Key Note Chat 坂町

第111回
「沖縄の基地政策―これでいいのか」

テーマ: 「沖縄の基地政策―これでいいのか」
講 師: ロバートD・エルドリッヂ 氏(JFSS上席研究員・政治学博士)
日 時: 平成29年12月8日(金)15:30~17:00

第110回
「トランプ政権の対北朝鮮政策」

テーマ: 「トランプ政権の対北朝鮮政策」
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成29年12月5日(火)14:00~16:00

第109回
「新しいアジア情勢の下での日台関係」

  長野禮子 

 今年(2017年)1月1日、「交流協会」を「日本台湾交流協会」と改め、「更なる関係を発展させていく」ことになった。安倍政権によって日台関係が大きく進展した証左である。
 台湾は今、日本と同様社会保障や少子高齢化の問題が散見され、国民の政府に対する眼も厳しく、蔡政権の支持率は低下している。
 日台関係を考えるに当たり、台中関係を無視することは不可欠であり、台湾人の意識も時代と共に変化して来ている。1972年のニクソンショックから45年。特に天安門事件以降の台湾人の帰属調査では、①中国人 ②台湾人 ③台湾人であると同時に中国人である―の3択では、1992年の段階では5割の台湾人が③を選択した。しかし、2015年の段階では6割の台湾人が②を選択した。更に、中国人か台湾人かの2択では、9割が台湾人であると回答した。「台湾人」としてのアイデンティティが語られる時代となったのかも知れない。
 1988年、台湾初の民撰総統である李登輝氏から、陳水扁氏、馬英九氏の3総統が登場した。李総統は、台湾海峡危機や司馬遼太郎氏との対談(台湾独立に関しても議論)などから中国から極めて危険視された人物でもある。
 李氏は司馬氏との対談で『出エジプト記』の話をされたが、恐らく台湾人は流浪の民であることを示唆したものと推察される。陳氏は「独立派」、馬氏は「統一派」である。しかし二人とも政権に就くと現実路線に転換し、陳氏は「4つのNO」(①中国からの武力行使が無い限り独立を宣言しない ②国号を変更しない ③両国論を加える憲法を改正しない ④統一か独立かの国民投票を行わない)を、馬氏は「3つの不」(①統一しない ②独立しない ③武力を使わない)、つまり現状維持を前面に出していた。 
 現在の蔡政権は、党綱領に「独立」を謳った民進党政権であり、正に中国と民進党の両方から注視され苦しい立場にあるが、所謂「一中各評」の台中コンセンサスの中で、どのように政権運営をして行くかである。中国は、蔡政権の対中政策を「不完全答案」と評し、牽制している。政権支持率が下がる中で、民進党内でも対中問題は重大なイシューであり、「事実上の独立ならば中国のレッドラインを超えない」という意見と、「事実上の独立は危険水域である」という意見で割れている。
 こうした中、蔡政権は新南向政策を打ち出し、過度の中国依存から脱するため東南アジア諸国やインドへの転向を試みており、日本との連携に期待を寄せている。新南向政策の目標となるASEAN諸国については、日・中・台など影響力の強い国家と対峙するため、どの国と組むかについては国内外情勢に大きく左右されるところである。
 以上、台湾や中国を始めとするアジア諸国が国力をつけてきている「新しいアジア情勢」下で日台関係を構築して行く場合、最早2国間のみの関係に留まらず、複雑な力関係を考慮し戦略的な検討が必要となろう。

テーマ: 新しいアジア情勢の下での日台関係
講 師: 谷崎 泰明 氏(日本台湾交流協会理事長・前インドネシア駐箚特命全権大使)
日 時: 平成29年11月28日(火)15:00~17:00

第108回
「トランプ大統領のアジア歴訪の成果と意義」

テーマ: トランプ大統領のアジア歴訪の成果と意義
講 師: 古森 義久 氏(JFSS顧問・麗澤大学特別教授)
日 時: 平成29年11月22日(水)15:00~17:00

第107回
「トランプ政権の対北朝鮮政策」

  長野禮子 

 10月10日、衆院選が公示され12日間の選挙戦が始まった。安倍首相は今回の解散の最大の理由を「北朝鮮危機による国難」と位置付け、併せて憲法改正の是非を問う選挙に打って出た。北朝鮮の脅威をよそに、国会での野党の追及は安倍首相に対する「モリ・カケ問題」に終始し、国家の安全保障問題を真剣に語ることはなかった。これにより確かに安倍政権の支持率は一気に10%落ち込んだが、野党の支持率が上がった訳ではない。解散風が吹き始めると野党は「疑惑隠し解散」と批判し、安倍一強政治を打倒すると息巻いているが、「モリ・カケ問題」が政権を転覆させるほどの問題ではないことを、国民は十分に理解している。政権批判を繰り返す野党が政権を奪取した暗黒の3年3ヵ月を国民は忘れてはいない。正にこの国難にあって真剣に取り組むべき問題のプライオリティを何と心得ているのか、看板を何度も架け替え立候補する“政治家”に「国民の命を守る責任」を託せるのか。具体的な裏付けもなく有権者に心地よいことを叫べば投票してくれると本気で思っているのか、強く問いたい。特に今回の総選挙は、戦後最大の危機と言われる北朝鮮の脅威に対して、誰に、どの政党に任せるかを決める重要な選挙であることを有権者は自覚しなければならない。
 さて、今回アワー氏は、主に米国民主党の左傾化が益々進んでいること、トランプ政権の北戦略、ミサイル防衛――以上3点についてお話下さった。何れも喫緊の問題として重要である。特に北の核攻撃が日韓に及んだ場合、米国は即、核による反撃を実行するかどうかであるが、それは必ずしも核攻撃ではなく通常兵器であろうとアワー氏は語る。 
 一方、トランプ大統領は10日、陸軍で話をし、「いつでも北を攻撃する準備をする」と言った。それに対しハリス太平洋軍司令官はこれを重く受け止めたということだが、マティス国防長官、ティラーソン国務長官などは米国の先制攻撃はないとしている。
 9月18日、マティス国防長官は「ソウルを危険に晒すことなく北朝鮮の核・ミサイルを無力化する軍事オプションがある」と記者団に語った。これは米軍が既にこのことにおける軍事シミュレーションの完了を意味することだと受け止めるべきだろう。米国もこれまで長きに亘り、北朝鮮に対してアメとムチを使い分けながら非核化を導いてきたことの失敗を認めたのか、日本も「対話のための対話」は無意味だとし、日米の認識のズレはない。
 米国は日本を含む同盟国と様々な軍事訓練を展開している。もし米韓軍による対北軍事行動が起こった場合、その元になるのは2015年に策定された「作戦計画5015」というものだ(10月12日付、産経新聞)。
 例えば、北の核施設を空爆する「5026」、北の体制を転覆させ、全土を占領する「5027」、北の体制動揺を受けて軍事介入する「5029」、北の経済を疲弊させる「5030」、金正恩や指導部の暗殺計画を実行する「斬首作戦」などがそれである。また、従来は北の韓国侵攻があった場合の反撃を前提としていたものが、5015では北が核・弾道ミサイルによる軍事攻撃の兆候が確認できた場合、核兵器を含む北の核・ミサイル基地への一斉先制攻撃に出る――となった。あらゆる作戦を実行し、その上で5027計画の全面戦争へと移行するということである。
 21世紀を生きる我々は、極東アジアの安全保障におけるパワーバランスが大きく揺れ動いている“現実”をしっかり受け止め、最悪のシナリオを想定しつつ、リスクを最小限に抑える戦略を立てることであるが、これが大問題である。
 北制裁に足並みを揃えつつあるかに見える中国の動向も、決して認識を共有しているとは言い難い。22日の総選挙の結果、更に、11月のトランプ大統領の訪日、続く韓国、中国訪問はどのような結果をもたらすのか注目される。


