第119回
「中間選挙を控えた米国の現状と課題」

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長野禮子 

 約1年ぶりにアワー氏をお招きしての「Chat」は、以下の通り。

★米政権暴露本『FEAR:Trump in the White House』:
 「非常にセンセーショナル、ミスリーディング、ケイオス」という3つの言葉で表現した。つまり、発言者の名前や根拠自体が非常に不明確で信頼できない。

★トランプ政権の1年:
 オバマ大統領が選出された2008年、民主党は初の黒人大統領誕生に期待した。しかし、経済や安全保障に対する対応が不十分だったため、2期目が終わる2016年には期待から失望へと変化していった。そのため、米国民は2016年の大統領選挙で、オバマ氏の政策を引き継ぐと思われたヒラリー・クリントン氏の当選を恐れた。結果、トランプ氏が大統領となった。大統領選では、トランプ氏を信頼していた訳でもないし、政治家としての手法も手荒く問題はあるが、この1年間で黒人の就労率改善、軍事費70%増など、驚くべき良い方向への変化があった。マスメディアは、大統領選へのロシア介入が勝因だと騒ぐが、全くナンセンスだ。

★11月の中間選挙:
 民主党の大部分はトランプ氏を弾劾する手続きを検討しているが、下院では共和党が過半数を占めているので、弾劾することはできない。同じく11月には下院選挙があり、民主党が過半数を獲得することも予想される。もしそうなったとしても、トランプ政権への議会での攻撃は激しくなるが、弾劾まではいかないだろう。

★日米関係と日米同盟:
 トランプ氏は、日米関係には好感を抱いている。トランプ大統領と安倍首相との関係は、ゴルフ等を通じて極めて良好だ。その一方で、日本との自由貿易協定で、特に農業問題が大きな問題になるだろう。朝日新聞によるとトランプ氏は安倍氏を信頼していないと言っているが、私はそうは思わない。
 今後の課題は、ROE(交戦規定:Rule of Engagement)だろう。有事の時に、対応できるかどうかである。昔の話だが、菅直人元首相は、自衛隊の観閲式に臨んだ時まで、自分が国家の最高指揮官だということを知らなかった。政治家に覚悟を決めてもらうしかない。

★台湾問題:
 台湾が中国に統一されたら我々は非常に危険な状況に陥ることになる。特に潜水艦の問題だ。台湾に軍事基地を作れば自由に太平洋に出ることができる。東アジアの安全保障上、重要な問題である。この問題の対応策として、アジア地域においては、日・米・台・ASEAN諸国を含めた常設の海軍で作る救難部隊を常備軍として作るのがいいのではないだろうか。各地域で非常に役に立つと思われる。

★貿易問題:
 特に中国の対外貿易について不満を持っている。中国の周辺国は、中国と友好的ではない。ヒラリー・クリントン氏が選挙で最大の敵は彼女自身であるように、中国の最大の敵は中国共産党だ。要するに自分自身が一番問題なのである。

 今後のトランプ政権や国際情勢を見極める上で、極めて重要な論点や見解を拝聴することができた。日米同盟を更に強固にすると共に、価値観を共有するアジア諸国と連携、協力することで、当面は中国と向き合っていくことが今後もポイントとなるであろう。

講 師: ジェームスE・アワー 氏(JFSS特別顧問・米ヴァンダービルト大学名誉教授)
通 訳: 川村純彦氏(JFSS理事・元統幕学校副校長)
日 時: 平成30年9月21日(金)14:00~16:00