「反日」を唱え続けなければ維持できない韓国のお国事情
―永遠に続く日本への「謝罪要求」―


理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 日韓関係は65年の日韓基本条約締結以来、最悪の関係を迎えている。冷戦中はソ連に対峙するために、日韓は共に米国陣営を支持しなければならないという理性が働いていた。関係が悪化すると韓国側も日本側も新任の大統領、首相が「これから未来志向の関係をつくろう」と握手して再出発するのが常だった。前李明博大統領もそうだったが、最後は島根県の竹島に上陸し「天皇が謝りに来い」と暴言を吐いた。それを最後に朴槿恵氏が新大統領に就いたが、日韓首脳会談を意識的に避けているように見える。
 支持率が低くて、対日融和姿勢を見せると失脚しかねないという観測もある。朴大統領は訪米して5月8日に上下両院合同会議で演説し「北東アジアでは歴史問題に端を発した対立が一層深刻になっている」と述べた。日本を名指しこそしなかったが、これに先立つオバマ大統領との会談でも「歴史問題」について訴えたといわれる。首脳会談や議会演説で他国について“告げ口”することは外交儀礼に反する。次には訪中するというから。今年中に日韓首脳会談は開かれないかも知れない。この異常な事態をどう見るか。
 日韓の“感情”がこじれた原因は韓国側が「元慰安婦への補償をせよ」というのに対して日本政府が「財産、権利についての請求権は65年の基本条約で解決済み」と突っぱねているからだ。韓国外交通商部は10年3月15日に「慰安婦については基本条約の対象外として要求をしている」と発表。11年8月30日、憲法裁判所は「政府は日本政府に対し解決のための努力をしていない」と判決。因みにフィリピンの最高裁は韓国が同調するよう求めた日本への謝罪要求の訴えを退けた。基本条約は国際的には平和条約と同等のもの。その解釈まで裁判所が曲げてしまうのは恐ろしい。
 今年1月に対馬(長崎県対馬市)の寺社から仏像や教典を盗み売りさばこうとして韓国に持ち込んだ韓国人窃盗団が摘発され、仏像は押収された。ところが大田地方裁判所はその仏像(長崎県指定重要文化財)について「日本に返還しなくてよい」旨の判決を出した。靖国神社で放火した犯人(中国人)が韓国で犯罪を犯し、刑務所に入れられた。日本側は韓国と犯人引渡し条約があるから刑期を終えたら引き渡してくれと要求したところ、中国に帰国させてしまった。
 行政府、司法までが「反日」を貫かないと韓国では生存できないかのようである。
 韓国は上下関係に厳しい儒教の国である。家庭では父親がトップで家族の中にも厳とした序列がある。韓国は日本に併合されるまで1000年間、中国の属国であった。日本は韓国を36年間併合して近代化したと思っているが、韓国は儒教国家の雄を誇りたい。日本を下に見たい。その勝利の象徴が竹島だ。次いで慰安婦に対する日本の謝罪なのだ。宮沢喜一首相は韓国議会で8回も謝ったが、彼等が要求するのは永遠に、である。貧富の格差で痛んでいるのだ。

                                                                                                                        (平成25年5月29日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
 Ø 掲載年別  
2014年の『論壇』

2013年の『論壇』

2012年の『論壇』

2011年の『論壇』
 

ホームへ戻る