テーマ: トランプ政権の対北朝鮮政策
講 師: ジェームスE・アワー 氏(JFSS特別顧問・米ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 平成29年10月11日(火)14:00~16:00

第106回
「平成29年版『防衛白書』説明会」

  長野禮子 

 「防衛庁」から「防衛省」となって10年、我が国周辺の安全保障環境は年々厳しさを増し、殊に中国の挑発が続く尖閣諸島、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対する政府の取り組みに国民の関心は高まるばかりである。
 白書ではこうした現状を新たな段階の脅威と位置付け、内容も表現も昨年に比べ更に「強い表現」になっていると、青柳審議官は説明する。
 巻頭特集1では、省移行後の10年間の歩みとして、安全保障、災害派遣、PKO派遣、国際緊急援助活動などが紹介され、特集2では、防衛この1年として、中国の領海侵入に対する警戒監視や領空侵犯措置、米国トランプ政権との日米同盟の強化、南スーダンのPKO活動終了、そして特集3では、女性自衛官の活躍、特集4では、「平和を仕事にする」自衛隊の多岐に亘る活動が紹介されている。(巻頭資料は下記の通り)
 戦後70年余、実現しなかった憲法改正(9条、自衛隊明記等)への機運は高まりつつあるかに見えたが、それを阻止する反対派の「闇雲」なまでの安倍政権攻撃によって、また決断の時が遠のいた。マスコミは真実を伝え、政治家はそれを吟味し、現実に沿う安保体制を実現してこそ、「国家、国民の命と財産、名誉を守る」ことではないのか。
 現在日本が置かれている状況は、公的には「平時であるとの認識」と青柳審議官は言う。これは防衛省の「必要以上に国民を混乱させてはいけない」という配慮なのかも知れないが、目に見えない化学兵器や生物兵器への対応が日本はどこまで進んでいるのか。日本攻撃の手を緩めることなく、益々拡大し続ける中国、北朝鮮の暴挙に振り回されている国家で居続けることは最早できないとする国民の苛立ちも聞こえてくる。
 年々踏み込んだ言葉とその実践に期待するものの、人類の軍事、科学技術の発展により、「20世紀の戦争」の域をはるかに超えた21世紀の軍事力に対するプロ集団による総合的な戦略、備えなしに国民の安寧はない。
 戦後のアレルギーから覚醒するチャンスは正に「今」だと捉えるべきではなかろうか。

《巻頭資料》
1、わが国を取り巻く安全保障環境
2、わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟
3、国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組
テーマ: 平成29年版『防衛白書』説明会
講 師: 青柳 肇 氏(防衛省大臣官房報道官兼大臣官房審議官)
日 時: 平成29年9月7日(木)14:00~16:00

