているように、実質的に「独立」している台湾が「独立」する事は、論理的にあり得ない)。
 また、25.4%が両岸の「現状維持」を支持している。この「現状維持派」は、“消極的”「台湾独立派」で、基本的に「台湾独立派」と同じスタンスと考えられる。また、13.6%が「中台統一」を支持している。
 更に、与党・民進党、蘇貞昌内閣のパフォーマンスについて、52%の有権者が満足している。他方、38%の有権者は蘇内閣に不満を持つ。
 ところで、やはり6月24日、台湾のTVBSが来年1月の次期総統選挙に関する世論調査を公表した。「もし、明日投票するとすれば、どの候補者に票を投じますか?」という質問である。
 民進党は、蔡英文総統が、次期総統候補に確定している。他方、柯文哲台北市長が無所属で出馬すると仮定しよう。その2人と国民党有力候補3人の支持率を比べてみたい。
 (1) 韓国瑜の場合、蔡英文が37%、韓国瑜が29%、柯文哲が20%。
 (2) 郭台銘の場合、蔡英文が35%、郭台銘が24%、柯文哲が21%。
 (3) 朱立倫の場合、蔡英文が36%、朱立倫が21%、柯文哲が23%。
 現時点では、蔡総統の再選が濃厚である(但し、万が一、国民党が柯文哲を候補者として担ぐと、結果が違ってくるかもしれない)。なぜ、人気のなかった蔡総統が、急に支持率を回復したのか。まさに、香港の「反送中」デモ運動のお陰である。
 現在でもなお、中国共産党は、香港立法会で「逃亡犯条例」改正を目指している。その中国共産党と緊密な関係にある国民党候補や柯文哲は、台湾有権者から疎まれるに違いない。
 また、今年1月、習近平中国国家主席が台湾に対し「一国両制(1国家、2制度)台湾方案」を提起した。しかし、香港では、言論の自由等が失われつつあり、「一国両制」自体が危うくなっている。
 この現状を見て、台湾人は習近平政権の「一国両制」提案を受け入れるはずもない。そして、目下、台湾有権者は、蔡英文総統でまとまろうとしている。それが、蔡総統の支持率を押し上げている最大の要因ではないだろうか。