第119回
「中間選挙を控えた米国の現状と課題」

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長野禮子 

以下、今回のアワー氏の講演内容を簡単に記す。

・話題の『恐怖:ホワイトハウスのトランプ(Fear: Trump in the White House)』について――センセーショナル(扇情的)、完全なミスリーディング及びケイオス(混沌)と表現し、内容については極めて批判的であった。マティス国防長官・ケリー大統領首席補佐官の発言も引用され、トランプ大統領は小学生程度の理解力しかないなど、まるで馬鹿呼ばわりしていると。米国のマスメディアとトランプ氏の対立関係が本の内容を無意味に煽っていると指摘。

・トランプ大統領とオバマ前大統領との比較――オバマ氏については、2008年の大統領選挙において初の黒人大統領として大いに期待されたが、2期8年後の大統領選挙では、経済の停滞と軍事面における対策、兵員の減少や装備の老朽化に対する適切な対応が取れなかったための失望感がオバマ政権への信頼を失うことになった。このことがオバマ政権を引き継ぐクリントン候補の敗因となった。多くの米国民はトランプ大統領の誕生を喜び、特に、経済面と軍事面における政権運営は支持できるとの考えを示した。

・トランプ大統領の発言に対する「弾劾」について――弾劾訴追の権限は下院にあり、現在の下院は共和党が過半数を占めているため、弾劾訴追されることはない。しかし、今年(2018年11月6日)の中間選挙で、民主党が過半数を得れば、弾劾訴追が可能になる。上院はその訴追に基づき弾劾裁判を行い、3分の2以上の賛成により大統領を罷免できるが、上院も共和党が過半数を占めているので、今回の中間選挙では3分の1が改選となる。仮に大統領が罷免されれば、ペンス副大統領が大統領に就任することになるので、大きな状況の変化はない。

・トランプ政権の景気対策――経済成長率4%上昇。減税政策により労働者の賃金が上昇し、失業率も減少、軍事予算も増加している。2020年の大統領選挙は、共和党に対抗する民主党候補がいないことが問題。

・トランプ大統領の外交政策について――イランに対して相当厳しく対応している。イランとの核合意から離脱し対立を強めている。NATO諸国に対する防衛費の更なる拠出を求めており、現状に強い不満を示している。保護主義を進める観点から、WTOが米国を不公平に扱っているとし離脱を警告。中国の対米貿易黒字を激しく批判、過激な貿易戦争の真っ最中である。日本の安倍首相に対する信頼は篤いが、貿易政策ではヨーロッパ、カナダ、メキシコとの自由貿易協定の締結を求めており、日本に対しても2国間協定の締結を求めている。

・交戦規定(ROE)の緩和について――オバマ政権時代に設けられた交戦規定を緩和し、解除することで、現地司令官の裁量権が広がることは歓迎すべきことである。「軍事力」が弱いことは危険を招く。トランプ大統領が軍事力の強化を重視しているのは、米国を危険から回避させることである。トランプ政権は、対台湾政策を重視し、台湾を支持している。


講 師: ジェームスE・アワー 氏(JFSS特別顧問・米ヴァンダービルト大学名誉教授)
通 訳: 川村純彦氏(JFSS理事・元統幕学校副校長)
日 時: 平成30年9月21日(金)14:00~16:00