第105回
「インドの『アクト・イースト政策』の中の日本」
「ドグラム高地での印中対立―日本にとっての意味―」

  長野禮子 

 今回は、大きく2つの発表が行われた。まず最初は、ルーパクジョティ・ボラ氏による「インドの『アクト・イースト・ポリシー』とは何か」というものである。ボラ氏によると、インドの「アクト・イースト・ポリシー」の目的は、過去停滞してしまった東南アジアと東アジアの歴史的なつながりに、再びエネルギーを与えようとするものである。特にインドの「アクト・イースト・ポリシー」にとって日本は決定的な部分を占めており、その理由として、第1に、戦略的、経済的国益が日本とインドを接近させており、インドは日本の政府開発援助(ODA)の最大の受領国であること。第2に、インドと日本は、中国への懸念を共有していること。第3に、冷戦後のインドとアメリカとの関係強化が、日本のようなアメリカの同盟国との関係を緊密化させていること。第4に、インドのナレンドラ・モディ首相と日本の安倍晋三首相の個人的関係が日印関係を後押ししていること。第5に、政党に捉われない支持があること、を挙げている。そのため、結論として、今後、インドにとって日本の重要性は増すことはあっても減少することはないとの指摘があった。
 次に、長尾氏が「ドグラム高地での印中対立:日本にとっての意味」を発表。これは6月半ばから8月28日まで、印中両軍がブータンと中国の両方が領有権を主張するドクラム高地で睨み合ったことについて取り上げ、日本の安全保障政策について分析した発表である。まず何が起こったのか、事実関係を整理した後、実際戦争が起きるとしたら、中国側はどのようなシナリオを考えているか、インド側はどのような戦略をもって対応するかについての分析である。
 長尾氏は、この地域での中国側の軍事行動は過去1962年、1967年、1986-87年の3回あり、それぞれ第三世界でのリーダーシップや、中ソ対立、ソ連のアフガニスタン侵攻への対応といった外交的な目的があったと分析している。そのため、中国は「勝利」を演出することに関心があり、「勝利」さえできれば軍事作戦は限定したい思惑があるとの分析であった。それに対してインド側の対応は、限定させずにエスカレートさせる可能性がある。何故なら、例えば、エスカレートさせる方法として、空軍の投入、米露の外交的介入、別の領土を確保して交換を狙う方法などがあるが、どれもインドが有利になる可能性があるからだ。しかも、過去にインドが実際採用したこともあり、発想として持っているとの分析であった。このような傾向から、日本はどうするべきかについての政策提言があった。
 ドグラム地区について日本大使が出した声明は明確なインド支持を意味しており、その点では成功であったこと。平時については、日本は印中国境地域でのインドの防衛力増強に協力して、日本正面の中国軍をインド正面へ分散させる政策をとるべきであり、同時に実際危機が起きたときは、インド支援のため米軍と共にインド洋へのヘリ空母派遣を行ったり、尖閣への自衛隊配備によってインド方面の中国軍をこちらへ引き付ける――などの方法があることが政策として提案された。
 質疑応答では、ドグラム高地から中国軍が撤退した理由は、中国で開かれるBRICS会議にモディ首相に参加して欲しい中国側の思惑があると指摘されているが、その一方で対立の継続は経済的な利益の面から中国にとって損失であることなどから、他の理由についての議論や、中国の行動を懸念する一方で、インドに依存し過ぎることを不安視するブータンの思惑について意見交換が行われた。
(今回は長尾賢博士執筆の「会の概要」原稿を参考に掲載する)
テーマ: 「インドの『アクト・イースト政策』の中の日本」
「ドグラム高地での印中対立―日本にとっての意味―」
講 師: ルーパクジョティ・ボラ 氏(国立シンガポール大学南アジア研究センター客員研究員)
                      長尾 賢 氏(JFSS研究員・学習院大学非常勤
日 時: 平成29年8月30日(水)14:00~16:00

第104回
「朝鮮半島情勢と日韓関係」

  長野禮子 

 北朝鮮は8月29日5時58分、平壌の順安区域付近から弾道ミサイル1発を発射した。今回は日本海側ではなく、日本列島を越え北海道の襟裳岬上空を通過し、6時12分、襟裳岬東方約1180キロの太平洋上に落下。このミサイルは中距離弾道ミサイル「火星12」と判明した。安倍首相はトランプ米大統領との2回の電話会談で、「レッドライン」を超えたこの現実に更なる制裁を加えるべく共通の認識を確認するとともに、国連安保理も緊急会議を開きミサイル発射を強く非難、発射の即時停止を求める議長声明を全会一致で採択した。今回のミサイル発射は「米国の行動を見守る」とした金正恩委員長が、米韓合同軍事演習で応えたと米国を非難、今後も太平洋に向けた弾道ミサイル発射を継続する方針を示したようだ。
 北朝鮮という国は金日成、金正日、金正恩と政権が代わっても常に悩ましい国である。第二次世界大戦終結後の1948年9月9日、朝鮮民主主義人民共和国を建国、その後の朝鮮戦争、休戦。金日成は荒れ果てた国土復興のために在日朝鮮人の「地上の楽園」帰国事業を進め、日本人妻を含む約9万人が北朝鮮に帰国した。帰国した人々の悲惨な生活ぶりは『凍土の共和国』『どん底の共和国』『暗愚の共和国』(亜紀書房)に詳しい。
 国名に掲げた「民主主義」とは正反対の独裁政治は国際社会に憚ることなく、金正日は先軍政治を唱え、朝鮮人民軍最高司令官となった。日本人拉致を認めたものの無事に帰国したのは5家族のみ。数百人ともいわれる拉致被害者の帰国は未だ目途は立っていない。 
 2003年に始まった朝鮮半島の非核化を目的とした6者協議も2007年を最後に既に10年が過ぎた。その間、皮肉にも目的を達成しつつあるのは故金正日、金正恩であり、一度手にした核・ミサイルは決して手放さない。今年も建国記念日が近い。昨年同様、核実験、或いはより高度なミサイル発射を実行する可能性は高い。
 韓国との関係もまた悩ましい。文在寅大統領は北朝鮮のこの現実にあって日米韓の連携の重要さを理解しつつも、制裁より対話を優先している。が、当の北朝鮮は一蹴した。また、中国の牽制に遭いながらもTHAAD配備を決定したものの今年中の配備は延期。当然ながら、米韓関係にいい影響を与えるとは思えない。
 日韓関係に横たわる歴史認識や慰安婦問題、徴用工問題等々は、1965年の日韓基本条約で解決済だが、その履行について日本は韓国の政権が交代する度に蒸し返され、とても未来志向の良好な関係構築とは言い難く、早期の解決は望めない。
 今後の日本の対応について、武藤大使はこう締め括る。北朝鮮への軍事的手段はリスクが大き過ぎるとともに、制裁による解決には限界があり、冷静に圧力を加えるのが最善である。韓国については、様々な問題への抗議を毅然とした姿勢で示し、国際的なスタンダードで関係増進を図ることが望ましいと。

テーマ: 朝鮮半島情勢と日韓関係
講 師: 武藤 正敏 氏(JFSS顧問・元大韓民国駐箚特命全権大使)
日 時: 平成29年8月28日(月)15:00~17:00

