第121回
「米中間選挙後の米国の行方を読み解く」

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長野禮子 

11月6日に行われた米国の中間選挙の結果、上院は共和党が過半数を取り、下院は民主党が約30議席の差をつけて勝利した。共和党の敗因は、一言で言えばトランプ大統領に対する反発であり、特に無党派層による反発が多くの人を投票に向かわせたことにある。

・敗因理由1――トランプ政権が、オバマ・ケア(米国版医療保険制度)の廃止を目指していることである。

・敗因理由2――移民政策である。TV報道などで、国境警備員等による不法移民の家族に対する(親子を引き離して拘留するなどの)衝撃的な場面を目にし、多くの人々の反発を買った。

・敗因理由3――トランプ大統領の減税政策は、法人税の大幅カットと個人所得税の減税に向けた制度の簡素化が中心だが、これは、企業や富裕層には有利な反面、中間層や低所得者には直接の恩恵がない。

・敗因理由4――トランプ大統領の人種差別主義に対する対応、つまり白人至上主義団体(KKK:クー・クラックス・クラン)と反対者との衝突で、KKKを一方的に非難しない発言や、同団体やネオナチ集団がトランプ大統領の誕生を歓迎したり、一方、中南米やアフリカ諸国をシットホール(肥溜め)と発言した記事が影響した。

・下院の民主党勝利について――田舎対都会の戦いになっていた。結果、下院で民主党が多数を占めたため、下院の各委員会の委員長は民主党議員が任命されることになる。各委員会は、トランプ政権の閣僚、高官等を証人として呼び出し、各政策の是非を厳しく問い質すことになる可能性が高まる。トランプ大統領はこの状況を恐れている。

・上下両院の今後――議会はこれまで共和党が上下両院の多数を占めていたため、トランプ大統領の政策を表立って反対することはなかったが、民主主義の根幹である三権分立が機能していなかった。下院の民主党勝利により、今後はその機能が働くことになる。しかし、日本の野党のように「何でも反対」では国の機能が停滞し、無党派層を含め支持を失うことでもある。ここが民主党の頭痛のタネとなっている。

・トランプ大統領の弾劾について――手続き上、弾劾は困難。ロシア疑惑の捜査においても確証的な証拠が出ない限り、弾劾には積極的ではないと考えられる。

・日米同盟について――米国の東アジア政策の中で超党派的な支持を得ており、中間選挙の結果に関わらず、今後も十分に機能して行く。

・中朝露はどう見ているか――官僚制度は安定しており強力である。特に国防総省は時々の政権に影響されず安定的に機能している。軍、特に海兵隊の政治的影響力は強いものがある。他方、韓国の文大統領の北朝鮮政策について懸念している。最悪のシナリオは、駐韓米軍が十分に機能できない状況が生じることである。

・対中政策について――ペンス副大統領の講演に示されるように、貿易不均衡、知的財産の窃盗、南シナ海の軍事化等に対して厳しく対応している。日本や欧州に適用するのは正しくない。貿易問題では、米国の大豆農家などのようにその収益を輸出に依存している面もあることから、その点の配慮も必要である。

・日米同盟の課題――安倍政権による集団的自衛権の行使容認は米国で大変歓迎されている。日米は真の同盟関係に進展した。日本側の課題は、防衛予算の増加であり、3%の増額が理想的である。中朝の脅威に対する抑止には、陸上イージスやサードの早期導入が必要である。日本は、自衛の先制攻撃は憲法上問題ない。日本が独自に反撃能力を持てば抑止力が働き、北朝鮮からの攻撃のリスクは減る。中国に対する抑止力を高める観点からも、反撃能力は必要であり、特に地対艦の射程の延長や空対地の能力が重要である。

・F-2後継機について――F-2戦闘機は、2030年から耐用年数を超えるため、その後継機の導入方法が検討されてきたが、日本政府は共同開発も含めた新規開発を行うことに決定したとの報道があった。メア氏は、後継機の導入に当たって、次の点を強調した。
①高コストの抑制や防衛産業の技術力向上を考慮して、国内市場(防衛省)に限らず、戦略的に国際市場に出すことを考えるべき。中国は第5世代戦闘機の運用を開始した。中国の脅威に対処するためには早期導入が必要。更に、反撃能力、互換性等を考えれば、米国のF-22戦闘機とF-35戦闘機をベースにして日米による共同開発を行うべき。


講 師: ケビン・メア 氏(JFSS特別顧問・元米国務省日本部長)
日 時: 平成30年11月15日(木)14:00~16:00