世界最古かつ最大の民主主義国家であるアメリカ合衆国とインドが、冷戦時代の殆どの期間、関係が疎遠であったことは皮肉である。これは、アジアでもっとも古い民主主義国家である日本とインドの関係にも当てはまる。インドは冷戦時代、いずれにも属さない非同盟国を名乗ってはいたものの、1971年に印ソ平和友好協力条約に署名して以来、旧ソビエト連邦との関係を強化するに至った。しかし、冷戦の終焉と旧ソ連の解体によって、インドはアメリカや日本といった国々に近付く以外になくなった。同時にこの頃、インドは経済の自由化を推し進め、東アジアや東南アジア諸国との歴史的関係を見直すため、所謂「ルック・イースト政策(その後、アクト・イースト政策と名称を変更)」を推進した。
印米関係の見直し
1962年に発生した印中国境紛争において、アメリカはインドに対する軍事的支援を行いはしたが、印米関係が実際に改善されたのは、冷戦終結後のことであった。両国の関係を阻む大きな要因は、アメリカとパキスタン、そしてインドと旧ソ連それぞれの緊密な関係であった。1990年代に両国関係は改善したものの、1998年にインドが核実験を行ったことで再び停滞することとなった。しかし一方で、この核実験こそがその後の両国関係を持ち直すきっかけにもなったのはまた皮肉でもある。
2000年、当時のビル・クリントン米大統領によるインドへの公式訪問が、二国間関係の新しい幕開けとなった。そこでの民生用原子力技術協力に関する画期的な合意が両国関係の好転に繋がった。インドは核不拡散条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)の加盟国ではなかったものの、アメリカはインドを原子力供給国グループ(NSG)の規制対象から例外的に外すことを後押ししたのであった*1。
*1 April 2005, Arms Control Association, The Nuclear Non-proliferation Treaty (NPT) at a Glance, http://www.armscontrol.org/factsheets/nptfact accessed on August 22, 2015
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