第103回
「米国人法律家が語る戦後日本の歩み、そして将来」

  長野禮子 

 安倍政権の支持率が、森友、加計、日報問題で急落した。ワイドショーよろしく連日報道されるこれらの問題は、国政を左右する核心となり得る問題でないことは恐らく解っていながら、一強多弱を批判する野党の反安倍政権姿勢を露呈した。7月27日、その筆頭に立ち自らの二重国籍問題を棚に上げ、政権追及の手を緩めなかった民進党代表の蓮舫氏は、先の都議選の敗北、党の求心力低下を理由に辞任を表明した。
 しかし、この一連の流れの本質を見抜いていた国民は冷静だった。日本国憲法施行から70年を迎えた今年、安倍政権の本丸「憲法改正」への国民の理解は5割を超えている。この現象に焦燥感を募らせたGHQの占領政策(WGIP)墨守勢力は何が何でもこの動きを阻止するために、「問題」や「事件」を探し拡大させ、文科省の悪しき伝統まで国民の知るところとなった。国会の場で議論すべきプライオリティをはき違えた「政治家」に対する嫌悪さえ感じた人も少なくない。今語られるべきは、喫緊に迫った中国、北朝鮮の脅威に対する国防政策について与野党がともに協議し、国家、国民を守ることが最重要課題であることを、国民は承知している。その証拠に、この騒ぎの間、野党の支持率が上がらなかったことを真摯に受け止めるべきではないか。
 自民党は年内に憲法改正草案の取りまとめを目指す方針である。5月3日、2020年の新憲法施行を表明した安倍首相は、「自衛隊が違憲かどうかの議論に終止符を打つのは私たちの世代の責任だ」とした。
 我々国民は今、現憲法が占領下におかれ施行された当時の国際情勢と著しく変貌していることを正しく認識し、益々複雑化する国際社会にあって正々堂々と主権国家としての有るべき姿となすべき役割に対し、正面から向き合える国家を目指すことこそが、「強靭な国家」足り得ることを知らねばならない。
 「アメリカ追随を許してはならない」「自衛隊は違憲だ」という矛盾を唱え続け、憲法改正を阻む諸兄は、ではどうしたらこの国を守れるのか、守り切れるのかをしっかり説明して貰いたい。
 ケント・ギルバート氏の米国人法律家だからこその数々の指摘と提案は、出席者に憲法改正に向けての新たな視点を導くものとなった。

テーマ: 「米国人法律家が語る戦後日本の歩み、そして将来」
講 師: ケント・ギルバート 氏(米カリフォルニア州弁護士・タレント)
日 時: 平成29年7月28日(金)15:00~17:00

第102回
「尖閣問題、日本は無策」

  長野禮子 

 中国の東シナ海への挑発行為が年々過激になっている。中国が「核心的利益」と主張する尖閣諸島の領有権について日本政府はこれまで、あくまでも「日本固有の領土」との認識の下、「領土問題」としての扱いを避け、領海侵入、領空侵犯に対する抗議や懸念を表明してきたものの、受け身に徹する日本の対応は果たして現実を見据えた十分な対応であったのかとの疑念が付き纏う。 
 中国のこの地域における横暴な振る舞いに記憶される、2010年9月の中国漁船衝突事件(中国漁船による海上保安庁の巡視船「よなくに」と「みずき」への体当たり事件)で、中国人船長を公務執行妨害で逮捕したものの、時の菅政権は中国の圧力に屈し処分保留のまま中国へ送還、釈放したことは、いかに日本が中国の無秩序な行動に怯み、醜いまでの友好を続けてきたかをいやが上にも確認させられた。その後、海上保安官が事の顛末をYouTubeに掲載、全国各地で時の政権への怒りや不満が噴出した。
 しかし、中国の尖閣を自国領土とする執着は今に始まったことではない。1972年の沖縄返還直後の12月、中国がその領有を主張し始め、04年3月、「釣魚臺列嶼中国領土」(尖閣は中国の領土)と刻まれた石碑20個が制作され、この海域に投入する目的であることが廈門報道で報じられている(JFSS『季報』Vol.47  P.7山本晧一氏)。海中に沈んだ石碑は100年後には中国領土であることの立派な証拠品となるのである。
 緊迫する中国の脅威に、27年度の空自機によるスクランブル回数は873回、そのうち中国機は571回と前年度と比べ107回増加(平成28年度版防衛白書)している。
 日本政府は同盟国アメリカの大統領が代わるごとに、日米同盟5条の適用を確認するが、まずは、自国の安全保障は自ら守るという強い意志とそれに沿った法整備を実現し、実行しなければ国民の安寧はない。
 「サラミ・スライス戦術」で南シナ海を奪ってきた中国の策略を教訓とし、その対応策が急がれるが、キメの一手が見い出せない日本。「日本固有の領土」に日本人が上陸できない不思議・・・近い将来、東シナ海も南シナ海と同じ運命を辿るかも知れない。
 エルドリッジ氏は言う。日本政府の東シナ海対策は「無策」だと。
 
テーマ: 「尖閣問題、日本は無策」
講 師: ロバートD・エルドリッヂ 氏(JFSS上席研究員・政治学博士)
日 時: 平成29年7月5日(水)14:00~16:00

第101回
「技術的優越の確保と優れた防衛装備品の創製を目指して」
―防衛装備庁の取り組み―

  長野禮子 

 近年の国際情勢の変化に伴う我が国の安全保障環境は益々厳しく複雑さを増している。目前の脅威から我が国を守り、大きな抑止力を生むには、精強に訓練された部隊育成と、我が国の高い技術力を一層強化すると共に、それを活用した装備品の研究開発を押し進め、技術的優越を確保しなければ強靭な国家建設は実現しない。
 今回は2015年10月1日に発足した防衛装備庁の渡辺秀明長官をお招きし、以下のことについて詳しくお話いただいた。


1、防衛装備品等の研究開発について
 ア、防衛装備庁における4つの方針
 イ、予算から見る研究開発を取り巻く環境
 ウ、研究開発関連の部署と業務

2、防衛技術戦略について

テーマ: 「技術的優越の確保と優れた防衛装備品の創製を目指して」 ―防衛装備庁の取り組み―
講 師: 渡辺 秀明 氏(防衛省防衛装備庁長官)
日 時: 平成29年5月10日(水)14:00~15:30

