大阪のダブル選挙の結果は“野田丸”の船底を突き上げるほどの衝撃を与えた。
橋下氏は3年9か月前、府知事になると共に28のハコモノを整理し、職員給与、退職金5%カットまで切り込んだ。これに比べて民主党政権は大公約とは裏腹に、天下り法人一つ整理できず、また国家公務員給与の7.8%削減法案も成立させられなかった。
一方で年金、税の一体改革を強引に推し進めている。消費税増税の法律の実施は2010年代半ばとされており、「国民に信を問う」のはその実施前だという。しかし国民世論は「増税法案が成立する以前に総選挙を行うべきだ」との意見が最大多数を占めるようになった。しかし財務省は野田氏を捨石にしても、増税法案を作っておきたい一心で固まっている。
身を削ることを約束していた民主党は、身を削る前に公約にもなかった増税をするという。小沢一郎氏も最近「やりくりをして冗費をあぶり出し、必要性の薄れた事業を中止し、天下り法人を潰すことをやるべきだった」と述べて反野田の構えだ。
なぜできないか理屈を並べる前に大阪の大政変である。橋下氏が公務員の退職金カットまでやってのけたのは民主党にとっては衝撃だった。「何もやらずにひたすら増税」という野田政権の姿が浮き彫りになってしまった。また橋下氏は政治の基本問題から着手する政治家だということも国民の目に強く印象づけた。
大阪市長が260万人を1人で見る統治システムには問題がある。面倒を見切れないうえに府との間に大学、浄水場と誰も否定できない二重行政、二元行政がある。橋下氏は「都構想は既存の体制を変える話」だという。実現に当たっては府、市両議会の賛成と住民投票という難関をくぐった上で国会での地方自治法の改正となる。しかし府民も市民も都構想に賛成の意を表している。
国政が取り上げるのは当然だが、サボれば「大阪維新の会」は国政に議員を送るという。新潟洲構想、中京都構想など地方自治組織の変更の叫びはこれまで何十回もあった。それが実を結ばなかったのは、地方に国会を動かす力がなかったからだ。大阪府を中心に関西圏には国会議員が70余人いる。維新の会は40〜50人の国会議員を送り出すことができるだろう。民主が政権を守ろうが、自民が奪還しようが、維新の会がキャスティングボードを握ることになるだろう。
民主も自民も政権政党は「そんなことになる前に都構想を認めよう」となるだろうが、その際、地方分権、地域主権の問題が俎上に上がるはずだ。
橋下市長は教育基本条例を制定する意図について、大阪の再建は「教育から始まる」として私立高校の授業料無料化(所得610万円以下の家庭の生徒)、各学校別の全国学力テストの公表などを始めた。これによって、教育現場はかなり活性化し出した。同条例は国の教育関連法の定めや解釈を問い直すだろう。
(12月14日付静岡新聞『論壇』より転載)
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