Key Note Chat 坂町

第100回
「蔡英文政権の一年と今後の課題」

  長野禮子 

 台湾は2016年5月20日、それまで8年間、一貫して親中路線を進め、政権末期には1949年の中台分断後初の「両岸の指導者」同士として、中国の習近平主席と歴史的な首脳会談を実現した国民党・馬英九政権から、民進党・蔡英文政権に交代した。そしてそろそろ一年が経つ。
 日本は日台が共有する歴史的経緯や、地政学的安全保障の上からも最重要地域であり、謂わば「運命共同体」としての認識の下、72年の断交以降も深い交流が続いている。「一つの中国」を唱える中国と一線を画す蔡政権の誕生は、同時に我々日本国民にとって政治的にも心情的にも歓迎するものであった。
 しかし、親中路線を加速し続けた馬政権の政治的経済的残滓はそこかしこにあり、蔡総統の政権運営は決して容易ではないようだ。トランプ米大統領は就任直後、中国の習主席に先立ち蔡総統との電話会談を実現した。が、米国は「台湾は中国の一部ではないが、国際社会での主権国家としての立場は認めない」との位置付けである。また、「中華人民共和国」は“チャイナ”、「中華民国」は“チャイニーズ”と実に紛らわしく、中国と中華民国との線引きが出来ていない。2007年、当時の陳水扁総統は国連の潘基文国連事務総長(当時)に「台湾」名での国連加盟を求める親書を送ったが、「台湾は中国の一部」との理由でこれを受け入れなかった。1971年、国連は「台湾は中国の一部」であるとの決議はしていない。 
 一方、台湾政府も「中華民国」と「台湾」のどちらかという明確な立場を主張していない。台湾はこれまで一刻たりとも中国共産党の支配を受けたことはないのだが、これも謂わば「台湾の悲哀」の一面なのか。 
 国民党、民進党と政権交代しても中台関係は時には微妙に、時には激しい緊張関係を伴いながら現在に至る。しかし実態としては「台湾=事実上の国家」として生き続けていると許氏は語る。台湾人としてのアイデンティティを確立した今、未だ独立国家としての主権を有することが許されない現実は、実に哀しい。国際社会の理解を得るための具体的努力を、我々日本人が躊躇わずに堂々と進める時代はいつ来るのだろうか。
テーマ: 「蔡英文政権の一年と今後の課題」
講 師: 許 世楷 氏(JFSS特別顧問・元台北駐日經濟文化代表處代表)
日 時: 平成29年4月12日(水)14:00~17:00

第99回
「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な評価に関する提言」

  長野禮子 

 今春は彼岸を過ぎても行きつ戻りつの天気で、なかなか予報通りの開花とはならなかったが、ここにきて窓外もやっと薄桃色の景色を楽しめるようになった。満開の日も近い。
 3月末、自民党安全保障調査会は「敵基地攻撃能力」の保有に関する提言書をまとめ、政府に提言した。この「敵基地攻撃能力」(政府は自民党案を受け、「敵基地反撃能力」とした)の保有に関しては、これまで「憲法9条」「専守防衛」の原則に反しないとなっていたが、何も進展はなかった。
 このことは皮肉にも北朝鮮の核実験やミサイル発射等の挑発行為が特に最近頻度を増し、我が国のEEZに落下したこと等による航空機や船舶への脅威と、移動式発射台や潜水艦からの発射、固形燃料による弾道ミサイル発射やロフテッド軌道による発射等々の技術を持ちつつあるとみられる新たな段階の脅威に突入したとの認識の下、自民党がやっと重い腰を上げたということだろう。
 北朝鮮は、米中首脳による北朝鮮問題についての会談を前日に控えた今日(5日)もミサイルを飛ばし、日本海に着弾した。国内メディアやイデオロギーによる反発や抵抗があったにせよ、遅きに失した観は否めない。が、「新たな段階の脅威」を日米共有の認識として、北朝鮮の暴挙を挫き、国家国民の安全を確たるものとするための一歩となったことに期待したい。
 民進党の蓮舫代表のように、「平和国家の礎が、ガラガラと音を立てて崩れるように思えて非常に懸念している」などと呑気なことを言っている場合ではない。抑止力強化に伴う防衛予算の増額も、今や多くの国民の理解の範囲にあるのではないか。
テーマ: 「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な評価に関する提言」
講 師: 田村 重信 氏(JFSS政策提言委員・自由民主党政務調査会審議役)
日 時: 平成29年4月3日(月)13:00~14:00