第100回
「蔡英文政権の一年と今後の課題」

  長野禮子 

 台湾は2016年5月20日、それまで8年間、一貫して親中路線を進め、政権末期には1949年の中台分断後初の「両岸の指導者」同士として、中国の習近平主席と歴史的な首脳会談を実現した国民党・馬英九政権から、民進党・蔡英文政権に交代した。そしてそろそろ一年が経つ。
 日本は日台が共有する歴史的経緯や、地政学的安全保障の上からも最重要地域であり、謂わば「運命共同体」としての認識の下、72年の断交以降も深い交流が続いている。「一つの中国」を唱える中国と一線を画す蔡政権の誕生は、同時に我々日本国民にとって政治的にも心情的にも歓迎するものであった。
 しかし、親中路線を加速し続けた馬政権の政治的経済的残滓はそこかしこにあり、蔡総統の政権運営は決して容易ではないようだ。トランプ米大統領は就任直後、中国の習主席に先立ち蔡総統との電話会談を実現した。が、米国は「台湾は中国の一部ではないが、国際社会での主権国家としての立場は認めない」との位置付けである。また、「中華人民共和国」は“チャイナ”、「中華民国」は“チャイニーズ”と実に紛らわしく、中国と中華民国との線引きが出来ていない。2007年、当時の陳水扁総統は国連の潘基文国連事務総長(当時)に「台湾」名での国連加盟を求める親書を送ったが、「台湾は中国の一部」との理由でこれを受け入れなかった。1971年、国連は「台湾は中国の一部」であるとの決議はしていない。 
 一方、台湾政府も「中華民国」と「台湾」のどちらかという明確な立場を主張していない。台湾はこれまで一刻たりとも中国共産党の支配を受けたことはないのだが、これも謂わば「台湾の悲哀」の一面なのか。 
 国民党、民進党と政権交代しても中台関係は時には微妙に、時には激しい緊張関係を伴いながら現在に至る。しかし実態としては「台湾=事実上の国家」として生き続けていると許氏は語る。台湾人としてのアイデンティティを確立した今、未だ独立国家としての主権を有することが許されない現実は、実に哀しい。国際社会の理解を得るための具体的努力を、我々日本人が躊躇わずに堂々と進める時代はいつ来るのだろうか。
テーマ: 「蔡英文政権の一年と今後の課題」
講 師: 許 世楷 氏(JFSS特別顧問・元台北駐日經濟文化代表處代表)
日 時: 平成29年4月12日(水)14:00~17:00

第99回
「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な評価に関する提言」

  長野禮子 

 今春は彼岸を過ぎても行きつ戻りつの天気で、なかなか予報通りの開花とはならなかったが、ここにきて窓外もやっと薄桃色の景色を楽しめるようになった。満開の日も近い。
 3月末、自民党安全保障調査会は「敵基地攻撃能力」の保有に関する提言書をまとめ、政府に提言した。この「敵基地攻撃能力」(政府は自民党案を受け、「敵基地反撃能力」とした)の保有に関しては、これまで「憲法9条」「専守防衛」の原則に反しないとなっていたが、何も進展はなかった。
 このことは皮肉にも北朝鮮の核実験やミサイル発射等の挑発行為が特に最近頻度を増し、我が国のEEZに落下したこと等による航空機や船舶への脅威と、移動式発射台や潜水艦からの発射、固形燃料による弾道ミサイル発射やロフテッド軌道による発射等々の技術を持ちつつあるとみられる新たな段階の脅威に突入したとの認識の下、自民党がやっと重い腰を上げたということだろう。
 北朝鮮は、米中首脳による北朝鮮問題についての会談を前日に控えた今日(5日)もミサイルを飛ばし、日本海に着弾した。国内メディアやイデオロギーによる反発や抵抗があったにせよ、遅きに失した観は否めない。が、「新たな段階の脅威」を日米共有の認識として、北朝鮮の暴挙を挫き、国家国民の安全を確たるものとするための一歩となったことに期待したい。
 民進党の蓮舫代表のように、「平和国家の礎が、ガラガラと音を立てて崩れるように思えて非常に懸念している」などと呑気なことを言っている場合ではない。抑止力強化に伴う防衛予算の増額も、今や多くの国民の理解の範囲にあるのではないか。
テーマ: 「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な評価に関する提言」
講 師: 田村 重信 氏(JFSS政策提言委員・自由民主党政務調査会審議役)
日 時: 平成29年4月3日(月)13:00~14:00

第98回
「トランプ政権の東アジア安全保障政策」

  長野禮子 

 トランプ政権発足から2ヵ月が経過した。徐々に新政権の政策やトランプ氏の人物像が浮かび上がる中、世界は経済界出身の大統領がどういう国家運営をするのか、予測の難しい新たな時代の始まりを注視している。さしずめ日本にとっては、対中宥和政策をとり続けた前政権の政策転換を表明した新政権と、日米両首脳を始め外交・安全保障のトップとの価値観の共有が確認できたことは喜ばしいことである。が、同時に、中国・北朝鮮からの脅威に対する盤石な体制づくりが喫緊の課題となっている我が国の状況、南シナ海における中国の横暴な振る舞いを阻止し、「航行の自由」を守るための具体的戦略と行動を完遂するためには、周辺国との協調を促進させ、日米同盟の強化と深化が更に重要になるのは理の当然。 
 建前ではなく本音を前面に出すトランプ政権がスタートした今こそ、従来の同盟関係に甘んずることなく、我が国も「普通の国」になる好機と捉え、その果たすべき役割について国民世論と共に真剣に考え、行動する時が来たのではないか。そのためには、米国からの日本に対する厳しい要求にも応える努力を怠ってはならず、それが実行され成し得た時に、初めて同盟国としての「価値観の共有」が実を結んだと言えるのではないか。
 今回は、元米海兵隊大佐であり外交官も歴任したグラント F・ニューシャム氏に、トランプ政権の安全保障政策について幅広い視野でお話いただいた。
テーマ: 「トランプ政権の東アジア安全保障政策」
講 師: グラントF・ニューシャム 氏(JFSS上席研究員・元米海兵隊大佐)
日 時: 平成29年3月21日(火)14:00~16:00

