日本維新の会が“新装開店”した。石原新代表は「第3極と言われるが、第2極じゃないと困るんだよ」と気合を入れている。日本維新の会が既成政党と根本的に違うところは特定の支持団体を持たないことだろう。
民主党から現職の参院議員が入党を打診してきたところ、松井一郎・幹事長が「彼は自治労出身だろ」と言って断っている。立党にあたって一人でも現職が欲しいところを連合推薦議員との一点で入党を断った。政治資金を「個人献金に限る」と決めたことは党の性格を決定的に変えるだろう。
民主党が大きな改革課題を揚げながら、殆ど成果を上げられなかったのは何故か。民主党の改革の基本は現行の公務員制度を変えるということだったはずだ。天下りをやめさせるのも、50歳やそこらで追い出す制度を先ず直すことから始めねばならない。国の出先機関の廃止は地域主権へ移行する前提だが、これも公務員制度にかかわることである。自民党政権時代は最大の野党である民主党をいたずらに刺激するのは得策ではないということで、改革は公務員制度の核心を避けた程度の改革しかできなかった。
公務員は中央も地方も連合に加わっており、連合がノーと言ったことは改正できない。
石原氏は東京都、橋下氏は大阪府の知事経験者である。知事の東西の横綱が期せずして「中央集権制度をやめなければダメだ」と言っているのである。私は1993年に「官僚亡国論」を書いた。これは80年代に土光臨調や行改審(行政改革推進委員会)での経験や勉強をもとに書いたのだが、両横綱は別の角度から同じことを言っているように思う。
連合に最もよく接触して、民主党支持に固めたのは小沢一郎氏である。連合は民主党内に100人前後の推薦議員を送り込んでいるから、所詮、民主党に公務員制度改革を期待するのは無理だったのだ。
小沢氏は自民党の牙城を言われた農協や医師会をも取り込んだ。この団体取り込み作戦は自民党の代わりにもう一つの自民党を造ることに他ならない。自民党の弱点は農協や医師会にカネと票を握られていることだった。これを引きはがせば自民党を弱体化させるのは確かだが、これと民主党のカネと票にするのでは自分の弱点にもなる。
自民党と民主党は支持母体をオセロゲームのようにひっくり返し合ううちに、同じ体質の政党になった。つまり両党には致命的な部分の改革はできないということである。
JA(農協)グループは「TPPに反対する候補者、政党を支援する」旨の談話を発表した。いまのところ民主も自民も党としての意見を発表していない。JAに政治資金と票を期待しているから出来ないのだ。日本維新の会が堂々と「TPPやるべし」と言えるのは、団体の政治献金を断り、個人献金に限っているからだ。TPPがなくとも農業改革は焦眉の急だ。農業の後進性は自民と民主が改革を避けてきたせいなのだ。
(11月21日付静岡新聞『論壇』より転載)
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