第98回
「トランプ政権の東アジア安全保障政策」

  長野禮子 

 トランプ政権発足から2ヵ月が経過した。徐々に新政権の政策やトランプ氏の人物像が浮かび上がる中、世界は経済界出身の大統領がどういう国家運営をするのか、予測の難しい新たな時代の始まりを注視している。さしずめ日本にとっては、対中宥和政策をとり続けた前政権の政策転換を表明した新政権と、日米両首脳を始め外交・安全保障のトップとの価値観の共有が確認できたことは喜ばしいことである。が、同時に、中国・北朝鮮からの脅威に対する盤石な体制づくりが喫緊の課題となっている我が国の状況、南シナ海における中国の横暴な振る舞いを阻止し、「航行の自由」を守るための具体的戦略と行動を完遂するためには、周辺国との協調を促進させ、日米同盟の強化と深化が更に重要になるのは理の当然。 
 建前ではなく本音を前面に出すトランプ政権がスタートした今こそ、従来の同盟関係に甘んずることなく、我が国も「普通の国」になる好機と捉え、その果たすべき役割について国民世論と共に真剣に考え、行動する時が来たのではないか。そのためには、米国からの日本に対する厳しい要求にも応える努力を怠ってはならず、それが実行され成し得た時に、初めて同盟国としての「価値観の共有」が実を結んだと言えるのではないか。
 今回は、元米海兵隊大佐であり外交官も歴任したグラント F・ニューシャム氏に、トランプ政権の安全保障政策について幅広い視野でお話いただいた。
テーマ: 「トランプ政権の東アジア安全保障政策」
講 師: グラントF・ニューシャム 氏(JFSS上席研究員・元米海兵隊大佐)
日 時: 平成29年3月21日(火)14:00~16:00

第97回
「南西諸島防衛を強固にするために」

  長野禮子 

 トランプ氏が米国大統領に就任して1ヵ月半。政権幹部の人事は難航しているようだが、2月に来日したマティス国防長官、更に3月15日来日予定のティラーソン国務長官は我が国にとっても歓迎すべき人事だと言われている。
 トランプ大統領は2月末、国防予算の10%(約6兆900億円)増を予算案に取り込むと発表。実現すれば「歴史的な拡大」となるそうだが、日本はどうか。常態化している中国・北朝鮮の脅威に対する備えは十分と言えるのか。
 北が日本と韓国を攻撃すれば米国は100%応戦する。しかし、中国がもし南西諸島を攻撃してきても、日本はそれを防ぐための訓練すらしていないのが現状だ。早く米海兵隊並みの力をつけると共に、統合部隊をつくり、そこに米海兵隊司令部を置けば「中国への抑止」が機能する――と、今回のゲスト、アワー氏は言う。更に、米海軍と海上自衛隊の関係は良好だが、陸海空の統合運用は不十分だと指摘。「自分の国は自分で守る」姿勢を示さなければ、同盟国米国は出て来ない。 
 6日、北朝鮮は4発のミサイルを発射し、うち3発が日本のEEZ内に落下。また南西諸島における中国の脅威も続いている現状にありながら、国会では野党が責め立てる大阪の小学校の問題ばかりが喧しい。もっと冷静になって我が国の正面にある安全保障問題を真剣に議論してほしいものである。

テーマ: 「南西諸島防衛を強固にするために」
講 師: ジェームスE・アワー 氏(JFSS特別顧問・ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 平成29年3月7日(火)14:00~16:00