第97回
「南西諸島防衛を強固にするために」

  長野禮子 

 トランプ氏が米国大統領に就任して1ヵ月半。政権幹部の人事は難航しているようだが、2月に来日したマティス国防長官、更に3月15日来日予定のティラーソン国務長官は我が国にとっても歓迎すべき人事だと言われている。
 トランプ大統領は2月末、国防予算の10%(約6兆900億円)増を予算案に取り込むと発表。実現すれば「歴史的な拡大」となるそうだが、日本はどうか。常態化している中国・北朝鮮の脅威に対する備えは十分と言えるのか。
 北が日本と韓国を攻撃すれば米国は100%応戦する。しかし、中国がもし南西諸島を攻撃してきても、日本はそれを防ぐための訓練すらしていないのが現状だ。早く米海兵隊並みの力をつけると共に、統合部隊をつくり、そこに米海兵隊司令部を置けば「中国への抑止」が機能する――と、今回のゲスト、アワー氏は言う。更に、米海軍と海上自衛隊の関係は良好だが、陸海空の統合運用は不十分だと指摘。「自分の国は自分で守る」姿勢を示さなければ、同盟国米国は出て来ない。 
 6日、北朝鮮は4発のミサイルを発射し、うち3発が日本のEEZ内に落下。また南西諸島における中国の脅威も続いている現状にありながら、国会では野党が責め立てる大阪の小学校の問題ばかりが喧しい。もっと冷静になって我が国の正面にある安全保障問題を真剣に議論してほしいものである。

テーマ: 「南西諸島防衛を強固にするために」
講 師: ジェームスE・アワー 氏(JFSS特別顧問・ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 平成29年3月7日(火)14:00~16:00

第96回
「トランプ政権に期待すること、懸念すること」

  長野禮子 

 トランプ大統領は就任した1月20日から1月末までに18の「大統領令」に署名し、60の公約のうち既に15に着手している。スピード感をもって政治をしている。日本人には馴染みのない「大統領令」だが、過去最高はF・ルーズベルトの3728、最近ではクリントンの364、ブッシュの291、オバマの276となっている。平均すれば739,5 というから、トランプ氏の大統領令もこれからどんどん出ることだろう。
 日本は米国の大統領が代わるたびに日米関係はどう変化するだろうかと心配し、ああでもない、こうでもないと専門家等々のコメントが報道されてきたが、2月3日来日したマティス国防長官は「尖閣諸島は日米同盟第5条の適応範囲に含まれ、それを損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と、中国を念頭にした共通認識を表明。北朝鮮の核・ミサイル問題、更に「核の傘」を含む拡大抑止にも言及し、従来の日米同盟の堅持と更なる深化に対する認識も確認された。
 ケビン・メア氏は、トランプ政権の安定までには時間がかかり、国内の混乱も暫く続くだろうが、2月10日、安定した政権運営をしている安倍首相とトランプ大統領との会談は双方の信頼関係構築に不可欠であり、外交・安全保障に加え経済面での問題も克服できるだろうと話す。
テーマ: 「トランプ政権に期待すること、懸念すること」
講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成29年2月7日(火)14:00~16:00

第95回
「報道されない半島情勢」

  長野禮子 

 北朝鮮の金正恩総書記は2017年の「新年の辞」で自らの能力不足を国民に詫びるなど、かつての金日成や金正日には考えられなかった謙虚な態度を見せた。と同時に、大陸間弾道ミサイル(ICBM)が最終段階に入ったとし、核・ミサイルの高度化を誇示した。
 元商社の法務を担当していた本日の講師、宇田川氏が入手した情報によれば、金正恩は今、金正日が考案した「三権力鼎立」を使いきれていないため、国民がクーデターを起こす可能性も否定できない。故に、三権力(朝鮮労働党・人民解放軍・行政機構)が融合しながら国家運営をしている。金正恩は傀儡ではないか――との仮説を立てる。 
 一方、韓国の現状と今後の展望、そして韓国国民の考えていること――についても、氏ならではの情報とそれによる氏の分析は、報道では決して知り得ないこととして参加者の 興味を惹いた。

テーマ: 「報道されない半島情勢」
講 師: 宇田川 敬介 氏(作家・ジャーナリスト)
日 時: 平成29年1月24日(火)14:00~16:00

第94回
「Global Trend・トランプ政権の安全保障政策・日米同盟への影響」

  長野禮子 

 11月8日の米大統領選挙でのトランプ氏の勝利は世界中を驚嘆させた。この結果を受けて米国はもとより日本でも様々な視点から、次期政権への取組に対する推測(期待や懸念)が語られている。日にちが経つにつれ閣僚人事や政権中枢に入るメンバーの名前が挙げられ、これについての評価も喧しい。
 JFSSでもこの選挙結果を受けて専門家をお招きし話を聞く機会を設けてきたが、今回も渡部悦和氏の米国からの帰国の機会を調整いただき、以下の点について詳しくお話いただいた。

1、「多極構造の世界」と「G-Zeroの世界」
2、トランプ次期大統領の対外政策
3、トランプ政権の安全保障政策
4、日米同盟への影響と日本の対応

 奇しくもこの日(11月15日)は、プーチン露大統領が9人の閣僚と共に来日し、安倍首相の故郷である山口県長門市で首脳会談が行われた。来日前からプーチン大統領の強気な発言が伝えられていた中、北方四島での共同経済活動実現に向けての協議に対する合意はなされたものの、「領土問題」解決への進展はなかった。
 ビジネスマンのトランプ氏は選挙中も米露関係を立て直す発言を自信満々に語っていた。もしそれが現実になれば日本の新たな懸念も生まれる。が、欧米諸国の政治的混迷と厳しい対露姿勢が続く中で、我が国は安倍首相の「地球儀を俯瞰する外交」による国際社会の信頼を背景に、是々非々、且つ強かに取組んでもらいたいものである。
 
テーマ: 「Global Trend・トランプ政権の安全保障政策・日米同盟への影響」
講 師: 渡部 悦和 氏(JFSS政策提言委員・元陸自東部方面総監・ハーバード大学アジアセンターシニアフェロー)
日 時: 平成28年12月15日(木)14:00~16:00

第93回
「米国新政権と我が国の安全保障政策」

  長野禮子 

 11月8日の米国大統領選の結果を受けて、国内外のメディアは今回の「番狂わせ」と言われる結果を見て、今後の米国の行方と新政権の下で執り得るだろう政治・経済・軍事政策などを想定しながら様々な視点からの議論を続けている。
 今回はワシントンDC在住で米国の要人や研究者など幅広い人脈を持つ廣中雅之氏をお迎えし、主に以下の5点についてお話いただいた。
 
・大統領選挙の結果をどう読むか。
・当面の国防政策・戦略、如何?
・政権移行準備の状況、如何?
・米国の中長期的な国防政策・戦略をどう読むか?
・米国新政権の我が国の安全保障への影響、如何?

