3月11日の大地震ならびに大津波でお亡くなりになった方々のご冥福を
お祈りするとともに、被災者の方々に心からの御見舞いを申し上げ、
一日も早い復興をお祈り申し上げます。


台湾からの恩を仇で返す日本政府
政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所助教
 丹羽 文生
 東日本大震災から5ヵ月が過ぎた。この間、130を超える国々から多くの義援金が届けられたが、中でも親日国・台湾に至っては、世界最高の総額170億円を超える義援金が集められた。しかも、その9割が民間からの寄付というから驚きである。筆者の友人でもある28歳の台湾人の大学院生は、学費を稼ぐために一生懸命にアルバイトをしながら貯めた貯金を全て募金に回してくれた。
 台湾の物価は日本の3分の1程度で、台湾人の平均月収は13万円前後。面積は九州ほどで、人口は日本の凡そ5分の1である。
 「小さな国の大きな愛」に心打たれた日本人も多いだろう。台北駐日経済文化代表処には、感謝のメールや電話が絶えないという。
 3・11から1ヵ月後の4月11日、日本政府は、国際英字紙「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」と米英仏中韓露の1紙ずつの計7紙に、菅直人名で「日本国民は世界中の友人が示してくれた『絆』に深く感謝するとともに、この苦難の中で『まさかの友は真の友』という言葉を強く感じる」という内容の感謝広告を掲載した。
 ところが、日本政府は義援金額が最も多い台湾の新聞紙上には感謝広告を掲載しなかったのである。台湾の恩を仇で返すような許し難い話だ。
 菅は6月14日の参院東日本大震災復興特別委員会において、「李登輝さんは私の尊敬する人物の1人です」と発言したが、それが本当ならば、台湾に対しても、他国と同じように感謝の気持ちを伝えるべきではないだろうか。
 それだけではない。事も有ろうに筆者が以前、勤務していた栃木県宇都宮市にある作新学院大学では、台湾人留学生への奨学金に関する、こんな事件が起きた。
 その奨学金とは、文部科学省が、被災地の大学に在籍し3・11で経済的困窮に陥った私費留学生の中から、短期の国費留学生として150名を選抜し、一時金を支給する「国費外国人留学生緊急援助採用」というもので、4月以降に緊急募集が行われた。そこで、作新学院大学で学ぶ台湾人留学生3名が、この奨学金を申請しようとしたところ、大学側が、文部科学省の受給条件(国籍:日本政府と国交のある国のものを有すること)に従い、日本は台湾を国として承認していないため奨学金を受ける資格はないと言って拒否したというのである。
 台湾人留学生を対象外とした文部科学省には強い憤りを感じるが、なぜ、作新学院大学は、このような対応しかできなかったのか。大学独自で何らかの奨学金制度を設ける、あるいは留学生に告知する前に、理事長(前衆院議員)を通じて文部科学省へ抗議することもできたはずである。
 今のような対応を日本政府が続けていれば、台湾の日本への不信感は徐々に強まっていくであろう。台湾は世界一の親日国で知られるが、そうあり続けるか否かは全て日本政府・日本人の態度で決まるのである。

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