民主・自民両党による“話し合い解散”の可能性が強まってきた。時期は6月21日の会期末を待たず、3月に出される消費増税と一体改革の関連法案の審議経過を見ながら決まることになるが、その時期は早まるだろう。
野田首相と谷垣自民党総裁の“密談”について両者とも否定を続けているが、9月に代表・総裁選がある両者が早い解散を望んでいることは間違いない。
野田首相が我が身の安泰よりも、消費増税に不退転の決意で臨んでいることは疑いない。しかし小沢一郎元代表は「体を張って増税に反対だ」という。鳩山政権時代に幹事長を務めた小沢氏は「行革をとことんやると公約した通りにやれ。増税は約束していない」という。
まさにその通りだが、小沢氏が日本郵政の社長に元大蔵次官の斉藤次郎氏を据えて、行革や天下り根絶の出だしを挫いたのも事実だ。その小沢氏が行革を説くとはおこがましいが、本心は野田倒しの政局に持ち込もうというのだろう。こう見るのは野田を倒して「オレならこうやる」という政策が全く見えないからだ。
小沢氏は増税反対勢力をざっと100人まとめていると云われている。仮に野党が出す内閣不信任決議案にこの100人が呼応すると内閣不信任案は可決され、野田首相は解散か総辞職を選ばねばならない。小沢氏は解散を打てば民主党没落ということになるから野田氏は総辞職し、自分の出番が来ると読んでいる。小沢氏69歳、最後の出番だ。
一方の谷垣禎一自民党総裁は民主党の支持率低下の分を自民党に引き寄せられず、党内には退陣を迫る声が彭湃として起こっている。自民党の党則には総裁をリコールする条項がないため、議員総会で退陣を迫ろうという勢力が3月末に総会を開くことを執行部に約束させた。
この谷垣氏は ’10年の参院選では「責任ある野党として10%程度の消費税引き上げは容認する」と公言していた。従って野田内閣の10%引き上げ案には反対できないはずだが、「民主党は参院選の時は消費税は引上げないといった」と手続論で反対している。本気で反対といえば、自民党が政権をとった時、上げるに上げられなくなるからだ。
そこで話し合い解散をして、第1党が首相、負けた方が副首相をとり、民主・自民両党の大連立政権を組む―という思惑だ。
この大連立を野田、谷垣両氏が急ぐのは急速に台頭する第三極の動きだ。
目下、民主、自民両党の支持率は共に20%を切っている。これに対して「大阪維新の会」が国政に進出することを「期待する」層が60%を超えている。最早、維新の会は地域政党とは見られていない。加えて結党時から「行革」「公務員制度の改革」を唱え続けてきたみんなの党(渡辺喜美代表)は維新の会との連携を深めつつある。この両者が組むと第二極に迫る勢力になる。
大連立を急ぐ所以だ。
(3月7日付静岡新聞『論壇』より転載)
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