7世紀から続く我が国と中華圏との対立
―「反日」で国内の合理化を図る中韓―


理事・政治評論家  屋山太郎 
 

 日中間は尖閣をめぐって険悪な関係にある。韓国も慰安婦問題をめぐって安倍政権を敵視しているが如くである。中国が怒っているのは麻生太郎副総理が靖国神社の春の例大祭に参加したのが許せないという。韓国が怒っているのは慰安婦への補償を日本が拒否しているからのようだ。両国が怒っているのはいずれも“過去問題”である。
 麻生氏は「日中間は1000年間も揉めていたことがあるよ」と中国の抗議など平気の平左だ。靖国問題、慰安婦問題については、これまでも日中間、日韓間で何度も問題にされたことがある。その度に応酬があっても喧嘩の熱が冷めれば、少なくとも政経分離の関係に戻った。“過去問題”で現実の損を蒙ってはたまらないと、双方が損得勘定に戻ったからだ。
 しかし今回の対立は従来とは質的に異なる。
 中国は尖閣の実効支配を試みて、武力衝突も辞さぬ勢いだ。ここで「争いをやめろ」と口がきける人物は習近平総書記ぐらいしかいないが、そんなことを言えば、習氏のクビが飛びかねない。ということは習氏以外の文民は習氏に輪をかけた強気の発言しかできないということだ。従って“尖閣紛争”は当分収まりそうもない。尖閣紛争は中国の内政にとって今や不可欠の材料なのではないか。
 中国は7.5%成長以下だと国がもたないと言われてきた。しかし地方政府が水増しして申告したり、7.5%を達成しようとして無意味な公共事業が行われているという。
 中国経済は国家社会主義的経営だから、国が景気対策に金を注ぎ込むと、大半は国営企業に流れ込む仕掛けである。この5年間に起きた汚職は16万件で、このうち局長クラス以上の役職者が5000人含まれているという。全人代がこの数字を発表するのは、政府を信用させるためで、国民も予想の範囲だというから、凄い政治である。この数字を見れば、日本なら確実に政変だが、中国ではその動きを力で押えつけているわけだ。その手段の一つが日本叩きである。尖閣デモで日本企業が壊されたり、製品のボイコットが行われたが、それが実は官製デモだったこともバレている。中国はこの事件でカントリーリスクのある国と言うレッテルを貼られた。日本の投資はコンビニとかユニクロなど軽工業に特化され、製造業は隙あれば引上げる構えだ。というのも、人件費の高騰で中国では引き合わない企業が増えているからだ。
 韓国の新大統領の朴槿恵氏の支持率は極端に下がっている。彼女の使命は大企業主導の産業形態から中小企業も繁栄する産業社会につくり変えることだが、円安・ウォン高で中小企業の育成どころではない。日本の首相と会ったというだけで袋叩きになりかねない。
 実は中国と朝鮮(南北)を含む中華圏と日本は7世紀の聖徳太子の頃から対立する関係だったのだ。

                                                                                                                        (平成25年6月5日付静岡新聞『論壇』より転載)
 
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