時代は今や埼玉!

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 埼玉県と言えば“ダサイタマ”と馬鹿にされ、昨年の都道府県魅力度ランキングでも43位、一昨年に比べて1つ上がったが、栃木県と入れ替わっただけだ。その下には佐賀、徳島、茨城があるだけだ。埼玉県川越市に住んでいる私は、この現状に何度涙したことか。
 だがどっこい、この現状が今や大きく変わりつつある。今年の関東での住みたい街ランキングの4位に大宮、8位に浦和が入ったのだ。二子玉川、自由が丘、表参道などよりはるかに上位で相手にならないくらいだ。
 それだけではない。帝国データバンク大宮支店の本社転出入調査によると、過去10年間で転入超過数が全国最多だったのが埼玉県なのである。その数861社である。有能な経営者は、埼玉の良さを分かっているのだ。それに比べて転出が最も多かったのが東京都である。その数1650社だ。今や“気の毒に”と東京に同情し、余裕をかましているのが埼玉なのだ。
 圏央道、関越自動車道と高速道路網が整備され、上越、東北、北陸の各新幹線が通り、東北や北陸の結節点になっているのが大宮である。新横浜など、東海道新幹線しか通らない。千葉などそもそも新幹線が通ってもいない。おっと、悪口はいけない。これは取り消し!神奈川も千葉も素晴らしいところだ。
 今月16日には、北欧童話「ムーミン」を題材にしたテーマパーク「ムーミンバレーパーク」(飯能市)が開業する。年間100万人の来場が見込まれている。こんな楽しいテーマパーク、絶対に行かなければと楽しみにしている。因みにトトロの森も埼玉県の狭山丘陵にある。
 埼玉県は、全国一快晴の日が多いのだ。都道府県格付研究所によれば、全国平均が28日なのに対して、埼玉は倍以上の64日なのだ。だから埼玉の人は、澄み切った心を自然に身に付けるのだ。台風が関東地方に上陸しても、殆んど埼玉は影響を受けない。自然災害も実に少ない。埼玉出身者によると、全国で最も坂が少ないのも埼玉だそうだ。
 そして二階堂ふみ、GACKTのW主演で今大ヒット中の映画『翔んで埼玉』だ。埼玉を馬鹿にしまくる映画である。
 あらすじは次のようなものだ。埼玉県民は東京都民からひどい迫害を受け、身を潜めて暮らしていた。東京に行くには、入手困難な通行手形が必要で、それで何とか東京に入っても“埼玉狩り”という危険が待っている。「三越に行きたい」と言うと、「生意気言うな!三越は東京都民が行くところだ!埼玉県民は星友(せいゆう)に行け!」と怒鳴られる。子供が腹痛を起こして医務室に行っても、「そこらへんの草でも食わせておけ!埼玉県民ならそれで治る」など、無茶苦茶な言葉が飛び交う映画である。原作は漫画で、当時、所沢に住んでいた漫画家・魔夜峰央の作品だ。
 この埼玉を徹底的にディスった映画が、大ヒットしているのだ。中でも埼玉で。魔夜によれば、他の県だと文句が殺到する。埼玉だから文句一つ来ないと言う。どうだ!この大らかさ。