第128回
「現在の東アジア情勢」

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長野禮子 

 令和の御代に入り1ヵ月が過ぎようとしているこの日、米国からJFSS特別顧問のアワー氏をお招きしての「Chat」である。主な内容を下記に記す。

1.パワー・ポリティクス(武力による外交政治)における安定性と不安定性
 安定性は、力のバランスが良いときに生じる。ソ連崩壊に伴い、米ソ間における冷戦構造も崩れた。その後ロシア連邦が創設されたが、国内は混乱し、経済力は弱まり、ソ連に属していた国々は次々に独立した。東側諸国と呼ばれたソ連の衛星国もその支配から離れた。そのため軍事力は縮小し、超大国の地位を失った。冷戦の終結により、米国が世界の超大国として存在し、国際社会の安定が継続した。
 不安定性は、強力な軍事力を持っていなかった国が、国力が増すに従い軍事力を拡大し、世界覇権を画策することによって、国際社会に不安定な状況を引き起こす。冷戦期のソ連や今日の中国の台頭などがそれである。

2.中国への好意と経済的利益で生じた大きな間違い
 米国等は、中国が国際社会の一員として既存の国際ルールや国際秩序に従って発展するものと考え、責任あるステークホルダー(利害関係者)になることを期待した。特に米国は、中国のWTO(世界貿易機構)加盟を支持し、自由貿易、関税の低減等の国際通商ルールの枠組みの中で、中国の貿易を推進するために自国の市場を開放し、物品や情報の自由な取引を認めた。
 しかし、中国は国際ルール等を無視して、米国をはじめ先進国から技術や情報の移転を強要し、知的財産権を窃取することを繰り返した。特に、それにより取得したインターネットテクノロジーや最先端技術を利用して、米国等に頻繁にサイバー攻撃を仕掛けている。中国は、米国に比肩する大国になることを望み、パワー・ポリティクスにより覇権・拡張政策を進め、国際社会における支配力を推し進めている。更に、中国は、既存の国際秩序を弱体化させ、中国を中心とする国際社会の構築を目論んでいる。

3.中国は5つの「核心的利益」を決して諦めることはない
(1)台湾の平和的再統一:目的達成のためには軍事力を含むあらゆる選択肢を否定していない。
(2)チベット自治区:独立や反中を唱える多くのチベット人に対する民族弾圧を強行。中国・チベット間の鉄道敷設後からは、大量の中国人が流入、街の至る所に中国の警備員が立ち監視している。
(3)東トルクメニスタン:ウイグル人に対する激しい民族弾圧が行われ、収容所内では厳しい思想改造が行われている。
(4)南シナ海の実効支配:南沙諸島領域に人工島を建設し、軍事基地化した。その行為は、南沙諸島等の領有権を争う周辺諸国の脅威になっており、公海である南シナ海を航行する他国の船舶に対して不安を与えている。
(5)尖閣諸島:特に日本が尖閣諸島を国有化した後の接続水域及び領海侵入の頻度は高まる一方である。日米安保条約に基づく尖閣諸島防衛については、有事の対応には自衛隊が出撃し、米軍はそれを支援するのが好ましい。日本の無人島防衛のために米兵に犠牲を強いることについては、米国民の支持は得られ難い。

4.中国の政治戦
(1)台湾の孤立化:一つの中国という立場から、台湾は中国の不可分の領土であり、統一されるべきであると考えている。中国は、国際社会における台湾の孤立化を謀り、あらゆる政治工作を行っている。
(2)日米同盟の弱体化:日米間の強い絆に動揺を与え、両国の密接な関係を切り離すことを目的として、日米それぞれに対し政治的な働きかけを実施している。
(3)沖縄などでの政治的策動(核兵器に対する恐怖心の植え付け、日米同盟の信頼性を破壊):沖縄等において反米的な活動家を支援。沖縄の地元新聞が反米的な論調であるのに対し、辺野古の地元民がキャンプシュワブ(辺野古にある海兵隊基地)の米兵を友人であると言っている。そのほか、原子力の恐怖を煽ったり、米国の同盟国としての信頼を損ねたりすることも目的にしている。

5.日・米・台による中国の政治戦争に対抗するための4つの手段
(1)TTTST(transit the Taiwan Strait together)の共同訓練を実行する。海上自衛隊及び米海軍の艦艇が共同で台湾海峡を通過する(台湾海峡は公海であり、通過することに中国の許可は不要)。
(2)日米首脳は、台湾を国家として待遇する。
(3)米軍と自衛隊は合同司令部を設立する。
(4)石油、ガス、原子力に関するエネルギー戦略を打ち立てる。

講 師: ジェームス E・アワー 氏(JFSS特別顧問・米ヴァンダービルト大学名誉教授)
日 時: 令和元年5月31日(金)14:00~16:00