安倍流「政治主導」で失われた20年を取り戻せ
―寄せ集め団体の民主党に最早国民の信頼はない―
理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 民主党が新代表に海江田万里氏を選出した。海江田氏は「党内融和」を掲げ、一致結束して当面の参院選を乗り切る意気を示した。一方の自民党は26日、国会で安倍首相を選出し、これまた参院選を目指して全力投球の陣容を整えた。
 安倍晋三氏の戦略は、政治を財務省支配から脱却させ、徹底した“政治主導”で運営をすることだ。野田政権時代の財務省支配はさながら官僚内閣制の如くで、与野党の党首を指図して税金を上げさせることもできた。財務省の方針が行き渡り、政界も財界も異論を挟む余地なきが如くだった。経済は委縮し続け、失われた20年と言われた。平成元年生れの子供は25年間、ひたすら萎縮した中で生き続けた。この雰囲気の中では冒険心も失われるのは当然だ。海外に留学を目指す学生が極端に少なくなったのも、冒険心の喪失の結果ではないか。
 安倍氏が試みようとしているのは、2%のインフレターゲットを設け、莫大な基金を設けて円を発行し、円安に持って行く。アメリカがドル安で製造業をカムバックさせたように、日本も製造業を取り戻すという考え方だ。
 財務省は日銀をも支配し、安倍式発想は危険思想だと言い続け、ジリ貧の経済に手をこまねいてきた。安倍氏の起死回生策が成功することを願うが、ジリ貧の経済を続けるよりは良いだろう。
 安倍政権に立ち向かう民主党の凋落は党の構造的欠陥によるもので海江田氏が「党内融和」を言うだけでは再生は難しい。
 自民党は大勝したが、前回、大敗した時より200万票減って1662万票だが、民党の減り方は劇的だ。前回の2982万票に対して今回は962万票。何と2000万主票を失ったのである。民主党に対する失望は外交・内政両面にわたる。トロイカと言われた鳩山由紀夫、菅直人、小沢一郎の3人が揃って外交の基本に「日米中の正三角形」論を据えた。米国離れを起こして中国に接近しようとしたが、中国は逆に日本組みし易しと尖閣諸島を獲りにきた。中国の本質を知らなさ過ぎた。内政では殆ど実現しなかったバラマキのオンパレードである。
 なぜこのような無責任政党になったかと言えば、出自の異なる政党を寄せ集めただけの“団体”だったからだ。今回、急速に台頭した維新は、橋下徹氏という強烈なカリスマ性を持った指導者がいたのに加え、維新八策と言われる綱領を作ったことが大きい。日本維新の会は参院選に向けて候補者を選別し、みんなの党と協調してくるだろう。
 民主党は今回の代表選で馬渕澄夫氏を推したとみられる“保守派”と、海江田氏を推した輿石派グループとはイデオロギーも違うし、水と油の関係にある。だからこそ分裂し、大敗したのであって、融和を図れば元の固まりに戻れると思うのは大間違いだ。民主党という第2極は維新・みんな・旧民主保守派の“新勢力”にとって代わられるのではないか。

                                                                                                                                           (12月26日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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