共産党の党勢拡大運動の悲惨な現状

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 日本共産党が、6月11日、第4回中央委員会総会を開いた。共産党では、これを略して4中総(よんちゅうそう)と呼んでいる。200人を超える中央委員、准中央委員が招集される会議である。
 志位委員長によると、この会議は緊急に招集したそうである。会議の主題は、「いかにして党勢拡大を前進させるか」の一点に絞ったものであった。この会議で、小池書記局長が党員は10ヵ月連続後退、「しんぶん赤旗」の日刊紙は5ヵ月連続、日曜版(週刊紙で共産党の政治資金収入を支える柱となっている)は8ヵ月連続でいずれも後退していると報告している。
 この後退を食い止め、前進に転ずるために6月11日から9月末まで「党勢拡大特別月間」に取り組むというのが会議の目的であった。「月間」とか「大運動」というのは、共産党が党勢拡大に集中的に取り組む時にやる手法で、ベテラン党員なら、「またかよ。上手くいくわけがないだろう」と聞いただけでも見切ってしまう、手垢にまみれたものである。
 実際、志位氏自身がこの会議で次のように述べている。
 「1958年の第7回党大会以来、わが党は、党勢拡大に力を集中する『月間』や『大運動』に繰り返し取り組んできましたが、率直に言って、自ら決めた目標を達成したのは1970年代中頃までの運動であり、その後の『月間』や『大運動』では、奮闘はするが目標を達成できないという状況が続いてきました」
 40年以上に亘って、一回も成功したことがないのだ。私は10数年前まで共産党にいたのでよく知っている。ところが、志位氏や小池氏は、何故40年以上も「月間」「大運動」が成功してこなかったのか、失敗したのか、その原因についての分析を全くしていないのである。話を病気に例えてみよう。何故病気になったのか、その原因も究明せず、適切な治療法が見つかるわけがない。「病は気からだ。ともかく頑張れ」と言っているのに等しいのが、今回の共産党の「党勢拡大特別月間」なのである。
 理由はいくつもある。
 半世紀前には、党員の中心は20代、30代だった。今はその党員たちが齢を重ねただけなのである。「若者の党」が「高齢者の党」に変貌し、活力は著しく低下している。共産党が社会主義の展望を語れなくなって久しい。こんな党に若者が青春を託すわけがないのだ。
 共産党員と言えば、かつては革命的気概に燃え、困難に打ち勝って前進する勇猛果敢な人々と思われていた。だがそれは過去の話である。もう10年も、20年も前から、選挙の時に電話での投票依頼すら出来ない党員が増え、選挙のポスター貼りも、近所に知られるのは嫌だというので出来ないという党員が増えてきた。「しんぶん赤旗」の日刊紙すら読まない党員も増えている。
 こんな党員が党員を増やし、「しんぶん赤旗」を増やす活動に取り組めないことは自明のことだ。共産党には気の毒だが、今回も必ず失敗する。