第96回
「トランプ政権に期待すること、懸念すること」

  長野禮子 

 トランプ大統領は就任した1月20日から1月末までに18の「大統領令」に署名し、60の公約のうち既に15に着手している。スピード感をもって政治をしている。日本人には馴染みのない「大統領令」だが、過去最高はF・ルーズベルトの3728、最近ではクリントンの364、ブッシュの291、オバマの276となっている。平均すれば739,5 というから、トランプ氏の大統領令もこれからどんどん出ることだろう。
 日本は米国の大統領が代わるたびに日米関係はどう変化するだろうかと心配し、ああでもない、こうでもないと専門家等々のコメントが報道されてきたが、2月3日来日したマティス国防長官は「尖閣諸島は日米同盟第5条の適応範囲に含まれ、それを損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と、中国を念頭にした共通認識を表明。北朝鮮の核・ミサイル問題、更に「核の傘」を含む拡大抑止にも言及し、従来の日米同盟の堅持と更なる深化に対する認識も確認された。
 ケビン・メア氏は、トランプ政権の安定までには時間がかかり、国内の混乱も暫く続くだろうが、2月10日、安定した政権運営をしている安倍首相とトランプ大統領との会談は双方の信頼関係構築に不可欠であり、外交・安全保障に加え経済面での問題も克服できるだろうと話す。
テーマ: 「トランプ政権に期待すること、懸念すること」
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成29年2月7日(火)14:00~16:00

第95回
「報道されない半島情勢」

  長野禮子 

 北朝鮮の金正恩総書記は2017年の「新年の辞」で自らの能力不足を国民に詫びるなど、かつての金日成や金正日には考えられなかった謙虚な態度を見せた。と同時に、大陸間弾道ミサイル(ICBM)が最終段階に入ったとし、核・ミサイルの高度化を誇示した。
 元商社の法務を担当していた本日の講師、宇田川氏が入手した情報によれば、金正恩は今、金正日が考案した「三権力鼎立」を使いきれていないため、国民がクーデターを起こす可能性も否定できない。故に、三権力(朝鮮労働党・人民解放軍・行政機構)が融合しながら国家運営をしている。金正恩は傀儡ではないか――との仮説を立てる。 
 一方、韓国の現状と今後の展望、そして韓国国民の考えていること――についても、氏ならではの情報とそれによる氏の分析は、報道では決して知り得ないこととして参加者の 興味を惹いた。

テーマ: 「報道されない半島情勢」
講 師: 宇田川 敬介 氏(作家・ジャーナリスト)
日 時: 平成29年1月24日(火)14:00~16:00

第94回
「Global Trend・トランプ政権の安全保障政策・日米同盟への影響」

  長野禮子 

 11月8日の米大統領選挙でのトランプ氏の勝利は世界中を驚嘆させた。この結果を受けて米国はもとより日本でも様々な視点から、次期政権への取組に対する推測(期待や懸念)が語られている。日にちが経つにつれ閣僚人事や政権中枢に入るメンバーの名前が挙げられ、これについての評価も喧しい。
 JFSSでもこの選挙結果を受けて専門家をお招きし話を聞く機会を設けてきたが、今回も渡部悦和氏の米国からの帰国の機会を調整いただき、以下の点について詳しくお話いただいた。

1、「多極構造の世界」と「G-Zeroの世界」
2、トランプ次期大統領の対外政策
3、トランプ政権の安全保障政策
4、日米同盟への影響と日本の対応

 奇しくもこの日(11月15日)は、プーチン露大統領が9人の閣僚と共に来日し、安倍首相の故郷である山口県長門市で首脳会談が行われた。来日前からプーチン大統領の強気な発言が伝えられていた中、北方四島での共同経済活動実現に向けての協議に対する合意はなされたものの、「領土問題」解決への進展はなかった。
 ビジネスマンのトランプ氏は選挙中も米露関係を立て直す発言を自信満々に語っていた。もしそれが現実になれば日本の新たな懸念も生まれる。が、欧米諸国の政治的混迷と厳しい対露姿勢が続く中で、我が国は安倍首相の「地球儀を俯瞰する外交」による国際社会の信頼を背景に、是々非々、且つ強かに取組んでもらいたいものである。
 
テーマ: 「Global Trend・トランプ政権の安全保障政策・日米同盟への影響」
講 師: 渡部 悦和 氏(JFSS政策提言委員・元陸自東部方面総監・ハーバード大学アジアセンターシニアフェロー)
日 時: 平成28年12月15日(木)14:00~16:00

