民主、自民、公明、みんな、国民新の5党は6日、「大阪都」構想の実現に向けた法案の修正案に合意した。今国会に共同提案し早期成立を目指すという。政令市と隣接する市町村で構成される人口200万人以上のエリアでは、市町村を廃止して「特別区」に再編できるようになる。この法案は橋下徹大阪市長が進める改革には不可欠だが、5党が官僚を排除してまとめて作成したことに大きな意味がある。
橋下氏の思惑はこの「特別区」設置をテコに地域主権を確立するというもの。これは地方分の財源要求と必然的に国の出先機関の廃止に繋がってくる。
地方分権はもう30年も国の地方分権推進委員会といった類の審議会で議論してきた。出てきた答申だけ積み上げたら、優に1メートルにも達するだろう。いくら立派な答申を書いても中央官僚は難クセをつけるだけで、決して実行に着手しなかった。地方分権の小さな問題でも具体化するとなると、現行の中央集権体制がぐらつくもとになるからだ。
いま国家公務員は自衛隊を除いて30万人である。このうち22万人が地方整備局、農政局といった国の出先機関、県、目ぼしい政令市に配置され、霞が関に残る司令塔8万人の手足となって動いている。「国の出先機関の原則廃止」は現民主党政権も閣議決定しているが、“財務相内閣”と言われるだけあって、全く手が付けられていない。
以上の出先機関の強力権限を裏付けているのが地方交付税交付金である。現在、国の収入は6で支出は4。地方は収入が4で支出が6。地方の支出に足りない分は2だが、この分を地方交付税として国から配分して貰う。配分に当たって地方は陳情を繰り返し、中央の下僕のようになってしまう。かつては中央の裁量が働いたから、官僚OBを知事に迎えて、県議があげて応援した。知事の売りも「中央とのパイプの太さ」だった。
橋下氏は維新八策の中で@消費税の地方税化 A地方交付税の廃止――を打ち出した。地方の財源を消費税で賄うとなると、東京、大阪、名古屋といった大都市の財政は有利になるから、道州ごとの財源再配分が必要になるだろう。また消費税を地方税化すると年金財源はどうするのかという問題が残る。
いづれにしてもこれまでなら、大阪都構想や消費税の地方税化は話題になっただけでも、中央官僚から潰されたネタだ。その危険な話題がまかり通るようになったのは、各党が維新の会の力量を侮れないからだ。
近畿地方の衆院議席だけでも73ある。橋下氏のこれまでの勝ちっぷりからすると50議席は固い。みんなの党と合わせて100議席取るとすると、自民200、民主100となった場合に完全にキャスティングボートを握るだろう。維新、みんなの強いところは業界団体の支持がないということだ。逆にいうと官僚機構を全く恐れる必要がないことで、こういう勢力でないと統治機構は変えられない。
(7月18日付静岡新聞『論壇』より転載)
|