野田首相が膠着した局面の打開に打ち出した“党首会談”を自公が拒否し、政局はまたもや行き詰っている。断った谷垣禎一自民党総裁の思惑は、党首会談をきっかけに野田政権が急場をしのぐと9月の再選時期にかかり自らの再選はない、そこで闇雲に反対して野田氏が解散をしない状況に追い込むというものである。野田氏は「年金と税の一体改革」の閣議決定後「その後の政局は私の胸の中にある」と解散を思わせる発言もした。
しかし民主党は小沢グループも含めて解散は任期一杯、つまり来年の9月に近い時点で良いと思っている。また今年9月の代表改選期に野田氏の代わりに誰を立てるかの見通しも立っていない。ただ小沢側候補と他候補の一騎打ちはないだろう。小沢氏はもう一回勝負したい意向のようだが、側近を固めるのに精一杯、その政局転換への戦略は“増税反対”だけで先が見えない。
自民党は石原伸晃幹事長がひそかに谷垣氏との交代を望んでいるが、森喜朗氏や伊吹文明氏ら派閥を自民党の源泉と見ている人達は町村信孝氏らを推している。しかし党内はこれまでの派閥の長の盥廻しこそ不人気の原因で、今こそ旧弊を一掃すべきだとの気運が台頭している。
石原氏は次の選挙用の公約を作っているが、TPPに参加反対など守旧派の発想の域を出ていない。そこで浮上しているのが官僚内閣制改革を揚げ、道半ばで病に倒れた安倍晋三氏だ。安倍氏の潰瘍性大腸炎という難病は回復薬が出てきて完治するようになった。復帰を意識して、安倍氏はテレビ、新聞など露出を多くしている。憲法改正問題、日米外交、官僚制の改革についての見解は極めて明快だ。谷垣氏が9月の総裁選を迎えれば、再選することはあり得ないだろう。
各大手紙やNHKの世論調査では野田内閣の支持率は、一時底を打ったに見えたが、再び下り始めている。かといって自民党が増えたわけではない。新しい第三極に期待する層が徐々に増えている。
まだ国会に議席を持つ政党になっていないから、政党支持率に出てこないが、第三極という以上、既存政党ではないということだ。とすれば橋下徹氏率いる「大阪維新の会」に期待しているということになる。
近畿圏だけで衆院議席は73あるが、今のところ大阪、和歌山、奈良、滋賀の各県では維新支持者が増え続け、当地出身の大物政治家といえども戦々兢々だ。8日投開票した大阪府茨木市長選では民主、共産の支持を受けた本命の40代の候補や2位になった女性候補を制して、67歳の維新の会の元市議が勝った。大阪府だけに限れば19の衆院国会議員のうち17は獲得すると見られている。
みんなの党も30議席は獲るだろう。維新・みんながキャスティングボートを握る事態になれば、第一党である自民党に最も相応しい総裁は安倍晋三氏だろう。憲法改正、道州制、官僚制改革で一致する。
(4月11日付静岡新聞『論壇』より転載)
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