第93回
「米国新政権と我が国の安全保障政策」

  長野禮子 

 11月8日の米国大統領選の結果を受けて、国内外のメディアは今回の「番狂わせ」と言われる結果を見て、今後の米国の行方と新政権の下で執り得るだろう政治・経済・軍事政策などを想定しながら様々な視点からの議論を続けている。
 今回はワシントンDC在住で米国の要人や研究者など幅広い人脈を持つ廣中雅之氏をお迎えし、主に以下の5点についてお話いただいた。
 
・大統領選挙の結果をどう読むか。
・当面の国防政策・戦略、如何?
・政権移行準備の状況、如何?
・米国の中長期的な国防政策・戦略をどう読むか?
・米国新政権の我が国の安全保障への影響、如何?

テーマ: 「米国新政権と我が国の安全保障政策」
講 師: 廣中 雅之 氏(JFSS政策提言委員・前空自航空教育集団司令官・CNAS上席研究員)
日 時: 平成28年11月28日(月)16:00~17:30

第92回
「米大統領選の結果と予想される今後の日米関係」

 長野禮子 

 11月8日に行われた大統領選挙で、米国民は共和党のドナルド・トランプ氏を選んだ。CNNを始め多くのマスコミは当初、ビジネスマン出身で政治経験のないトランプ氏を泡沫候補として扱った。政治家ではない氏故に、短絡かつ刺激的な発言が連日のように新聞の一面に踊り、世界中を飛び回った。顰蹙を買うことを承知で言えば、まるで「お祭り騒ぎ」のような1年余だった。そしてこの日、トランプ氏はヒラリー・クリントン氏との大激戦を制したのである。
 当選が確実になった途端、マスコミは「番狂わせ」だとし、これまでのヒラリー勝利報道への正当性を前面に出しつつ、一方でトランプ氏の選挙中の発言を挙げ、今後の、特に日米同盟と日米関係の行方、「アジアのリバランス」への取組、TPP、そして中露・中東政策など様々な観点からの分析が始まった。
 ともあれ、選挙から1週間が過ぎた今、トランプ氏の過激な発言は封印されたかのように静かになり、報道にも「落ち着き」が感じられるようになった。来年1月20日の就任を前にホワイトハウスの陣営も検討されている。
 今回の結果を受けて安倍首相は直ちにトランプ氏との電話会談に臨み、日米両国の関係強化、信頼関係構築に向け良いスタートを切った。17日の安倍首相の訪米で、安倍首相と次期大統領トランプ氏との会談が行われる。期待を持って見守りたい。
 今回はお馴染みのジェームス E・アワー氏をお迎えし、上下両院ともに制した共和党による今後の政権運営について、様々な視点からお話いただく。

テーマ: 「米大統領選の結果と予想される今後の日米関係」
講 師: ジェームス E・アワー 氏(JFSS特別顧問・ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 平成28年11月14日(月)14:00~16:00

第91回
「ドゥテルテ比大統領の来日と今後の日比関係を読む」

 長野禮子
 
 フィリピンのドゥテルテ大統領のあまりにも「歯に衣着せぬ」発言は、時として反感を呼び、時として痛快であり、時として氏の人生を垣間見るようである。
 レイテ南部に生れ、ダバオ市長から大統領へと上り詰めたドゥテルテ氏が、一国を担う大統領としての振る舞いに欠けるその姿に世界はハラハラしているだろうが、何か憎めない人物のようにも見える。
 2013年、中国が領有権を主張する南シナ海のスプラトリー諸島を巡る紛争について、フィリピン政府が提訴していたオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の裁定が、この7月12日出た。しかし中国はこれを事実上無視し強気な発言を繰り返し、現在もこの地域での軍事拠点化が進められている。
 ドゥテルテ大統領は当初、中国との二国間協議には否定的だったが、10月20日訪中、習近平氏との首脳会談に臨み、フィリピンへの巨額の援助を取り付けた。その席でも強い米国批判発言が繰り返されたとの報道があったが、果たして中国が巨額の援助を履行するのか、また米国批判は本音なのか、まだ言い切ることはできない。
 そして25日、来日。岸田外相、安倍首相との首脳会談は、多岐に亘り意見の一致を見たとの報道があった。
 今回は、前フィリピン大使の卜部敏直氏をお招きし、南シナ海問題に対する日比の共通した認識を踏まえ、今後の日比関係、更には関係悪化の兆しが懸念される米比関係はどうなっていくのかなど、参加者と共に議論を深める。

