理事・政治評論家
 屋山太郎



  

 内閣改造
―原理主義者岡田氏登用が功を奏するか―
 
 13日の野田内閣の改造について、朝日・読売・日経の各紙が世論調査を行っているが、岡田克也氏を副総理、社会保障・税の一体改革担当相に当てたことに50%以上の人が評価している。岡田氏はこの他行政改革、公務員制度改革も担当しており、岡田氏の力量と実績が今後の野田政権の評価を決めることになりそうだ。 
 与論調査を見て気付くことは、野田政権発足当時は、消費増税の引き上げについては約50%が賛成で、反対の43%を上回っていた(日経)。それが現在は反対が56%、賛成が36%と逆転している。消費増税案を3月までに国会に出すことについても53%が「支持しない」と云う。 
 国民は増税やむなしと認識しているのだが、その前に徹底した行革をやることが前提であって、野田内閣は行革の実績を何も残していない点が不満なのだと云える。 
 岡田氏への期待は、野田首相がサボってきた行革、特別会計の整理、独立行政法人の整理などをやってくれるのではないかという思いからだろう。岡田氏は106の独法の4割削減、特別会計の半減などを打ち出している。しかしそれを成功させるためには古手の官僚OBを処遇するルールを確立しなければ無理だ。その決め手が国家公務員制度の改革なのだが、これには財務官僚はじめほぼ全官僚が反対している。財務省路線に乗っている民主党内閣ではこの作業は無理だとみていたが、原理主義者の岡田氏なら期待できるのではないか。 
 改造後の野田首相の記者会見で、一体改革にかける野田首相の強い思いは感じられた。しかし思いが強ければ実現できるとは限らない。思いを庶民の心に届けるにはそれに相応しいパフォーマンスが必要だ。大阪の橋下徹氏は「大阪都」にかける思いをあらゆるチャンスを利用し、反対派を潰す勢いで突き進んだ。野田氏は「一人のスター仰ぎ見る政治はよくない」(14日テレビ東京)と評しているが、民主主義社会では、野田式のだんまり戦術は通用しない。ぶら下がりでも何でも利用して自らの信念を国民の胸に届ける必要がある。 
 一体改革を何カ月も聞いてきたが、増税を段階的にやれば、社会保障財源がどれだけ助かり、そのレベルがどうなるのか、皆目わからない。増税をやる前提、つまり無駄省きもなし。将来像も語らず、「オレについてこい」というのは民主主義ではない。野田氏は自らの政治手法を磨く必要がある。 
 内閣支持率が35%前後に低迷しているのに、自民党の政党支持率はいずれの調査も民主党を1、2%下回って17%程度である。これは異常な現象と云わねばならない。なぜ民主党への失望票が自民党に回っていかないのか。 
 野田首相が国民的な議論、合意を目指して話し合おうと呼びかけている時に、一体改革を政局に利用しようというケチな料簡が丸見えだからだ。自民党の谷垣禎一総裁は2010年の総選挙で「責任ある野党として10%の消費増税やむなし」と言っていたのである。
                                                                                                                                     (1月18日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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