竹島・尖閣の領有権をめぐる中韓の蛮行
―歴史的経緯と国際法に則り従来の穏便外交のツケを解決せよ―

理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 中韓両国が示し合わせたように尖閣、竹島の領有権問題で突っかかってきている。日本政府のこれまでの対応は「何とか穏便に済ませたい」というもので、自国民にさえ「日本領である根拠」を示そうとしなかった。
 竹島については韓国併合の前から日本領であることを宣明にし、1905年に島根県に編入された。しかし戦後のドサクサに李承晩大統領が勝手に李承晩ラインを引いて韓国領としたもので、国際的には全く承認されていない。これまで日本側が2回ICJ(国際司法裁判所)に提訴したが韓国が応じないため、結着がつかなかった。今回、日本は単独ででもICJに提訴し、竹島の歴史的経緯を国際的に知らしめようと決意した。
 尖閣問題については中国が自国領だと主張する根拠は全くない。まず日本の敗戦によって尖閣を含む南西諸島は連合軍の支配下に入る旨の国際文書がある。次に連合軍は尖閣を含む南西諸島の統治を米軍に依託し、更に沖縄返還に伴って尖閣を含む南西諸島は米軍から日本に返還された。このいずれの手続きについても国際文書が残されている。米国が「尖閣は日米安保条約の適用範囲だ」と公言しているのも明確に「日本領である」との認識を持っているからだ。中国が「明の時代から中国領だ」などと領有を主張し始めたのは1960年代に国連の資源調査団が尖閣近辺に大油田が存在すると発表したのがきっかけだ。
 いずれにしても日本は南北朝鮮半島と中国に対して、併合したり占領した事実がある。日本政府はそれが負い目となって、歴代、中・韓両国に対して、先方の無理難題にひれ伏す態度をとってきた。
 しかし日韓間では1965年に基本条約が結ばれ、全ての係争事件が解決されている。勿論、条約締結時に慰安婦問題は討議されなかった。当時は慰安婦は公認の職業であって日韓両政府が取り上げなかったのは当然だ。仮に韓国出身の慰安婦が不当な扱いを受けたのが後に判明したとしても、その補償を求める相手は韓国政府である。
 ところが李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領は野田氏との京都首脳会談で1時間にわたって慰安婦補償を求めたという。この人物には国際条約の意味も慰安婦について自分がいかに筋違いの主張をしているかの自覚もないようだ。領有権を争っている島に上陸を敢行して自筆の石碑を立て、敢えて「天皇陛下が訪問したければ謝罪してから来い」と述べた。こうなると礼儀知らずの無知なヤクザと全く変わらない。天皇の訪問を求めているのは韓国側であって、日本が野蛮な国に天皇の訪問を仰ぐはずはない。
 中国では日本人の尖閣上陸をきっかけに、大反日運動が展開された。日本人はこれまで中韓両国とも通常の礼儀や規則が通用すると思って付き合ってきた。しかしハンチントンが言うように日本は中華圏の文明とは、全く異なる文明であることを自覚しなければならない。

                                                                                                                                           (8月22日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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