現在フランスではイスラミゼーション、そしてイスラム系市民の過激化が問題視されている。特にそれに大きく関わるホームグロウンテロ(国内で生まれ育った者がイスラム過激派の思想に影響を受け自国で起こすテロ)や、ジハード(聖戦)のためにシリアへ出向く若者の増加は、近年ヴァルス仏内務大臣の懸念材料となっている。
■ホームグロウンテロのリスク
ここ数年に起こったフランスにおけるホームグロウンテロと言えば、人々の記憶に深く刻まれている事件として、2012年3月に起きたミディ・ピレネー連続襲撃事件(モハメッド・メラMohammed Merah事件)が挙げられるだろう。
この事件は、犯人モハメッド・メラが、合計7人(軍人3人とユダヤ教系の学校の教師1人、生徒3人)を殺した末、アパートに30時間閉じこもり、その後フランス国家警察特別介入部隊(RAID)との交渉後、銃撃戦の結果、死亡に至った事件である。事件後にはアルカイダ系とされるグループ“ジュンド・アル・ハリーファ”(Jund al-Khilafah)が犯行声明を表明した。
モハメッド・メラの犯人像についてはメディアにおいても多数の報道がされ、多くの人々がホームグロウンテロの恐怖に怯えることになった。アルジェリア人の両親を持つ23才のフランス人であるモハメッド・メラの行動、そして人物像については、専門家たちが多数の分析をしている。
トゥールーズ(Toulouse)のシテ(cite:シテとは低家賃住宅の団地が集まった場所を指す。ゲットー化問題で注目されている。)で育ったモハメッド・メラは、2006年からいくつかの軽犯罪を起こし、前科があった。その後2009年8月に刑務所から出所した時点で“過激派サラフィスト”に加わったとされ、情報機関にマークされていたという。兄(アブデルカデールAbdelkader、共犯として起訴されている)や他の家族からの影響もあり、エジプトへアラビア語を習いに行ったりもしていた。2011年の国内情報中央局(DCRI)のレポートによると、「過激派イスラミスト」としてのメラの人物像は、この時点で間違いなく明らかになっている。
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