第102回
「尖閣問題、日本は無策」

.

 

  長野禮子 

 中国の東シナ海への挑発行為が年々過激になっている。中国が「核心的利益」と主張する尖閣諸島の領有権について日本政府はこれまで、あくまでも「日本固有の領土」との認識の下、「領土問題」としての扱いを避け、領海侵入、領空侵犯に対する抗議や懸念を表明してきたものの、受け身に徹する日本の対応は果たして現実を見据えた十分な対応であったのかとの疑念が付き纏う。 
 中国のこの地域における横暴な振る舞いに記憶される、2010年9月の中国漁船衝突事件(中国漁船による海上保安庁の巡視船「よなくに」と「みずき」への体当たり事件)で、中国人船長を公務執行妨害で逮捕したものの、時の菅政権は中国の圧力に屈し処分保留のまま中国へ送還、釈放したことは、いかに日本が中国の無秩序な行動に怯み、醜いまでの友好を続けてきたかをいやが上にも確認させられた。その後、海上保安官が事の顛末をYouTubeに掲載、全国各地で時の政権への怒りや不満が噴出した。
 しかし、中国の尖閣を自国領土とする執着は今に始まったことではない。1972年の沖縄返還直後の12月、中国がその領有を主張し始め、04年3月、「釣魚臺列嶼中国領土」(尖閣は中国の領土)と刻まれた石碑20個が制作され、この海域に投入する目的であることが廈門報道で報じられている(JFSS『季報』Vol.47  P.7山本晧一氏)。海中に沈んだ石碑は100年後には中国領土であることの立派な証拠品となるのである。
 緊迫する中国の脅威に、27年度の空自機によるスクランブル回数は873回、そのうち中国機は571回と前年度と比べ107回増加(平成28年度版防衛白書)している。
 日本政府は同盟国アメリカの大統領が代わるごとに、日米同盟5条の適用を確認するが、まずは、自国の安全保障は自ら守るという強い意志とそれに沿った法整備を実現し、実行しなければ国民の安寧はない。
 「サラミ・スライス戦術」で南シナ海を奪ってきた中国の策略を教訓とし、その対応策が急がれるが、キメの一手が見い出せない日本。「日本固有の領土」に日本人が上陸できない不思議・・・近い将来、東シナ海も南シナ海と同じ運命を辿るかも知れない。
 エルドリッジ氏は言う。日本政府の東シナ海対策は「無策」だと。
 

講 師: ロバートD・エルドリッヂ 氏(JFSS上席研究員・政治学博士)
日 時: 平成29年7月5日(水)14:00~16:00