野田内閣の年内解散の可能性は無くなったようだが、年明けの通常国会冒頭解散は避けられないだろう。内閣支持率が20%を切ったような状態で、新年度予算を組むということ自体、内閣のあり方として非常識だ。そういう無理筋を通せば通すほど支持率は落ちる。野田首相はできるだけ前向きの政策を実現して支持率を回復してから解散しようとの思惑なのだろう。民主党内もこの低支持率で解散を打たれては大敗必至とあって、ひと頃燃え盛った解散熱が一気に冷めている。とはいっても輿石幹事長がいった任期満了ダブル選挙まで解散を先送るのは不可能だ。
年明けの解散によってもたらされる政界地図は1強(自民)4弱(民主、みんな、日本維新、公明)体制になるだろう。
自民は比較第一党でも過半数をとっても、参院を制するために公明(19議席)とみんな(11議席)に協力を仰がなければ政治にならない。閣内協力か閣外協力かは別にして次の政権は安倍首相と公、み、維新の協力内閣になるだろう。
みんなの渡辺喜美代表と日本維新の橋下徹氏の連携によって、改革志向の政党連合が形成されようとしていた。ここに石原慎太郎が新政党宣言を発して改革勢力が一段と厚みを増したかの観がある。10月29日付の日経新聞世論調査によると「次の衆院選で投票したい政党」は自民27%に次いで日本維新の会が13%で、11%の民主党を抜いている。
石原氏と渡辺氏はこれまでソリが合わないといわれたが、渡辺氏が石原氏に歩み寄った結果、石原、橋下、渡辺のトリオ体制ができつつあるように見える。渡辺氏はこれまで政策の一致が政党協力の前提だと硬い姿勢を示してきた。石原氏とは消費税と原発容認の姿勢で合わないとされてきたが、両問題ともすぐに始めなければならない問題でもない。
三氏が共に掲げてきた「統治機構の変革」だけで一致すれば、巨大な政治目標になる。「中央集権体制の打破」「地域主権の確立」「公務員制度の改革」のうち、どれをとっても国家体制の大改革になる。また「教育委員会制度の廃止」も三氏が声を揃えてきたことだ。
強力な政権は常に巨大な改革の目標を掲げてきた。中曽根康弘内閣の国鉄など3公社の民営化、小泉純一郎内閣の郵政民営化は、改革への熱意が常に内閣支持率を押し上げてきた。民主党内閣の支持率が常時下降気味なのはダイナミックな変革目標がないからだ。バラ撒き政策で喜ぶ国民は熱心な党の支持者にはならない。当初、掲げた国の地方出先機関の廃止や公務員制度改革をやり抜けば、民主党の存在意義を示せたろう。しかし民主党は公約を何も実現しなかった結果、今日の衰退を招いた。
安倍内閣が成功するかどうかは、三氏の主張を追い風に、安倍流の大改革を実現できるかどうかにかかっている。
(10月31日付静岡新聞『論壇』より転載)
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