【特集】日韓に横たわる諸問題を再考する
単なる教科書問題ではない:継続する「歴史戦」の本質


ジャーナリスト マイケル・ヨン(写真左)
ウィスコンシン大学大学院歴史学博士候補 ジェイソン・モーガン(写真右)

米教科書における慰安婦を巡る事実誤認
 2015年1月、教科書問題への対応を準備するため、教授グループがアジア研究協会(AAS)の開催期間中に会合した。
 ハワイ大学のハーバート・ジーグラー教授と故ジェリー・ベントレー教授は、米国の著名な歴史家であるハワード・ジン氏が書いたような世界史の教科書(訳注:Traditions & Encounters: A Global Perspective on the Past)を執筆した。しかし、日本領事館員が出版社のマグロウヒルと接触し、慰安婦に関して記述したいくつかのパラグラフの中に8箇所の事実誤認があると指摘したので、ジーグラー教授らは態度を一変させた。
 ジーグラー教授と19人の研究者は、指摘された上記箇所を修正する代わりに反撃し、安倍晋三首相が学問の自由を侵害していると糾弾した。一連の馬鹿げた出来事は国際ニュースとなった。
 コネティカット大学のアレクシス・ダデン教授とジョージタウン大学のジョーダン・サンド教授は、世界的な知名度を利用して徐々に攻撃を強め、2015年5月初旬には187名の署名を添えた抗議文「日本の歴史家を支持する声明」を発表した。同声明は、日本の政治に影響を与え、米国の最も信頼する同盟国の一つで民主的に選出されたリーダーを中傷するように作成されたのであった。署名数は、最終的には500名を超えた。
 米国学術界の保守的な不寛容ぶりには失望させられた。AASは政治的中立性を訴えていたにも拘らず、何百人もの同協会会員によるあからさまで継続的な政治活動がこの訴えを怪しげなものにしている。尚、この中には、AASの主要刊行物『日本研究ジャーナル』の編集者であるジョーダン・サンド氏もいる。
 米国の研究者が開始した一斉攻撃とそれに続く反日攻撃を受けて、多くの公正な日米の研究者は、ジーグラー教授とベントレー教授の教科書がプロパガンダ塗れであることを示すために、歴史的な記録に依拠して対応した。
 二人の教科書に見られる多くの誤認は、容易に反駁が可能である。ほんの少し歴史的な記録を読んだだけでも「20万人の慰安婦がいた」、「彼女たちは皆性的な奴隷である」、「主として朝鮮人であった」および「戦場の部隊への天皇からの贈り物だった」といった悪意のある嘘には何の証拠もない―本当にゼロである―ということを公正な人物を納得させるには十分である。これらは皆フィクションである。
 こうしたフィクションに限らず、慰安婦の地位やそれを調整した日本軍の役割に関する進行中の研究は、日本、韓国、米国の学者が広く共有する一連の確固たる事実をもたらした。一部の例外を除き、慰安婦―その多くは日本人であり朝鮮人ではない―は性的奴隷ではない。ましてや強制連行されてもいなかった。彼女達の多くは貧しく、無学の若い女性であり、進んで志願し、さもなくば民間の斡旋業者や経営者に騙されて、軍の慰安所で働くこととなった。しばしば彼女たちの家族には前もって報酬が支払われていた。
 彼女たちの状況は、世界中の駐屯地の売春宿のそれと何ら違いはない。もし違いがあるとすれば、日本の皇軍を相手にしていた慰安婦は、歴史上に現れた戦時中の娼婦と比べてはるかに丁寧に扱われていたということである。

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