次期総選挙で一大勢力に発展するかとも見られた石原(石原慎太郎都知事)新党がストンと墜落した感がある。たちあがれ日本の平沼赳夫代表は「国家経営志士議員連盟」を発足させ各党から万遍なく人を集めた。これに亀井静香前国民新党代表が乗って、石原氏を党首に担ぎ、西の大阪維新の会と呼応するというのが、新党構想だった。石原氏は「そういう大新党ができてオレを総理に担ぐという話なら乗っても良い」と思っていたふしがある。
政界に強烈な旋風を巻き起こした橋下徹大阪市長と石原慎太郎氏は殊のほか馬が合う。合う理由は「この国の統治機構を変えないと潰れる」という認識で一致しているからだ。中央政界では30年来、中央集権から地方分権(地域主権)に統治機構を変えるべきだとの考え方はあったが、地方の首長をやってみると「地方の活力が全部殺される」との想いを抱くらしい。そこで石原氏が音頭をとって愛知の大村知事、橋下氏とで首長連合を作ろうというのが、この3人の原点だった。
一方、亀井氏は民主でも自民でもない第三極の出現を構想していた。昨年来、合う仲間に「石原新党」構想を説きまくっていた。亀井氏の政権構想は50〜60人規模がまとまってキャスティングボートを握る。その際「石原」の名前がものを言って与党の中の少数党でも首相が狙えるというものである。
亀井氏は平沼赳夫氏にも話を持ちかけ、あわよくば100人もの世帯を作りあげられると妄想していた。何せ亀井氏の構想は根拠薄弱なのに、日に日に話が大きくなる癖がある。
亀井氏の最大の弱点は、一度グループができれば、全員が親分の言うことを聞くものと思い込んでいることだ。昔の自民党ではあり得たが、今ではカネを貰っているわけではないから、考え方が違えばすぐに離れる。
まとめ役であるはずの亀井氏は景気対策と言えば50兆円もの公共投資をしろとか、TPPには反対だとか、郵政は昔の方が良いとか、考えることがかつての自民党守旧派そのものなのである。最近、国民新党が分裂してしまったのも、亀井氏の独断専行、独善にはついていけないという人達が多数派になったからだ。覆水は盆には返らないだろう。
亀井氏は自民党の派閥を抱えて以来、飛び出しては分裂、国民新党で与党になったと思ったら分裂。この軌跡を見ると亀井氏は人をまとめることには向いていない。しかし本人にその自覚はなく、野田首相に「大連立、救国内閣をつくれ」と進言するなど、リーダー気取りなのである。
最近の石原氏の情報は亀井氏の情報が多くを占め、石原氏も“その気”になっていたようだ。そのためには米国に“反米石原”と認識されているのを払拭しなければならないと、ワシントン行きを決めた。ところが集まるのは20人程度と聞いて「白紙に戻す」と怒った。橋下氏もみんなの党も乗ってこないのだ。
(4月18日付静岡新聞『論壇』より転載)
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