総選挙後の政界地図を読み解く
―橋下・安倍の連携がこの国を建て直す―

理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 民主党から小沢グループが割って出て、自民党総裁選挙では谷垣総裁の再選が危ういという。一方、大阪維新は八策を発表して政党化、これに連動してみんなの党も分裂含みになるなど、政界再編の動きが急である。
 何が理由で政党が流動化し、どのような形に再編成されるべきだろうか。
 まず、先の総選挙で自民党が惨敗したのは、官僚主導の政治に国民が怒ったからだ。官僚主導の象徴は給与、年金、退職金などの官民格差や4千5百に及ぶ天下り法人の存在を見れば歴然だ。ところが民意を託された民主党は“官”の領域に全く手が出せなかった。挙句に行われたのが民・自・公の大連立による年金・税の一体改革である。この一体改革は財務官僚に仕切られたもので、国民は楽屋裏を見て呆然とした。民主党に対する支持が崩落したのは当然だ。首相在任中から政治主導を唱えてきた安倍晋三氏は官僚に仕組まれた3党合意に公然と反対した。安倍時代に行革担当相だった渡辺喜美氏(みんなの党代表)も憤って内閣不信任案を提出した。
 一方で大阪維新の会はこの5年、橋下徹氏が大阪府知事となり、引き続いて大阪市長になり、大阪府市の行政を様変わりさせた。
 府も市も天下り法人を半分以上潰し、職員の給与、退職金までカットした。民主党政権で4千5百のうち1つも潰せなかった天下り法人を、橋下氏は府では50程度の天下り法人のうち28を潰した。
 橋下氏の功績はこれに留まらない。教育基本条例、職員基本条例を制度化して教員と地方公務員の政治活動を完全に封じたのである。かねて教育問題に深い関心を示し、在任中、60年振りに教育基本法を改正した安倍氏は橋下氏を「私の同志である」と讃嘆している。
 橋下氏は“従軍慰安婦”が強制的に連れて行かれたことを認めた「河野談話」について韓国側が強制だというなら「証拠を出せ」と述べた。安倍内閣は「強制性を示す文書は見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定している。安倍、橋下両者は国家観、歴史観について共通の立場に立っている。
 総選挙後の政界地図は自民、公明、維新、みんなの4党連立にならざるを得ないだろう。更に参院では過半数を占めるのに自民、公明、みんなの3党で辛うじて過半数になる。維新、みんなを引き付け得る総裁でなければ連立政権は成り立たないだろう。
 今回総裁選に立候補するという町村信孝氏は官僚出身で渡辺喜美氏がやっていた公務員制度改革を潰しにかかった人物だ。自民党のシャッポが官僚主導の政治を容認してきた人物では連立政権を構成できない。
 自民党の失敗は官僚が握る規制で得をする業界から献金を貰うという政官業の癒着体制を打破することができなかったからだ。民主党も同様の構図の中で、医師会長をとったとか農協がこっちを向いたと、オセロゲームのようなことをしただけだ。政治をやり直せ。


                                                                                                                                           (9月5日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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