テーマ: 「米国新政権と我が国の安全保障政策」
講 師: 廣中 雅之 氏(JFSS政策提言委員・前空自航空教育集団司令官・CNAS上席研究員)
日 時: 平成28年11月28日(月)16:00~17:30

第92回
「米大統領選の結果と予想される今後の日米関係」

 長野禮子 

 11月8日に行われた大統領選挙で、米国民は共和党のドナルド・トランプ氏を選んだ。CNNを始め多くのマスコミは当初、ビジネスマン出身で政治経験のないトランプ氏を泡沫候補として扱った。政治家ではない氏故に、短絡かつ刺激的な発言が連日のように新聞の一面に踊り、世界中を飛び回った。顰蹙を買うことを承知で言えば、まるで「お祭り騒ぎ」のような1年余だった。そしてこの日、トランプ氏はヒラリー・クリントン氏との大激戦を制したのである。
 当選が確実になった途端、マスコミは「番狂わせ」だとし、これまでのヒラリー勝利報道への正当性を前面に出しつつ、一方でトランプ氏の選挙中の発言を挙げ、今後の、特に日米同盟と日米関係の行方、「アジアのリバランス」への取組、TPP、そして中露・中東政策など様々な観点からの分析が始まった。
 ともあれ、選挙から1週間が過ぎた今、トランプ氏の過激な発言は封印されたかのように静かになり、報道にも「落ち着き」が感じられるようになった。来年1月20日の就任を前にホワイトハウスの陣営も検討されている。
 今回の結果を受けて安倍首相は直ちにトランプ氏との電話会談に臨み、日米両国の関係強化、信頼関係構築に向け良いスタートを切った。17日の安倍首相の訪米で、安倍首相と次期大統領トランプ氏との会談が行われる。期待を持って見守りたい。
 今回はお馴染みのジェームス E・アワー氏をお迎えし、上下両院ともに制した共和党による今後の政権運営について、様々な視点からお話いただく。

テーマ: 「米大統領選の結果と予想される今後の日米関係」
講 師: ジェームス E・アワー 氏(JFSS特別顧問・ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 平成28年11月14日(月)14:00~16:00

第91回
「ドゥテルテ比大統領の来日と今後の日比関係を読む」

 長野禮子
 
 フィリピンのドゥテルテ大統領のあまりにも「歯に衣着せぬ」発言は、時として反感を呼び、時として痛快であり、時として氏の人生を垣間見るようである。
 レイテ南部に生れ、ダバオ市長から大統領へと上り詰めたドゥテルテ氏が、一国を担う大統領としての振る舞いに欠けるその姿に世界はハラハラしているだろうが、何か憎めない人物のようにも見える。
 2013年、中国が領有権を主張する南シナ海のスプラトリー諸島を巡る紛争について、フィリピン政府が提訴していたオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の裁定が、この7月12日出た。しかし中国はこれを事実上無視し強気な発言を繰り返し、現在もこの地域での軍事拠点化が進められている。
 ドゥテルテ大統領は当初、中国との二国間協議には否定的だったが、10月20日訪中、習近平氏との首脳会談に臨み、フィリピンへの巨額の援助を取り付けた。その席でも強い米国批判発言が繰り返されたとの報道があったが、果たして中国が巨額の援助を履行するのか、また米国批判は本音なのか、まだ言い切ることはできない。
 そして25日、来日。岸田外相、安倍首相との首脳会談は、多岐に亘り意見の一致を見たとの報道があった。
 今回は、前フィリピン大使の卜部敏直氏をお招きし、南シナ海問題に対する日比の共通した認識を踏まえ、今後の日比関係、更には関係悪化の兆しが懸念される米比関係はどうなっていくのかなど、参加者と共に議論を深める。

テーマ: 「ドゥテルテ比大統領の来日と今後の日比関係を読む」
講 師: 卜部 敏直 氏(前フィリピン国駐箚特命全権大使)
日 時: 平成28年11月11日(金)14:30~

第90回
「『紛争地域』化した沖縄・高江
―基地反対派『民兵』による道路封鎖・検問―」

 長野禮子 

 普天間の基地移設計画は1996年に決定され、2006年に日米政府間で合意された。これを巡り、仲井眞前沖縄県知事が承認した辺野古埋め立てを、翁長知事が取り消し、この効力を国に対し違法として提訴。一方国はその撤回を求める代執行訴訟。
 3月4日、双方が裁判所の和解案を受け入れ、それに沿って双方が協議することを表明。その後も国と県の歩み寄りは見えず膠着状態が続いている。
 福岡高裁那覇支部は9月17日、国の訴えを認め、翁長知事が承認を取り消したのは違法だとする判決を言い渡した。また判決では、国防や外交に関する知事の審査権限について「地域の利益に関わることに限られ、県は国の判断を尊重すべきだ」と指摘したとの報道があった。当然のことではないかと、今更ながら嘆息する人もいよう。
 今回は4月の第34回定例シンポジウム「沖縄を救わねばならない」でご登壇いただいた篠原章氏をお招きし、国頭村安波のヘリパッド工事を妨害する反対派グループの行き過ぎた行動の実態をお話いただいた。

テーマ: 「『紛争地域』化した沖縄・高江
―基地反対派「民兵」による道路封鎖・検問―」
講 師: 篠原 章 氏(経済学博士)
日 時: 平成28年10月7日(金)14:00~16:00

第89回
「平成28年版『防衛白書』の説明」

 長野禮子

 今、我が国の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とする日本国憲法前文が悉く裏切られている。この広い世界に「諸国民の公正と信義に信頼」する前文を書き込んでいる国家が他にあるのだろうか。
 今年の『防衛白書』は従来の内容に比べ、より踏み込んだ強い文言となっており、我が国が直面する切迫した脅威に対する認識のレベルが上がっていることを示している。
 今回は土本審議官をお招きし、第Ⅰ部「わが国を取り巻く安全保障環境」、第Ⅱ部、「わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟」、第Ⅲ部「国民の生命、財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組」、そして「平成29年度概算要求の概要」について詳しくご説明いただいた。

