2 ミャンマーの戦略的重要性
インド・太平洋地域におけるミャンマーの戦略的重要性を強調する論調は、枚挙に暇がない。例えば、カーネーギー国際平和財団(Carnegie Endowment for International Peace) の日本研究部長を務め、日米関係に詳しいショフ(James L. Schoff) 上級研究員によれば、「日本にとって、ミャンマーは地政学的、戦略的、そして経済的に重要である」*24と分析している。また、中国については、アジア経済研究所の工藤年博主任研究員によれば、「中国はミャンマーに対してエネルギー調達・安全保障、インド洋へのアクセス、国際貿易・国境地域の治安の三つの戦略的利益がある」*25と分析している。更に、全米アジア研究所(The National Bureau of Asian Research: NBR)がまとめた報告書によれば、米国はミャンマーに戦略的な国益があるとし*26、中国は天然資源を獲得するためのアクセスを確保するために、ミャンマーにおいて支配的な役割を果たすことを目的としており、そのためにまずミャンマーの経済的発展に寄与する機会を模索していると分析している*27。また、インドについても、地域秩序の安定や経済的発展、南西アジアにおける関係構築といった様々な国益をミャンマーに有していると分析している*28。このようにミャンマーの戦略的重要性は、インド・太平洋地域における安全保障と経済的発展に大きな影響を与えることにある。
*24 James L. Schoff, “What Myanmar means for the U.S.-Japan Alliance,” Carnegie Endowment for International Peace,September 2014, p. 6.
*25 工藤年博「中国の対ミャンマー政策:課題と展望」日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所政策提言研究、2012年8月20日。http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Seisaku/120802_kudo.html.
*26 Catharin Dalpino, “Second Chance: Prospects for U.S.-Myanmar Relations,”Mely Caballero-Anthony et al., eds., Myanmar’s Growing Regional Role, The National Bureau of Asian Research (NBR)Special Report #45, March 2014, p. 34.
*27 Abraham M. Denmark, “Myanmar and Asiaʼs New Great Game,”Mely Caballero-Anthony et al., eds.,Myanmar’s Growing Regional Role, The National Bureau of Asian Research (NBR)Special Report #45, March 2014, p. 78.
*28 Ibid., p. 81.
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