テーマ: 「ドゥテルテ比大統領の来日と今後の日比関係を読む」
講 師: 卜部 敏直 氏(前フィリピン国駐箚特命全権大使)
日 時: 平成28年11月11日(金)14:30~

第90回
「『紛争地域』化した沖縄・高江
―基地反対派『民兵』による道路封鎖・検問―」

 長野禮子 

 普天間の基地移設計画は1996年に決定され、2006年に日米政府間で合意された。これを巡り、仲井眞前沖縄県知事が承認した辺野古埋め立てを、翁長知事が取り消し、この効力を国に対し違法として提訴。一方国はその撤回を求める代執行訴訟。
 3月4日、双方が裁判所の和解案を受け入れ、それに沿って双方が協議することを表明。その後も国と県の歩み寄りは見えず膠着状態が続いている。
 福岡高裁那覇支部は9月17日、国の訴えを認め、翁長知事が承認を取り消したのは違法だとする判決を言い渡した。また判決では、国防や外交に関する知事の審査権限について「地域の利益に関わることに限られ、県は国の判断を尊重すべきだ」と指摘したとの報道があった。当然のことではないかと、今更ながら嘆息する人もいよう。
 今回は4月の第34回定例シンポジウム「沖縄を救わねばならない」でご登壇いただいた篠原章氏をお招きし、国頭村安波のヘリパッド工事を妨害する反対派グループの行き過ぎた行動の実態をお話いただいた。

テーマ: 「『紛争地域』化した沖縄・高江<br>―基地反対派「民兵」による道路封鎖・検問―」
講 師: 篠原 章 氏(経済学博士)
日 時: 平成28年10月7日(金)14:00~16:00

第89回
「平成28年度『防衛白書』の説明」

 長野禮子

 今、我が国の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とする日本国憲法前文が悉く裏切られている。この広い世界に「諸国民の公正と信義に信頼」する前文を書き込んでいる国家が他にあるのだろうか。
 今年度の『防衛白書』は従来の内容に比べ、より踏み込んだ強い文言となっており、我が国が直面する切迫した脅威に対する認識のレベルが上がっていることを示している。
 今回は土本審議官をお招きし、第Ⅰ部「わが国を取り巻く安全保障環境」、第Ⅱ部、「わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟」、第Ⅲ部「国民の生命、財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組」、そして「平成29年度概算要求の概要」について詳しくご説明いただいた。

テーマ: 「平成28年度『防衛白書』の説明」
講 師: 土本 英樹 氏(大臣官房審議官)
日 時: 平成28年9月13日(火)14:00~16:00

第88回
「ナショナリズムのグロバール化」

長野禮子

 かつて、世界経済はG7が世界のGDPの約80%を占め、現在は約50%。  
 それに引き換え、1997年、アジア通貨危機がきっかけでスタートしたG20 は今や世界のGDPの約90%になった。  
 今回米国より一時帰国した渡部悦和氏は、イアン・ブレマー著『「Gゼロ後」の世界―主導者なき時代の勝者はだれか』を挙げ、その中で、世界は最早リーダーなき不寛容で利己的な世界へと傾きつつあり、G7(Group of seven)やG8(Group of eight)、G20(Group of twenty)といった グループを無くす傾向に向かっているとの指摘を紹介した。  
 一方、自由と民主主義を標榜し、広く世界平和を目指してきた時代から、民族や国境を越えて紛争が絶えないこの地球は、まさに「炎上する世界」と化し、強いリーダーの存在が期待される。  
 ロシアは軍事力を背景としてウクライナを併合し、シリアにまで手を伸ばす。中国が推し進める「海の長城」計画、中東諸国の不安定、ISIS等による国際テロ、英国のEU離脱、難民問題、債務危機・・・。  
 今世界に求められているのはプーチン露大統領のようなリアリストであり、決してきれい事だけのドリーマーでは乗り切れないと話す。米国の大統領選の行方も目が離せない。  
 多くの矛盾を抱えている複雑な現実を思い知らされる。 
テーマ: 「ナショナリズムのグロバール化」
講 師: 渡部 悦和 氏(JSFF政策提言委員・ハーバード大学アジアセンターシニアフェロー・元陸自東部方面総監)
日 時: 平成28年8月3日(水)14:00~16:00