テーマ: 「平成28年版『防衛白書』の説明」
講 師: 土本 英樹 氏(大臣官房審議官)
日 時: 平成28年9月13日(火)14:00~16:00

第88回
「ナショナリズムのグロバール化」

長野禮子

 かつて、世界経済はG7が世界のGDPの約80%を占め、現在は約50%。  
 それに引き換え、1997年、アジア通貨危機がきっかけでスタートしたG20 は今や世界のGDPの約90%になった。  
 今回米国より一時帰国した渡部悦和氏は、イアン・ブレマー著『「Gゼロ後」の世界―主導者なき時代の勝者はだれか』を挙げ、その中で、世界は最早リーダーなき不寛容で利己的な世界へと傾きつつあり、G7(Group of seven)やG8(Group of eight)、G20(Group of twenty)といった グループを無くす傾向に向かっているとの指摘を紹介した。  
 一方、自由と民主主義を標榜し、広く世界平和を目指してきた時代から、民族や国境を越えて紛争が絶えないこの地球は、まさに「炎上する世界」と化し、強いリーダーの存在が期待される。  
 ロシアは軍事力を背景としてウクライナを併合し、シリアにまで手を伸ばす。中国が推し進める「海の長城」計画、中東諸国の不安定、ISIS等による国際テロ、英国のEU離脱、難民問題、債務危機・・・。  
 今世界に求められているのはプーチン露大統領のようなリアリストであり、決してきれい事だけのドリーマーでは乗り切れないと話す。米国の大統領選の行方も目が離せない。  
 多くの矛盾を抱えている複雑な現実を思い知らされる。 
テーマ: 「ナショナリズムのグロバール化」
講 師: 渡部 悦和 氏(JSFF政策提言委員・ハーバード大学アジアセンターシニアフェロー・元陸自東部方面総監)
日 時: 平成28年8月3日(水)14:00~16:00

第87回
「南シナ海情勢及び東シナ海情勢」

長野禮子

 前回に引き続き7月12日のオランダ・ハーグ仲裁裁判所の裁定結果についてである。
 フィリピンの主張をほぼ全面的に受け入れた今回の裁定について、中国の反応は相変わらず強気を通してはいるが、内心では国際社会からの信頼を失うことへの焦りが感じられる。
 しかし、現在進められている南シナ海の人工島建設や軍事拠点化は緩めることなく進められている。国連安保理の常任理事国という立場にありながら、国際法の遵守を拒否し続ける中国は、次なる手を打ちつつ東シナ海への挑発を抜かりなく続けることだろう。
 今回は元自衛艦隊司令官の香田洋二氏をお招きし、米国での発表も含め詳しくお話しいただいた。
テーマ: 「南シナ海情勢及び東シナ海情勢」
講 師: 香田 洋二 氏(JFSS政策提言委員・元海自自衛艦隊司令官)
日 時: 平成28年7月29日(金)15:00~17:00

第86回
「南シナ海仲裁裁定みる中国の侵略的海洋進出」

長野禮子 

 ハーグの仲裁裁判所は7月12日、南シナ海で次々と人工島を造成し、軍事拠点化を進めている中国の海洋進出は明らかに国際法違反であるとし、フィリピンの訴えをほぼ全面的に受け入れる裁定を発表した。
  これに対し中国は裁定発表の前からフィリピンに軍配が上がることを恐れていたのか、裁定結果は「紙くず」だとの発言を繰り返し、人工島の軍事化を更に進める構えである。 
  中国の主張する「九段線」については、ベトナムやフィリピンなどの周辺国や日米などの関係国も「航行の自由」を巡り様々な手を打ってきたが、国際的な司法判断が下されたのは今回が初めてである。 
  今回は国際法が専門の髙井晋氏をお招きし、詳しくお話しいただく。 
テーマ: 「南シナ海仲裁裁定みる中国の侵略的海洋進出」
講 師: 髙井 晉 氏(JFSS常任理事・防衛法学会理事長)
日 時: 平成28年7月22日(金)14:00~16:00

第85回
「大統領選挙を迎えるアメリカで何が起こっているのか」

長野禮子
 
 米国で展開されている次期大統領選。約1年をかけてのポスト・オバマをめぐる戦いは半年が経った今、当初泡沫候補と言われていたドナルド・トランプ氏が、共和党の候補指名を勝ち取り、一方、民主党は、ほぼヒラリー・クリントン氏になることが有力視されている。 
 我が国の新聞にも、この大統領選、殊にトランプ氏の発言をめぐっては様々は報道がなされてきた。もし、トランプ氏がこのまま勝ち続けたとしたら、従来の日米関係とは趣の違うお付き合いになるのではないかと懸念する意見、逆に、トランプ氏が大統領に就任すれば、平和ボケの日本人の目が覚めるのではないかという意見が聞かれる。 
 国際社会における米国の立ち位置が変化している中で、米国民の国益追及における価値観も従来とは異なってきつつあることも認識すべきであろう。 5月25日付の産経新聞には、「各国の駐留米軍に対する費用負担」が掲載されていた他、JFSS顧問のケビン・メア氏、上席研究員のロバート・エルドリッヂ氏のコメントも掲載されるなど、結果の出る11月までの選挙戦に目が離せない。 
 今回は「大統領選挙を迎える米国で何が起こっているのか」と題して、トランプ現象・サンダース現象の背景・米国民に鬱積する不満・オバマ外交の欠陥・世界の警察官にならないアメリカ・・・等々について、筑波学院大学名誉教授の浅川公紀氏をお迎えし、詳しくお話しいただく。 

テーマ: 「大統領選挙を迎えるアメリカで何が起こっているのか」
講 師: 浅川 公紀 氏(JFSS政策提言委員・筑波学院大学名誉教授)
日 時: 平成28年5月25日(水)14:00~16:00