「日本維新の会」に陰り
―維新・みんなの合併が最善の道―
理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 政界地図を塗り替えるのではないかと見られた第三極、「みんなの党」と「日本維新の会」の支持率が急激にしぼんでいる。両党が国民の期待を集めたのは、自民党にも民主党にもできなかった「地方分権」や「統治機構の改革」をやってくれるのではないかと期待されたからだ。自民・民主両党が構造改革や地方分権をできなかったのは、両党とも業界団体を票田にしていたからで、「みんな」と「日本維新」にはしがらみがない。
 期待を背負った両党が「合併してやろう」という意気を示せば改革機運は一気に高まったはずだが、主導権争いで両党は別々の道を歩くと云う。ほぼ同じ目標、政策を立てて別個に歩くというのでは「バカもいい加減にしろ」と国民から見捨てられるのは当然だ。
 橋下徹氏のカリスマ性によって「大阪維新の会」は爆発的人気を得た。一時は支持率で自民党に次ぐ第2位を占めたこともある。その人気が一気に剥げたのは@橋下氏自身が国政に出ないこと。A国会議員に松野頼久氏、松浪健太氏らを代表にさせたこと。B橋下氏はその議員団を大阪からの遠隔操縦で国政を動かそうとしていること――などだ。
 そもそも松野氏は当選4回、かの悪名高き鳩山由紀夫氏の側近だった人物だ。鳩山迷走政治の責任を負わねばならない議員で、その識見を評価する人物は国会周辺には見当たらない。松浪氏に至っては初めて聞く名前だ。
 橋下氏が大阪府知事、市長を一期ずつ8年やって“地域主権”の見本を創る。そののち国政に出てきて維新を引っ張るという考え方は正しいと思う。
 8月、渡辺喜美氏と維新の橋下党首、松井一郎幹事長との会談が行われたが、決裂した。決裂した原因は主導権を取ろうとした維新側が、みんなの党の解党を要求したからだと言われている。みんなの党は国会議員16人、地方議員300人、党員2万人の世帯である。幹事長に江田憲司氏、政調会長に浅尾慶一郎氏という全国に通用する議員を抱えている。その党に対して自らは国会議員にならないと決心している側が解党を要求するとは増長のし過ぎだ。両党を合併させて、国会議員団長は渡辺氏に委ねるのが自然の姿ではないか。橋下氏がこういう姿を嫌うのは、@合併した新党を渡辺氏に乗っ取られるのではないか。A橋下氏の発信を渡辺氏が無視するのではないか――と恐れるからだろう。しかし同じ政策目標を追求する同志に疑いをかけるものではない。渡辺氏は以前「みんなの維新」というネーミングを考えたそうだが、「維新」と「みんな」は合併が最善の道であって、今からでも遅くはない。やり直すべきだ。あくまでも「日本維新」にこだわるなら「みんな」との間で至急に候補者調整を行って、互いに推薦し合う選挙対策をする必要がある。橋下党首、渡辺喜美議員団長で“党首会談”には渡辺氏が出る。橋下氏が国会に出てきたのちは、党首は互選にすべきだ。


                                                                                                                                           (10月10日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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