第87回
「南シナ海情勢及び東シナ海情勢」

長野禮子

 前回に引き続き7月12日のオランダ・ハーグ仲裁裁判所の裁定結果についてである。
 フィリピンの主張をほぼ全面的に受け入れた今回の裁定について、中国の反応は相変わらず強気を通してはいるが、内心では国際社会からの信頼を失うことへの焦りが感じられる。
 しかし、現在進められている南シナ海の人工島建設や軍事拠点化は緩めることなく進められている。国連安保理の常任理事国という立場にありながら、国際法の遵守を拒否し続ける中国は、次なる手を打ちつつ東シナ海への挑発を抜かりなく続けることだろう。
 今回は元自衛艦隊司令官の香田洋二氏をお招きし、米国での発表も含め詳しくお話しいただいた。
テーマ: 「南シナ海情勢及び東シナ海情勢」
講 師: 香田 洋二 氏(JFSS政策提言委員・元海自自衛艦隊司令官)
日 時: 平成28年7月29日(金)15:00~17:00

第86回
「南シナ海仲裁裁定みる中国の侵略的海洋進出」

長野禮子 

 ハーグの仲裁裁判所は7月12日、南シナ海で次々と人工島を造成し、軍事拠点化を進めている中国の海洋進出は明らかに国際法違反であるとし、フィリピンの訴えをほぼ全面的に受け入れる裁定を発表した。
  これに対し中国は裁定発表の前からフィリピンに軍配が上がることを恐れていたのか、裁定結果は「紙くず」だとの発言を繰り返し、人工島の軍事化を更に進める構えである。 
  中国の主張する「九段線」については、ベトナムやフィリピンなどの周辺国や日米などの関係国も「航行の自由」を巡り様々な手を打ってきたが、国際的な司法判断が下されたのは今回が初めてである。 
  今回は国際法が専門の髙井晋氏をお招きし、詳しくお話しいただく。 
テーマ: 「南シナ海仲裁裁定みる中国の侵略的海洋進出」
講 師: 髙井 晉 氏(JFSS常任理事・防衛法学会理事長)
日 時: 平成28年7月22日(金)14:00~16:00

第85回
「大統領選挙を迎えるアメリカで何が起こっているのか」

長野禮子
 
 米国で展開されている次期大統領選。約1年をかけてのポスト・オバマをめぐる戦いは半年が経った今、当初泡沫候補と言われていたドナルド・トランプ氏が、共和党の候補指名を勝ち取り、一方、民主党は、ほぼヒラリー・クリントン氏になることが有力視されている。 
 我が国の新聞にも、この大統領選、殊にトランプ氏の発言をめぐっては様々は報道がなされてきた。もし、トランプ氏がこのまま勝ち続けたとしたら、従来の日米関係とは趣の違うお付き合いになるのではないかと懸念する意見、逆に、トランプ氏が大統領に就任すれば、平和ボケの日本人の目が覚めるのではないかという意見が聞かれる。 
 国際社会における米国の立ち位置が変化している中で、米国民の国益追及における価値観も従来とは異なってきつつあることも認識すべきであろう。 5月25日付の産経新聞には、「各国の駐留米軍に対する費用負担」が掲載されていた他、JFSS顧問のケビン・メア氏、上席研究員のロバート・エルドリッヂ氏のコメントも掲載されるなど、結果の出る11月までの選挙戦に目が離せない。 
 今回は「大統領選挙を迎える米国で何が起こっているのか」と題して、トランプ現象・サンダース現象の背景・米国民に鬱積する不満・オバマ外交の欠陥・世界の警察官にならないアメリカ・・・等々について、筑波学院大学名誉教授の浅川公紀氏をお迎えし、詳しくお話しいただく。 

テーマ: 「大統領選挙を迎えるアメリカで何が起こっているのか」
講 師: 浅川 公紀 氏(JFSS政策提言委員・筑波学院大学名誉教授)
日 時: 平成28年5月25日(水)14:00~16:00