第133回
「防衛行政の課題」

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長野禮子 

 今回の「Chat」は、2019年7月に退官した前防衛装備庁長官の深山延暁氏をお招きし、日本を取り巻く安全保障環境の変化と日本が直面する安全保障上の課題について、特に防衛装備行政の観点からお伺いした。

1、防衛大綱・中期防衛力整備計画(31中期防)の概要
 現在、日本を取り巻く安全保障環境は主要国の影響力の相対的な変化に伴い、中国・ロシアの影響力の拡大等、パワーバランスの変化が加速化・複雑化している。また、尖閣諸島周辺で活動する中国漁船や2014年のクリミア危機のように、グレーゾーンの事態が長期継続する可能性が生じている。更に、各国は戦争のありようを根底から変える最先端技術を活用した「ゲームチェンジャー」となり得る兵器の開発を推進しており、将来の戦闘様相は予見困難になりつつある。
 このような状況の中で日本は、領域横断的に有効に機能する防衛力として、「多次元統合防衛力」の構築を防衛計画の大綱において定めている。陸海空の既存の領域に加え、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域が焦点になる。これらの領域における日本の防衛力の整備は諸外国より遅れており、一層の強化が求められる。

2、日本の防衛装備政策
 日本は、①技術的優越の確保、②防衛装備品の効率的な取得、③防衛産業の競争力強化が必要である。技術的優越の確保では、民生技術の取り込みや諸外国との防衛装備・技術協力の推進が挙げられる。
 防衛省は、日本の防衛に必要な技術に関する考え方を研究開発ビジョンとして公表しており、民間企業の予見可能性を向上させ、先行投資が可能になるようにしている。また、防衛分野での将来における研究開発に資する基礎研究を公募する安全保障技術研究推進制度を進めているが、公募に応じる研究機関が限定的で大学からの応募は少ない。
 防衛装備品の効率的な取得では、防衛装備品の高額化に伴い、装備調達を最適化するためライフサイクル(構想-研究開発-量産配備-運用維持-廃棄)を通じて管理している。構想段階からニーズを詰めて代替案を分析し、当初のコストから変動があれば見直す。
 防衛産業の競争力強化では、2014年に制定された防衛装備移転三原則により、平和貢献・国際協力の推進や日本の安全保障に資する場合は防衛装備品の移転を認め得ることになっており、「官民防衛産業フォーラム」のような官民一体で防衛装備・技術協力を促進する取組を進めている。防衛装備品の技術基盤の他国への依存はリスクがある。また、防衛装備品の国際共同開発・生産等では情報保全の問題も重要になる。

3、対外有償軍事援助(FMS)
 米国からの防衛装備品の購入は、米国政府が窓口になる対外有償軍事援助の方式を採る。対外有償軍事援助は分割して支払いを行うが、購入費は当初予算から増加する傾向があり、その予算上の圧迫が国内の防衛産業からの調達にも影響を与える。
 日本では、米国国内での調達時期に合わせてまとめて発注したり、大幅な価格の高騰が生じれば購入対象を見直したりするなど、購入費を下げる工夫をしている。

4、おわりに
 諸外国が「ゲームチェンジャー」となり得る新兵器の開発に力を入れ、日本周辺の安全保障環境が変化する中、日本は民生技術を含めた新たな技術を防衛装備品の研究開発に取り込み、厳しい予算の中で如何に国内の防衛産業を強化・維持するかが今後の課題である。日本は防衛装備品の取得を海外の防衛産業の生産のみに頼らず、自主性をもって生産できる体制を維持することが、日本の安全と繁栄を維持するために必要である。

講 師: 深山 延暁 氏(前防衛装備庁長官)
日 時: 令和元年9月26日(木)15:00~17:00